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第二話
「ここの店主が越してきてからの話をしよう。」
老人は目をつぶって言った。
どしゃ降りの雨のなか、ルンは引っ越しの準備に明け暮れていた。
引っ越しの準備といっても越す場所が決まってる訳でもない。
ルンは中学を卒業した辺りから、一人暮らしを続けている。
高校一年の途中で家出娘同然のルンは、公園などで野宿をしていたこともあり、それを友達に目撃されたことで
ルンペンのようだからルンとあだ名をつけられた。
だから本名ではない。
ルンはそれからたくましく家出を続けて、もう29歳になっていた。
それまではキャバクラの寮に住んでいたが、もう年齢のことやいい加減夜の生活に嫌気が差し
突然仕事を辞めた。
当然、住みかはなくなり引っ越ししなくてはならない。
とりあえず持っていた軽自動車にありったけの荷物を詰め込み
ルンは自分の田舎である東京へ向かった。
車を走らせるとワイパーもすり減って変な音がしている。
モウヒトリハゲンカイ
ルンは泣いた。