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第39話 再会

―上空、10000m。亜音速で飛ぶ鋼兵に鳥の魔物が寄ってくるが鋼兵と接触するときに爆ぜて絶命する。


通常であれば空を飛ぶには鳥の魔物や飛行タイプの魔物に空中戦で勝てるワイバーンや亜竜種を呼び飛ぶしかない。


ヘーラ・ドラコのように元から龍族である場合を除き、よほど訓練しなければ呼び出した瞬間に食われて終わってしまうが。


下を見ると、地上は見渡す限りの新緑だがオーロとプルーヴォを結ぶ道は比較的大きかったため、鋼兵はゾスマと分かれてからひたすらこの道の上を滑空していた。


「あそこか」


鋼兵はゆっくりと狙いを澄まし、直角に飛び込んだ。狙いは街道横の森だ。


遠目にみてこちらに向かってきているエレネ達を見つけたのでそこに着地するためだ。


空中に一時停止し、一気に地面へ向かい加速し続ける。風を裂く音が唸る。あっと言う間に地面が近づいてきた


「―っ!」


やばい!と思った頃にはすでに遅く、頭から垂直に地面へ突っ込んだ


頭がぶつかる瞬間


―"身体強化!!"


―チュドーーーン!!!


強化魔術により硬度を上げた体で頭から地面に飛び込んだため、派手に土煙を上げながら着地するハメになった。


しかし強化魔術のお陰で地面に大きなクレーターを残すだけで鋼兵自身はなんとも無かった。


「この術便利だよなぁ...」


そして、ようやくクレーターから抜け出したところで、懐かしい、涙でぐちゃぐちゃな顔ぶれが見えた。


「おうみn「鋼兵様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」


「っくぁwせdrftgyふじこlp」


開口一番、鋼兵の腹に向かって飛び込んできたスクツは嬉さのあまり目にも留まらぬスピードで鋼兵にダイブした。


声をかけようとしたところに、鳩尾に内臓を穿つような強烈な一撃をお見舞いされる。


周りを見渡すと。そして、次いで懐かしい面々が出てきた。


「ってて.....よう」


「鋼兵様、良くぞご無事で」


エレネは目の端に涙を湛えている。


「さすがですわ。我が主」


フローロに至ってはさも当然といった感じで鋼兵のすぐ傍に立っていた。


「うっ....うぅ」


エレネは感激のあまり泣き始める始末である


「ん?その御仁が君らの言っていた方かね?」


大騒ぎしていると、それを聞きつけたエディンがイネスと共に駆け寄ってきた


「どうも。小野鋼兵といいます」


はしゃぐスクツ(強烈な雷撃つき)を引き剥がし、鋼兵はエディンと会い向かう


「ほう、噂に聞く美丈夫だな。...いや、美少年か?」


「私はこれでも20です」


「そうか、ならばやはり少年だな」


「このお方があの?


 見目麗しいけれど、あの悪魔と呼ばれる存在には見えないわね。


 でも、先ほどの飛行魔術を見る限り、本当なのでしょうね」


「はは.....」


「さて、お若い騎士殿。


 我ら腐ってもアルミニオの民、ここでむざむざ切り殺されるわけにはいかぬ故、もし手合わせしたいのであれば場所を変えるが?」


腰の剣に手をかけるエディン。横に居たイネスが身をこわばらせる


「.....っ!」


鋼兵はゆっくりと亜空間から刀を取り出し、そのまま地面に置く


「俺に抵抗の意思は無い。このままプルーヴォへ返してくれれば問題はない


「っふぅ、焦った。死ぬかと思ったぜ。まじめによ」


「俺ってどう思われてるんだ?」


「少なくとも、帝国じゃああの牛魔将軍を破ったただ一人の人間ってことで恐れられてる。または、奇妙な術で皆殺しに遭うとかな


 だから人々は君をデンサヂャルデーノの悪魔と呼び恐れている」


「そんな.....」


「ま、こっちが安全だと分かればたいした問題じゃねぇさ」


「そうかい」


エディンが後ろの部隊に指示を送って問題ないことを伝える


その後周りの森からぞろぞろと多くの兵士が出てきた。それぞれが武器を手に持ち表情を強張らせつつも出てきた。


「さて、ここからオーロ国境まではオークの住む森を抜けねばならん。あそこには古城もあるが、今は昆虫魔物の住処でな。


 よって野宿はオススメできない。比較的安全な馬車道がある。そっちを通れ」


エディンは鋼兵についてくるように言い、イネスを護衛つきの馬車まで案内した。


「この街道は五カ国協定会議の参加者が通る可能性が高い。下手に動くと面倒になる」


エディンはすばやく部隊に指示を出し、ここ周りに待機していた兵士を集める


「この森はリバーサイドからかなり近いが、用心はしといた方が良い。


 なぜか知らんが、君の姫君がこっちだと言って走り出してな。ここが分かったというわけさ」


「そうなんです。なぜかこちらのような気がして」


「ああ、それはな」


鋼兵が不思議そうな顔をするエレネを指差し、僅かに魔力を込める


「"起きろ、ドラコス"」


するとエレネのバッグから鋼兵から渡された石が飛び出し、地面に着いた瞬間剣となり、突き刺さった。


そして、その剣は光り輝くと"人の姿に変化"した。


『待ちくたびれたぜ、アイロン』


その男はゆっくりと腕を回し体の調子を確認する。


「その呼び方は止せ」


ドラコス・ドラコニアはかつての鋼兵の"装備"で、南蛮の船に乗ってやってきた"剣"である。


遙か昔の龍と人との戦いに用いられ、龍の血を浴びた剣は永い時の間に精霊となり、やがてその姿を現す。


彼は魔術師によってこの世に顕現することができ、人体を得た事で世界を回り様々な武術を会得。


中でもクンフーは十八番で彼はクンフーの達人であると同時に五形拳と八極拳もマスターした拳聖である。


鋼兵の拳法の師でもあり、身長は190cm、体重100kgの巨漢。金髪を短くオールバックにし、瞳はエメラルドグリーン。


目鼻がすっとしており、彫りの深い顔は明らかに鋼兵とは異なる。


正に偉丈夫と思われるこの男は、この戦のさなか防具を何も身につけず、黒のズボンに白いシャツといったラフな格好である。


『こう、呼ばれないと体が鈍るってもんだ』


腕をぐるぐる回しながらドラコスは周りを見渡す


『ふむ、ここは元居た世界とは全く別物だな』


「そうだな。俺が居た時代と違う」


『細けぇことはどうだっていいのさ。俺が呼ばれたってことは、戦だろ?』


その言葉を合図にドラコスの両手には銀に光る手甲がはめられていた。


その手の甲には魔方陣が刻まれ、真ん中には竜がかたどられている。


「ああ。


 いつの時代も世話になりっぱなしだな........


 それと、俺の居ない間にこの者達を導いてくれて感謝している」


『なに、いいって事よ。.....あー、なんていうか、あれだ。


 サラの奴は来てないのか?』


「........」


『まぁ俺が口出す事じゃねぇけどよ、たまには呼んでやれよ。今でも健気にも待ってるんだぜ、お前さんのこと』


「あのー......」


ここでようやくエレネが口を出した。横のドラコスに恐る恐るといった感じだ。


「ああ、すまない。こいつは元俺の師匠」


『今でもだがね』


「のドラコス・ドラコニア。拳法の師範でもある。今まではこいつに導いてもらった」


『お嬢ちゃん、こいつは一筋縄じゃいかねぇぜ?』


ぐっと親指を立てて軽くウィンクをする。


「はぁ....」


「えっと」


「まず森を抜けようか」


鋼兵が何か言う前に、痺れを切らしたエディンが口を開いた


「そろそろ、五カ国協定の参加者がここの街道を通りそうなんだ。早く抜けよう」


「「「「はい」」」」


鋼兵(その周りを取り囲むように、エレネ、スクツ、フローロ)の一行はすぐさま辺りを再確認し、すぐさま街道へ抜ける道へ抜けた


鋼兵達が森を抜けたところで、丁度オーロとは反対側から隊列を組んだ兵隊の足音が聞こえてきた。


その姿はゆっくりと現れ、数はおおよそ1個師団レベルであろう。


その部隊が掲げる旗は、蒼地に金の刺繍で縁取られ、真ん中に真紅の刺繍で動物の絵が十二体描かれていた。


鋼兵が動かずに立ち止まっていると、部隊の中央から1人だけ馬に乗った豪華な兵装の兵士が寄ってきた。


「おいそこのガキ共。


 この辺りに例のデンサジャルデーノの悪魔が居ると聞いた、そのような者は見なかったか?」


声をかけたその人は、腰の辺りから虎柄の尻尾を生やし、顔面にはネコのようなひげが生えていた


そして、その目は肉食獣と同じ血走り獰猛な目をしていた。


「失礼ですが、あなたは?」


「ふん、通常貴様などに名乗る名は無いが、特別に教えてやる


 俺はアクロ王国王虎騎士団 団長のティグロだ。


 我らアクロに害成すやつを成敗に来た。


 知っていれば素直に教えろ」


丁度鋼兵達は街道のど真ん中に居たためティグロの軍勢と相対する形となっている。



そしてティグロの軍勢は、皆虎のような風貌に虎のような毛を生やし、一様に甲冑や武器を手にしていなかった


「喰われたくなかったら、早く言え」


ティグロはいかにも余裕といった風体で鋼兵たちを見下す


『ふむ、どうだろう鋼兵俺にやらせてくれないか?』


「その体でか」


うっすらとドラコスの手甲の魔方陣が光り始める


『やばくなったら消してもらってかまわん』


「分かった」


鋼兵達が話している間にティグロへ別の兵士が駆け寄り何か紙を見せた


すると、その紙を見たティグロがものすごい形相で鋼兵を睨みつけ始めた


「ほう、貴様がデンサヂャルデーノ平原の悪魔か。そのようにひょろくては気がつかなかったぜ。体格からしてそこが知れるな」


ティグロは周りの配下にすばやく指示を出し、あっという間に鋼兵達の周りを取り囲んだ


「グハハハハハ、逃がすわけねぇだろ!!!


 今回はこの俺、虎族の首長たる俺様が相手になってやる!!


 たかが牛の魔人を倒したところで何の自慢にもならん!!!」


ティグロは馬から飛び降り、鋼兵達の前に進み出て目の前で構えをして見せたそれは通常の武術ではなく、獣を連想させる構えだった


『私がお相手しよう』


鋼兵とティグロの間に割って入り、ドラコスがティグロに対して構えを取る


『その前に聞きたい。なぜいきなり仕掛けてきた?なっぜ戦わなければならんのか教えてほしい』


するとティグロは不思議そうな顔で答える。


「そんな事ァどーだって良い。強いのか弱いのか、それが重要なんだ。


 俺とやんだろ?掛かって来いよ」


『............』


―ドーン!!!


ティグロの軍勢の中から、突如銅鑼の音が響いた。


―ドゴッ


それを合図にお互いに拳と拳がぶつかり合う。大気がうねりと共に振動する。


これが開始の合図となり、瞬く間に間合いの取り合いとなった。蹴りと蹴りが異なる軌跡を描いてぶつかり、"発頸"と"獣気"がぶつかり合う。


ティグロは全く予想できない位置から蹴りや突き上げ、手刀など様々な攻撃を仕掛ける。手は虎のように鋭い爪が生え、その切り裂きは地面をえぐるほどである。


対するドラコスの技の威力、精度、熟練度はかなりのもので、その昔"黄金の槌"と呼ばれ徒手空拳では並ぶものは無いとされた伝説の達人。


凄まじい蹴りと突きの応酬。達人と呼ばれる一握りの武人がたどり着く境地。


ティグロのひっかきを寸前上体を反らして避け、返しに蹴り上げを叩き込む。


呼吸一つ乱さぬ技の応酬に、周りもその戦いに息を飲む。


片や冷静に、片や情熱的に、最速を謳うならばこれほど顕現している武人はいない。


(おぃ、嘘だろ!?)


しかし、明らかに、僅かに拳速が違う。


ドラコスは息切れ一つせず、汗一つかかず淡々と高速で突きを繰り出す。


蹴りをいれ大きく相手と距離をとり、僅かにドラコスの周りに火花が散り始める


『"雷帝"顕現』


体から一気にオーラが迸り、ドラコスの髪が逆立ち、体から電気を放ち始めた。体の回りに金色の電流が走り周囲をプラズマ化させていく。


「あれは!?」


エレネが驚いたように目をむく


「ああ、ドラコスも使えるぜ。俺の雷帝より数段階"速い"けどな」


「しかし、あの術は鋼兵様自身で編み出されたものでは?」


「そうだよ。でもあの術を奴に教えたら面白いぐらいに強くなったんだよな」


そこからというもの、ティグロが放つ拳速の数倍の速さでドラコスは攻撃を仕掛ける


移動のスピードが人間のそれではない。一瞬で間合いを詰めたかと思えば瞬時に後退して一切の反撃の隙を与えない。


一気に懐に飛び込み、打ち上げてから上空で連撃を加える。空間を蹴って飛び


上がるので、他から見れば空にティグロが舞っているようにしか見えない。


『ッシ!!!


 ッシ!!!


 ッシ!!!』


凄まじい気の凝縮した横薙ぎの強烈な一撃を三回。体を回転させながら放たれる強力無比な打撃をもろに食らい、ティグロは地面に叩きつけられる。


「........」


そのままティグロは気を失い、ピクリとも動かなくなった


『頑丈な体だな。さて.....』


じろりと周りを見渡し、ティグロの軍勢を睨みつけ、それにたじろぐ様に一歩また一歩と軍団は後ろに後退していく。


『残党狩りだ。逃がさんぞ雑兵が』

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