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第29話 入国の壁

エレネ達がオーロ国境手前の古城へ向かっている間、すでに鋼兵はオーロ国境の壁まで来ていた


―先行してここまで来たはいいが....


国境の検問にはオーロの魔人兵が立っており、身の丈は常人の2倍、筋骨隆々の浅黒い肌をした兵士が2人居た


大きな壁には3m程度の門が設置されており、その両脇に兵士が立っている


外はすでに暗闇と化しているので、兵士の頭上には松明が掲げられ足元を照らしていた


鋼兵が


「相手の装備は剣一振り、盾...人数は........手前に2人、奥に3人、壁の上に3人か」


服装はヘーラからもらった軍服でアクロの上級士官が着るものだったのでここまま素通りは出来ない


下手をすればオーロだけでなくアクロまで敵に回しかねない


―後詰にこの相手は無理だな。かといって無理に押し通れば余計な問題が起きるか


見ている限り、兵士は相手の顔をチェックし魔人以外は全て身元の確認を行っている。


そのまま通るものも居れば、そのまま詰め所に連れて行かされるものも居た


「!」


鋼兵はかすかに感じた気配に暗闇を睨みつける


「.....」


暗闇の向こうからこちらの様子を伺っている奴が居る。しかも人の気配に似ている。


まるでこちらの正体に気づいているかのように仕掛けてこない


「...誰だ」


鋼兵はかすかにそう呟いた


すると、暗闇の中から姿を現したのは意外な人物だった


「デンサヂャルデーノの悪魔......いや、旦那」


かつて鋼兵が倒した相手、コンヅキその人だった


服と鎧はボロボロでところどころ欠けており、腰の剣は片方無くなっていた


しかし、体には傷ひとつ無く傷だらけの顔は赤みが差していた


「おまえは....あの時の山賊か。いまさら何用だ。


 また、斬り合うか?」


鋼兵は挑発するかのように腰の刀を握り締める


相手の出方次第ではこの状況を更に悪化させかねない。


しかし、相手からは予想外の言葉が出た


「い、いや、あんたとはもう戦いたくねぇ!!!


 本当だ、剣も持ってねぇだろう!?」


コンヅキは必死に戦意がなく降伏した旨を述べる


「....ならば何故俺の前に現れた」


「あんた、俺のカミさんを助けてくれるって言っただろう!?


 あの言葉を信じていいんだよな!?俺はもうオーロの軍人としては戦わねぇ!


 それに、もしかしたらこの戦争自体が無くなる可能性もあるんだ!!!


 だから、俺を...俺の家族を助けてくれ!!!」


いうやいなや土下座をして必死に謝り、許しを請うた


「......話を聞かせろ。その前にお前の名前もな」


柄にかけていた手をどけ、鋼兵も戦意が無いことを示した


「っ!


 ああ、もちろんだ!!


 俺の名前はコンヅキ。オーロ帝国陸軍歩兵隊第一大隊に所属していた


 まず、この戦争の発端は無理な富国政策にあった。


 そもそもオーロは現状でも大陸でも有数の強国でありながら他国とはそれほど仲が悪かったわけじゃねぇ。


 初代から前の大老院までは戦争をしないような政策が主体だった...


 だが、現大老院はその政策とは逆の政策を打ち出した


 それが"第一次帝国進攻戦"だ」


「第一次...帝国進攻戦?」


「ああ


 これはオーロの急進派が打ち立てた政策で、今領土内で高まりつつある魔人族との衝突を抑えるために


 標的を国外へ誘導し、かつ自国の領土を増やす事で溢れる食い扶持を減らすのが目的だった


 その標的として真っ先に狙われたのがプルーヴォだった


 エルフの国であり、流行り病で戦力を欠いたという報告も受けた。


 そして先の戦があった」


コンヅキはここで一旦区切り、辺りを見回してから抑えるように続けた


「だがこの話には裏がある。


 俺はオーロ帝国兵団の陸軍歩兵隊第一大隊の分隊を構成し出陣した。


 斥候任務と敵戦力調査任務だったが、実質はプルーヴォへそのまま進軍するつもりだった


 しかし先遣隊が戦っている戦場に着いた頃にはあんたが殺した牛魔の屍で戦場が埋め尽くされていた


 俺は堪らなくなって逃げ出した。情けねぇ話だ」


「待て。


 貴様の話には目的が見えない。先ほどの話では戦を余儀なくされたというふうな話だと思った。


 だが聞く限りではプルーヴォに攻め入るのに自国の勝手な理由だと思われるがな」


「ああ、そう思ったさ俺もな。


 だが考えてみろ、いきなり自国の利益のみを目的とした戦をいきなり仕掛けるか?


 俺は不審に思って上官に渡すはずだった本部からの指令書を盗み読んだ


 すると中にはこれまでオーロが仕掛けた戦の証拠をもみ消すための指示と、関係者の抹殺。


 そしてあの牛魔将軍さえも利用した計画があった」


「...その計画とはなんだ」


「いや、ここから先は説明が難しい。


 俺と一緒についてきてくれ。証拠を見せる。」


「今の説明で信用しろと?」


「信用してくれなくてもかまわない。だがあのお嬢さんがここを抜けるのは厄介だろうな?


 な?俺を信用してくれ。


 必ずここを通してみせる


 頼む」


「....」


「あんたに助けられたこの命、恩を返してぇ!」


しばしの沈黙。


背後の検問所を振り返ると、他国の商人が真っ青な顔をして詰め所に連れて行かれていく所だった


「....分かった、信用しよう。


 まずはどうする?」


「そうだな...


 俺がアンタを先導する。見たところアクロの上級士官が着る服のようだ。


 丁度諸外国を招いて今回の一連の騒動に関する説明をオーロの方で開催する予定のはずだ。


 それに紛れ込もう。


 ちなみに、参加する会議の名前は"五カ国協定会議だ"」


「その会議の情報も盗み見たものか」


「ああ。


 恐らくプルーヴォには宣戦布告しているが、その実他国には攻め入った別の理由を説明するはずだ。


 プルーヴォが他国に助けを求める前にな。


 プルーヴォの上にはアクロが居る。


 アクロの政務官を抱き込むのは必要なはずだ」


一気にまくし立て、コンヅキは一息ついた


「どうだ、駄目か?」


先ほどから眼をつぶり黙り込む鋼兵に対し内心コンヅキは不安に思っていた


コンヅキは祖国に残した家族を国外へ退避、自身も生き延びることが目的だった。


恐らく、あの女は自分が生きて帰るのを喜ばないだろう


だが不用意に自身の兵士を切り殺せば問題になる


自国内へ入れるかどうかが勝負だったのだ


しばし沈黙の後、鋼兵はゆっくりと目を開き、意を決したようにこういった


「その案、了承した。


 だが後詰の部隊はどうなる?」


「ああ、それなら心配いらねぇさ。


 アンタがこの国に入っちまえば、後は簡単だ。


 さあ、まずは手ごろな人乗用馬車を見つけよう」


意気揚々と歩き出すコンヅキに鋼兵は一抹の不安を感じながらも相手の口車に乗ってやることにした。


―どうせ他に方法は無い。いざとなれば力ずくだ


鋼兵はその場に一枚のしおりほどの紙切れを残し、コンヅキの後を追った

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