第40話 白銀の意思
久々の投稿ですね。
みんなみてるかなぁ......
「ふざけるなぁぁぁあ!!!」
朝のカシュターロ・デ・シュターロ城にアルジェンドの声がけたたましく響く。
アルジェンドは、朝一番で届いた飛竜便を読むなりすぐに破り捨てた
「王室追放及び階級剥奪!?その上プルーヴォへ身柄引き渡し!?
まるで罪人の扱いではありませんか!?
なぜ!!
あの戦の始末は当につけている!!いまさら何を...!!」
アルジェンドはあのあとゾスマが鋼兵を連れて行ったことに違和感を抱いていた。軍部においてアルジェンドの権限は絶対だ。それを曲げてまで自身の意見を通したゾスマには理解できない。
そして、今日の朝、亜竜の軍用伝達部隊がアルジェンドに一通の手紙を持ってきた。朝早くにもかかわらず、アルジェンドはいつもの軍装で伝
達部隊から手紙を受け取っていた。
それほど、あの男の事が気になったのだ。
しかし、この書面を見る限りでは国はどうやらアルジェンドの行為に快くは思っていないらしい。
今までの戦績、功績、誇り、全てが踏み躙られた。悔しさのあまり、アルジェンドは手にした手紙を握り潰す。
目の端には薄く涙が溜まる。
「姫」
そこへナールドがいつもの執務服ではなく軍装を着用し、いつものように柔和な笑みではなく戦に向かう兵士よろしく険しい顔つきになっていた。
「叔父さまッ!!これっこれ!!!!」
ナールドは静かに頷く
「此度の戦、例の騎士が関連しております。
本国は、戦をこれで手打ちにしようとしているのです」
静かにナールドは言った。
「そ、そんな.......っ!
兵卒ならまだしも、陸軍総帥たる私の身柄を敵に渡すなど聞いた事ありません!!!
私の武働き、足りませぬか!!!」
「誰もそうは思っていますまい。
今朝来た伝達部隊に返しの書面を持たせ、本国へ今一度再考されるよう書状を送っております。
あの書簡はゾスマ補佐官が記入されたもの、それをおいそれとは受け取れませぬ。
そして、あの方が私のしたためた手紙を読めば、考えを改めるやも知れませぬ」
「しかし、この書面には今日の夕刻までにと書かれております!!!....やはりあの悪魔は厄介だったわ!!
ここで斬り捨てます!!!」
テーブルに立てかけた細剣に手を掛け、鋼兵が降り立ったリバーサイド近くの森へと向かおうとする。
「なりません、姫!!!」
「何故です!?敵は眼前、我の手には剣、心には闘志が燃えております!!
これ以上、何が必要でありますか!!!」
それをみたナールドはやれやれといった様子でアルジェンドを見つめる。
「出来るものなら他の誰かがすでに手を出しております。
報告によると、国境でファイロ上級魔術師とやりあった者がおります。
王の"真紅の外套の魔術師"が彼の地へ飛び立ったとの報告もあります」
「まさか!
いくら悪魔とは言え、かの魔道国家の手練を相手に!
レッドローブを冠する者はどの者もS級の魔術師ばかりではございませぬか!」
「はい。もしそれが彼の者であれば、その魔力戦力たるやマギイスト様に匹敵いたしますぞ。
その上あの土地は第三大騎士団の一つ、旧アルミニオのオーロ帝国騎士団第三旅団"十字騎士団クルシミリート"の駐留地。
あの鋼兵殿と連合を組めば、国と、このオーロ帝国とやりあうには十分過ぎます」
「1人で国が崩せる.....」
「それを本土は考慮しております。恐らく早々に手を引きたいのもそのためかと。
我ら陸軍第二騎士大隊は辺境の民を束ねるのが役目。おそらく、本土もそれほど国防に重要だとは思っておりますまい。
それに、本日より五カ国協定会議がはじまりまする。ここで戦闘を起こすのは、どの道思わしくはありません。」
「.......っ!」
ほろりと、アルジェンドは静かに涙した
「こんな...こんな所で私は終わりなのか!!!」
握り締めた拳を、アルジェンドは何度も机に叩きつける。
何度も叩くアルジェンドの拳を、ナールドが掴んだ。
「いえ姫様、まだ終わりではありませぬぞ
終わりに致しませぬ。
このナールド、我が命をもって姫様を護ってご覧に入れまする。」
そういうとナールドは手を放し、執務室の机からいくつかの魔法薬の瓶と魔方陣の書かれた紙を引っ張り出す。
そして、壁の本棚の裏から使い込まれた二振りの刀が出てきた。
「!?
その剣は家宝の双剣、何ゆえそれを?」
「何、久方ぶりに姪にしてやれる事が出来ましてね。
この老骨でよければ血でも肉でも何でも差し出しましょう」
そして、腰に剣を挿し、身体強化の付与効果をもたらすポーションを一息にのみ、颯爽と部屋の扉を開け放つ。
ナールドの髪は僅かに逆立ち、その体には魔力がいきわたる。
(なるほど、禁魔クラスの薬な訳だ。私の身も持ちはすまいな)
「叔父上!!!」
「アルジェンドよ」
追いすがるアルジェンドを拒絶するかのようにピシャリと放つ
「私は叔父として何一つしてやることが出来なかった不出来な叔父だ。
娘のように思っている姪を、嬲られるのを承知で差し出すわけには行かない」
そしてそのまま振り向かずナールドは足早に亜竜をつないでいる建屋まで歩き出した。
「すまない、アルジェンド。私にはこれぐらいしか出来ない」
「叔父上....」
朝日に照らされるナールドの背中が儚く、輝いて見えた。
自ら死地へ飛び立つナールドをアルジェンドは見送るしかなかった。
ナールドが外に出るとすでに出立準備が出来た騎士隊が整列していた。
皆ナールドが出てくるのを確認すると、帝国式の敬礼にて姿勢を正した
その姿を見て、驚きで目を見開いた。目の前には騎士だけでなく、亜竜が準備されていたのだ。
ざっとみて3個中隊が勢ぞろいしている。それぞれが竜騎士隊の隊長を筆頭に整列して。
「....お前達、今日は皆非番にしていたはずだ。
シェズ、ジーン、カリーナ、この有様を報告しろ」
名前を呼ばれた、腕章をつけた騎士がそれぞれ前に進み出て剣をかざす。
最初に一番小柄な金髪ショートカットの青い目をした犬耳の女性が進み出て、声高に叫んだ
「ロイヤル・ドラグーン・ナイツ、シェズ・レブロン兵長!
対魔人戦闘要員として馳せ参じた次第!!!これよりドラグーン中隊 シェズ隊15名はナールド作戦参謀の指揮下に入ります!!!」
次いで、背の高い、短いグレーの髪をした翠の瞳をした青年が進み出て叫ぶ。腰から爬虫類の尻尾が見えている。
「ロイヤル・ドラグーン・ナイツ、ジーン・マクマホン伍長!
対魔人戦闘要員及びナールド作戦参謀護衛の任にて馳せ参上!!これよりドラグーン中隊 ジーン隊30名はナールド作戦参謀の指揮下に入ります!!」
最後に、腰まである赤い髪を後ろにまとめた、瞳も赤い少し大柄の女性が進み出て叫ぶ。はちきれんばかりのボリュームがあるため、軍服の胸がはだけている。
「ロイヤル・ドラグーン・ナイツ、カリーナ・アレクサンドラ曹長!
ナールド作戦参謀護衛の任にて馳せ参上!!これよりドラグーン中隊 カリーナ隊22名はナールド作戦参謀の指揮下に入ります!!!」
「....今回はきわめて生存率が低い任務だ。兵の数でどうにかはならん。不要だ。」
「いくらアルジェンド総帥に剣術を教えていらっしゃる方とは言え、多少の兵卒は必要かと!!」
犬耳のシェズが元気良く答える。
「作戦参謀、我らもアルジェンド総帥をあのような卑劣な野獣に渡したくはありません。
アルジェンド様のためなら、安い命でございますれば」
ジーンはこぶしを強く握り締め、口の端からはかみ締めた唇から血が流れていた
「うちの若いのが先走っているみたいだけど、我らの言いたいことは一緒ですよ
アルジェンド様は渡さない。たとえ、多くの犠牲を払っても」
カリーナは強い意志を持って、ナールドに自身の心を伝えた
騎士たちの総意たるその言葉は、一人ひとりが強い心を持ってここに集結した証である。
誰一人離反者も居らず、皆一様に引き締まった表情でナールドの言葉を待った。
その様子を見て、ナールドはフッと笑みをこぼす。
「全く、戦果を重んじるオーロ軍人らしからぬ所業だ」
そして腰の剣の鞘を払い、天高く掲げた
「いいだろう、ロイヤル・ドラグーン・ナイツはこれよりナールド指揮下でアルジェンド第三姫の奪還任務に移行する。
いいか、これは重大な命令違反だ!!!
皆の者、本任務が完遂しようと命令違反の咎は免れぬ!!!
死ぬ気で付いて来い!!!」
『『『『『応!!!』』』』
そしてナールド率いる竜騎兵団、総勢68名は鋼兵の居るリバーサイドへ飛び立った
この先に絶望が待ち受けようと、戦士達の勢いは止まらない。
愛する女性のため、天を駆けていく。




