プロローグ
《NEW WORLD》としか掛かれていないパッケージを眺めながら、俺、神崎 龍一は頭を抱えていた。
俺は今日で長い戦争が終わり、明日からの連休に何をするかを考えながら学校から帰宅したのだ。
そんな俺を待っていたのは叔父からの謎の包み。
いや、謎、なんて言ったが俺には中身の検討は付いていた。
新しいゲームのプロトタイプである。
俺の叔父は有名なゲーム会社に勤めており、よく俺に新作ゲームを送っては感想やらバグの報告を頼むのだった。いわゆる、テスターだ。
何でも、現役高校生の貴重な意見を聞きたいらしい。
一応、アルバイトってことで僅かだが、報酬もでる。
ゲームをタダで手に入れられる上に金も手に入る。良いこと尽くしだと思うだろ?
俺も最初はそう思って嬉々として叔父の話に食いついた。
だが、現実はそんなに甘いものではなかった。
まず、ロードが長い。更にバグも多い。それを一々報告するのが面倒くさい。いくら作品が詰まらなくてもやりきらなければならない。金を貰うのだから当然だ。
諸々の理由から、テスターは決して優しいバイトではないのだ。
偶には良作もあるが、過半数が駄作だ。それを延々とやり続けるのは苦痛でしかない。
そんな理由から、最近はテスターを断ることも屡々(しばしば)だった。
しかし、今回はやるしか無い。
次の作品は大作だから、是非、テスターになって欲しいと叔父から言われていたし、父からも頼まれている。
そこまで言われたらやるしかあるまい。
はぁ、これで明日からの連休の用事は決まってしまった。
小包に入っていたゲームを一度、パソコンに読み込ませ、起動させる。
その間に俺は軽く飯を食ってシャワーを浴びることにした。
◆ ◆ ◆
さて、始めようか。
お金を貰うのだから半端なことはできない。
できれば、俺の好きな育成系のゲームなら良いなと思いながら、《NEW WORLD》を起動させる。
叔父からは龍一の好きなようにプレイしてくれて構わないと言われているので、今回は好きにさせてもらおう。
叔父がこういう時は俺以外にもテスターを大量に用意している時なので、俺としても気分は楽だ。
始まりのムービーが流れた。
どうやら舞台の時代は中世ヨーロッパで、剣と魔法が支配する世界らしい。
まぁ、スタンダードだな。
次に主人公の設定画面になった。
ってことは《NEW WORLD》はMMOなのかな?
とりあえず、名前は《アノン》、と。
名前に何か由来があるわけではないけど、昔からゲームの名前はアノンにしている。
性別も聞かれたので《男》を選択。
次に種族を選ぶ。
種族は【ヒューマン】【エルフ】【ドワーフ】【ビースト】から選べるらしい。
俺は無難に【ヒューマン】を選択。
キャラクターメイキングの画面になった。
身長を小さくし、子供のような外見に設定。
多分、小学生くらいの年齢に見えるだろう。
髪は銀色にして、目は蒼。顔は将来的にはイケメンになるであろう感じに。
今回は子供キャラをロールプレイすることにした。
最後に初期職業を決める画面に移った。
初期職業という割にはたくさんの職業がある。
《見習い剣士》や、《見習い槍師》、《見習い魔術師》もあるし、《密偵者》なんてのもある。
なかなかに面白い。
そんな中、一際、俺の目を引いたのは《魔物使い》だった。
これ、育成ゲームできるんじゃないか?
そう思った俺は迷わず《魔物使い》を選択。
普段ならこんなマイナーなものは選ばないし、テスターとしてはもっとメジャーなものを選ばなければならないのだろうけれど、今回は叔父も好きにプレイして構わないとのことだったので、この選択でも大丈夫なはずだ。
確認画面に入った。
このキャラで良ければ【OK】コマンドを押せとのこと。
俺は何度か確認した後、【OK】コマンドを押した。
その瞬間、俺の意識は闇に包まれた。
ちょくちょく書いていた量がかなりあるので、小出しに出していきたいと思います。
感想とか、誤字報告とか頂けると狂喜乱舞です。