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第5話 奇病


森に入ってから少しして、やはりというか魔物が出てきた。


道中、エレネが説明してくれた話によるとこの世界はどうやら自分が思っている以上に異世界じみているようだ。


まずこの世界には魔物が存在し、その魔物を狩り生計を立てる者や情報を売るもの


道具を売る者といった具合に次々と人の経済は成り立ち、五大国も三大陸をまたぎこの経済に加担しているとの事だった。


今はプルーヴォの周りにはあまり魔物が出なくなったが、代わりに他の国が攻めてきたといったところだろう。


「恥ずかしい話だが、私達の国では他国の進撃を止めるのは難しいんだ。


 先ほどの体捌き、見事だった。


 貴方ほどの剣士が我がほうについてくれれば、少しは戦況が良くなると踏んだのだ」


暗闇の中から飛び出してきた巨大コオロギを一刀の元斬捨て、エレネはザクザクと森を進む


俺はその後ろをついていくだけだったが、周囲の索敵は欠かさない。


「...話はわかった。


 しかし俺が協力する意味「...私の裸」なんでもありません」


まったく、嫁入り前なんだぞ。とすごんではいるものの顔が真っ赤なので説得力なしです。


白いうなじまで真っ赤である。


「とまれ」


「?」


俺の結界内に何者かが入り込んだ。行軍をとめる俺をみなが不審そうに見る


俺の敷く結界は、己の気を薄く延ばし、球状に張る。


その結界に他の者が触れるか入るかするとその者の位置、敵意、武装まで把握することができる。


並みの術者ならせいぜい10(m)が限界だが、俺の場合は気を全開で込めなくても2kmまで張ることができる。


「どうした?


 ここはプルーヴォの領域だぞ?敵はここまでは」


「待て、人ではない。


 足が異常に速い」


俺の結界は周囲約2kmまで及ぶが、足の速い敵となれば話は別だ。


敵までの距離が短い計算になる


「では、こちらから打って出るか」


腰の剣を抜いたエレネを俺が制す


「いや、もう来ている。


 それと敵ではないようだ」


俺がそういうのと同時に、木の間から金色の毛玉が飛び出し、エレネに突っ込んだ。


「エレネさまーーーーーー!!!!!」


―ズザザザザザザァァァ


あっさりよけられてるけどな


突っ込んできた金色の毛玉はエレネに避けられ、林道の端まで滑っていった


「貴女だったの、スクツ」


スクツと呼ばれた少女は、見るからに幼く愛らしい顔つきで、頭にはキツネ耳が付いておりピコピコと動いている。


お尻からは尻尾が一本出ており、これも金色だった。


「ひどいですよぉエレネさまぁ...


お城護衛騎士が一斉に出払ったのを見て心配したんですからぁ...」


「すまぬ。


 私が不用意に危険信号弾を使用したのがいけなかった」


「もう、本当に心配したんですよぉ?


 あと、そちらの方は?」


どうやら俺は敵とみなされている。


今までエレネに向けていた暖かな陽の光のような笑顔から一転、険しい真冬の凍てついた表情で俺を睨みつける。


「賊ですね。


 見るからに怪しい格好ですし男装までして。こいつ、エレネ様に近づくんじゃねぇです」


周囲に火の玉が発生し、俺を囲む


やれやれといった感じでエレネに助けを求める


「スクツ。


 この方は私の客人だ。あとな、本物の”男”だぞ。しかも純人間種の男だ」


うふふといたずらっ子のように微笑むエレネ


その言葉を聴き、さらに火の勢いが強くなった


「な、な、な、なんですって!?


 男はあまり存在しない希少種じゃないですか!?


 それに純人間種なんて...どこで手に入れたんですか?王宮にすら居ないんですよ?」


俺を差し置いて興奮気味に騒ぎ立てるスクツ


「たまたま森で倒れていたところを私が”保護”したのだ。


 なので、素性は知れぬが安心してよい。私が保証しよう。」


「そうだったんですかぁ。


 あ、はじめまして。私はスクツと申します。先ほどはご無礼を。


 宮廷医療班外傷部隊緊急救助担当です。」


ぺこりと頭を下げる幼女に怒れるわけも無いだろう


俺も挨拶を返す


「オノ コウヘイだ。コウヘイでいい。


 気づいたらこんな森の中にいた。


 いろいろあったが、”やさしい”隊長殿のおかげでここまでくることができた。」


俺はすっとエレネを見返す。


クスクスと微笑むエレネにはまだ含みがあるようだ。


しかし、そろいもそろって女なのは男が希少種なのか。


道理で、さっきから俺の周りから好奇な視線を受けるわけだ。


「しかし、不思議だ。


 男が居らぬならばなぜ繁殖できる?」


ふと疑問に思ったことをぶつけてみる。


「それはだな」


エレネが口を開きかけたとき


「私が説明いたします」


ずずずいと横からよってくるミーネさん。


...先ほどまで離れたところの殿を務めていたはずだ。


なにやら凄みがあるので、そのまま説明を促した。


「すでにお聞きと思いますが、わが国では男性が圧倒的に足りません。


 それも、今より20年も前に流行った病が原因です」


話を要約すると以下のようにまとめられる


今より約20年前、この世界でも男も女も平等に生きていた。


しかし、その流行病に罹るのはどこの国でも男性のみで、みな労咳(ろうがい)のような症状で亡くなったらしい。


今でも男性は生きてはいるらしいが、どこの国でもその流行病が再び蔓延し男性がなくなっては困るという

ことで


各国の王宮にかくまっているとの事。いやこの場合は監禁か。


しかも、なぜか女性の出生率に比べて男性の出生率が異常に低いとの事。


そして、今は完全な監視の下、人工授精なるもので子を宿すらしい。


聞けば、男から精液を採取し、それを女性から取り出した卵子に入れ込み再び戻すのだという。


この国の医療や文化を見ていると師の元にあった文献の数々を思い出す。


この認知度、そして広まり方からして、やはり師の下で見たあの文献は偽物ではなかったらしい。


「なるほどな。


 で、火種の俺厄介になっていいのか?」


一通り説明を聞いた俺は簡潔にエレネに聞いた。


「...どういうことだ?」


真剣な面持ちで俺に問いかけるエレネ。やはり図星だったか。


「いやな、男が少ないはつまり希少価値がある。


 さらに国の繁栄を望むなら男の存在は必要になる。


 だったら強国ほどその存在を欲するだろう。


 いかがか?」


俺の問いにまいったなという具合のエレネ


鬼の副長殿も驚いている。


「やはり、只者ではないね。


 そう、私達は女王陛下の命により、男、雄の種類であれば捕獲するよう命じられている。


 しかし、貴方ほどの使い手が捕縛できるとは思えませんのでご同行願いました」


護衛騎士殿はあっけらかんと言い放った。


「えぇ~?エレネ様がてこずるなんてこの辺りじゃ聞きませんよ~?


 前に任務でてこずったのはグリーンオークの討伐だったじゃないですか

 

 何かの間違いじゃないですか?」


おどけたようにスクツは言うが、その表情は態度とは裏腹に笑っては居なかった。


周囲の空気も若干引き締まったような気がした。


「おい、なんだよグリーンオークって」


気になったので近くの副長殿へ聞いてみる


「っ!

 急に近づくなばか者!!」


顔を真っ赤にして顔面に一発お見舞いしようとしてきたので諦めてスクツに聞く


「グリーンオークってなんだ?」


「はい、グリーンオークとはですね、簡単に言えば森の鬼でして、魔法と体術を両方使え、怪力の持ち主です。


 我ら獣人でも太刀打ちできない相手です。


 魔獣ランクA++ですよ」

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