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さくら駆ける夏  作者: 桜坂ゆかり
第六章 進む調査、深まる想い
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土佐さんとおじいちゃん

 それから電車に乗り、京都に帰ってきた私たちが時計を見ると、すでにお昼時だった。

 なので、涼君のよく知る定食屋にて、昼食をとることにする。

 食べ終えると、次に私たちは、おじいちゃんのお見舞いのために病院へ向かった。




 病院に到着し、病室に入ってみると、おじいちゃんはそこにはいなかった。

「う~ん、タイミングが悪かったみたいだね」

 がっかりして、私は言った。

「検査中かもね。もう少し待ってみようよ」

 涼君がそう言ったとき、後ろのドアが開いた。


「おお~! 来てくれてたのか! 待たせてすまんな」

 おじいちゃんは元気そうなので、ひとまず安心する涼君と私。

 私たちが口々に具合を尋ねると、おじいちゃんは状況を話してくれた。


「昨日言ったとおり、今日と明日の検査結果が良好なら退院できるんじゃが……今日の検査が、今しがた終わってな。良い数値じゃったよ。明日の午前中にもう一回検査してみて、問題なければ退院ってことになりそうじゃ」

「そっか! よかった!」

 順調みたいで、本当によかった。

「それでそれで。そっちのほうはどうなんじゃ? 進展があったか?」

 私たちのほうも、一髪屋さんと会って話したことなどを、おじいちゃんに説明した。




「なんと! 三人目が名乗り出たんじゃな!」

「うん……。ブログにリアクションがあるのはうれしいことだけど、こうも立て続けに名乗り出る人が増えてくると、何ていうか……混乱しちゃうなぁ」

 そのうち、四人目の人が名乗り出てきそうな気がするよ……はぁ……。


「でも、お三方とも、『さくらちゃんの母親は胡桃さん』という点では、意見一致みたいなんですよ」

 涼君が、静かに言った。

「ふむぅ。さくら自身はその胡桃っていう人が母親かもしれんと思ってるんか? 直感的にはどうじゃ?」 

 うーん。

 難しいな。

「写真によっては、私とすごく似ているように思うこともあるね。それに、不思議な親近感みたいなのも感じるから、『胡桃さんが実のお母さん』って、もし判明しても、私は驚かないかな」

「どの写真もさくらちゃんにそっくりだと、俺は思うけど」

「涼君がそう言うなら……きっと私以外の人から見ると、そうなのかもね」

 私は考え込みながら言った。


「しかし、DNA鑑定をする予定なんじゃろ?」

「うん、来週の火曜に一髪屋さんと、水曜に八重桜さんと、ね」

「それじゃ、水曜にははっきりするわけじゃな。少なくとも、その二人がお前の父親かどうかということは」

「そういうことになるね。ああ、待ち遠しいなぁ」

 私は一日でも早く知りたくてたまらない気持ちでいっぱいだった。


「ところで、おじいちゃん。何か必要なものはもうない?」

「ああ、もうすぐ退院じゃから、特にもう何もないかな。ありがとう」

 退院する気、満々だぁ。

 明日の検査結果、良い結果だといいな。

 これだけ退院したがってるのに、引き続き入院となると、おじいちゃんはものすごく落胆するだろうし。

 それに、私も引き続き心配しつづけないといけないから……。

「明日の結果、良好だといいね」

「良好になるよう願ってますよ」

 涼君と私が口々に言うと、おじいちゃんは朗らかに笑った。

「ありがとな!」


 そこへ、誰かが病室のドアをノックしてから、ゆっくりとドアを開けて入ってきた。


 現れた人は、おじいちゃんと同じく、病院のパジャマを着た男の人で、年恰好もおじいちゃんと同じくらいだった。

「花ヶ池さん、将棋しましょうや。あら、お孫さんたちが、お見舞いに来られてたんですか! これは失礼、お邪魔し……」

「ああ、いえいえ、もういいんですよ」

 帰ろうとするその人を、私が慌てて引きとめた。

「土佐さん、紹介しておきますよ。この子がわしの孫娘のさくら。で、こちらは義理の孫になるかもしれん涼君じゃ。こちらは、わしの将棋仲間の土佐さんじゃ」

「な、な、何言ってるの?!」

 信じらんない。

「ヒサさん、冗談はよしてくださいよ」

 涼君は恥ずかしそうな様子で、頭をかいている。

 涼君にこれを冗談って言われちゃうと、実現の可能性が低いのかなぁって思う。

 ちょっとブルー。

 でも、肯定されたとしても、きっと涼君は本気じゃないだろうし、ただ恥ずかしいだけかも。

 複雑な私。

「はっはっは、すまんすまん。ジョークじゃ。気にするな」

 私はちょっと取り乱しておじいちゃんの方に近寄ってしまっていたが、慌てて土佐さんに向き直った。 


「あ、すみません。初めまして、さくらと申します」

「初めまして、清涼院と申します」

「これはこれはご丁寧に。初めまして、土佐といいます。花ヶ池さんにはいつも将棋を教えてもらってまして、仲良くしてもらってますよ」

 土佐さんは、深々と頭を下げた。

 礼儀正しい人だなぁ。

「さくらと涼君は、これから何か予定はあるのか? なければ、プールにでも行ってみてはどうか? 二人とも若いんじゃから、外で元気にハッスルしまくって、思い出作りせんと」

「プールですか、いいですね!」

 涼君が言った。

「うん、私も行きたいな」


「それじゃ、わしらは将棋といきますか。わしは検査結果次第で、もうすぐ退院ということになりますし、病室でこうして土佐さんと毎日指せるのは、あと何日かの話ですからなぁ。退院してからも、検査の日には、たまに立ち寄らせてもらいますけどね」

 ちょっとだけ寂しげに笑うおじいちゃん。

「いやいや、わしもあと一ヶ月ほどで退院できますので、そのときはお互いの家かネットで指しましょう」

 土佐さんも笑顔で言った。


 そう言えば、おじいちゃんはもう六十近い年齢だけど、ネットを使うこともある。

 以前から家で何度もそういう話を聞いているし、実際におじいちゃんがネットを使っているところを見たこともあった。

 今は入院中なので、パソコンを持ち込んでおらず、使えないみたいだけど。

 普段はネットで将棋を指すことも珍しくないって、この前言ってたっけ。


「それじゃ、私たちはそろそろ行くね」

 おじいちゃんたちは将棋を指したそうなので、私は言った。

「それでは、また。ヒサさん、俺にもいつか将棋を教えてくださいよ」

 私たちが口々に挨拶すると、おじいちゃんも笑顔で言った。

「おう、気をつけてな! 涼君、退院したら、わしの部屋に通うように。みっちり将棋を教えるぞ!」

「お二人とも、お気をつけて」

 土佐さんも笑顔で言って、手を振ってくれる。

 こうして、涼君と私は病室を後にした。


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