第六話
看板無し、座る椅子すらないルンのお店。
そこはなぜかたくさんの人で賑わっていた。
「何でこんな人入ってるの?」
優香が聞いた。オープン祝いにお店に顔を出していたのだ。
「うーん。企業秘密。」
ルンは手でシーっの合図をして言った。
「ねえ、そこのドンペリいくら?」
一人の男が大声でカウンターのルンに聞いた。
「十万円からのスタートです。」
聞いた男とは別の男がまたルンに聞いた。
「何?オークション形式?」
「そうよ。オープン祝いに誰か競り落としてね。」
ルンはウインクしてドンペリのボトルをカウンターの上にドンと置いた。
「十一万」
「十二万」
ルンの思惑は当たった。
そして最後に「三十万」と海沢が言った。
そうしてドンペリは海沢からみんなに振る舞われた。
「なんなのこれ?」優香は突然行われたオークションに驚いた。
「みんな私のお客さんなの。昔水商売してたときの。」
ルンはドンペリを優香に差し出した。
「なるほどね。」優香は呆れたような顔でドンペリに口をつけた。
外からは新しくできた店で、人が賑わってる様子を見ている人だかりもできていた。
しかし次の日になると昔のお客さんは来ず店は閑散としていた。
それで少しへこんだルンはドンペリを売ったお金で看板を買った。
そしてカウンターにあう椅子も用意し
次の日が来るのを待った。