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さくら駆ける夏  作者: 桜坂ゆかり
第二章 居候開始
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到着

 翌朝――。

 荷物を手に、問題の街までやってきた私。

 今日も気温はぐんぐん上がるという予報だけど、朝はそこまで暑くはない。

 セミたちの声が響きわたっている。

 雲が少なく快晴だった。

 青空は澄み渡っていたけど、なんだかいつもよりも色が薄く見える。




 まず行くところは、マツダイラ・カメラ店だ。

 ネットの地図には名前が出ておらず、お店のホームページも検索で見つからなかったので、少し心配だった。

 もう、お店がなくなってしまったんじゃ?


 手がかりはミニアルバムの裏側に書かれた簡単な地図だけだ。

 それによると……この辺りということだけど……。

 見当たらなかったので、近くにあった交番に入って聞いてみることにした。




「すみませ~ん」

「はい、どうしました?」

 応対してくれたのは、四十歳代くらいの男性の警官さんだった。

 シャープなあご、目じりのほくろ、太い眉、彫りの深い目鼻立ちなどが印象的だ。

 身も蓋もない言い方をすると、「濃い顔」だった。

 すぐに私は、探しているお店のことを知らせ、地図を見せる。


「ああ、松平さんのお店ですか。残念ですが、一昨年、閉店されたようですね」

 私の悪い予感が的中してしまった。

 唯一の手がかりだと思っていたのに……。


「松平さんご一家は、故郷の九州に帰られたようです。お役に立てず、申し訳ございません」

 九州か……。

 ちょっとすぐに行ける距離ではないし、また、警官さんも詳しい住所は知らないという。


「この街も、古いお店がどんどんなくなっていって、寂しくなってきますね」

 警官さんは、しみじみといった口調でつぶやいた。

「上条さんのパン屋さんや、高松さんの花屋さんには、まだまだ頑張ってほしいものですよ」

「それらのお店も、古くからあるんですか?」

「はい、そうですよ。上条さんのとこのカレーパンは特に美味しいから、おすすめですよ」


 古くからあるお店なら、実の両親についても、ひょっとしたら知ってる可能性があるかも。

 行ってみてもいいかもしれない。

 そして私は、パン屋さんやお花屋さんの位置を聞いてから、警官さんにお礼を言うと、交番を辞去した。

 唯一の手がかりと思っていたものが不発に終わってしまった訳だけど、くよくよしても仕方がない。

 気を取り直して、これからお世話になる清涼院家を目指して歩き出した。


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