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第27話 拘束


「着るものと食料を分けてもらった上に籠まで用意してもらって悪いな。


 お前らもプルーヴォの国から来たのか?」


鋼兵はスメラルダの用意した白龍の背に付けた籠に乗り一路オーロ国境まで空から向かっていた


着るものとしてアクロの上級仕官が着る上下の軍服に黒のブーツ、軍隊の将校のような格好となっていた


半分はヘーラの趣味によるものが多いが


「気にするな、困ったときはお互い様じゃからな


 のう、スメラルダ」


「...はい」


スメラルダが用意した乗り物は白い龍にゴンドラの大きいタイプを背に乗せているもので、


アクロの上級仕官であれば誰でも乗れるものだった。


普通のゴンドラよりかなり内装は大きく、ちょっとした部屋と同じくらいの大きさがある。


そんな狭い空間の中で、このような危険な男と一緒では気が気ではなかった


どのような相手でも普段はこのような対応を取る事はまず無いのだが、鋼兵の底知れぬ圧力に龍としての本能が告げていた


故にスメラルダは終始鋼兵に対する警戒を解かなかった


―この男は危険だ


鋼兵に対する思案が交錯する一方、鋼兵ははぐれたエレネ達を探していた


―エレネクラスであれば簡単に見つかると思ったが、森の中に厄介なのもみつけたな。先回りするか


そう思っているのを読み取られたのか、ヘーラはとめどなく鋼兵に対して質問を投げかけていた。


「そうじゃ、先ほどのお主の術はなんじゃ?


 土から体が出来ておったが、おぬしは使い魔か何かなのか?」


ヘーラは一切表情を崩さずににこやかに質問したつもりだったがその心は鋼兵の操る未知の術に興味深々だった。


特に、先ほどのようなA++ランクの火力を持つ自爆の炎術は防ぐことはおろか逃げることすら出来ない。


普通であれば骨も残らない。


この世界の構造たる"これはいうものだ"という概念がこの男には通用しない。


これが鋼兵をアクロに引き入れたい最大のポイントであると共にアクロにとっての最大の脅威であった。


龍の一族はいかなる魔術を得手とするが、先ほどのような土を使った蘇生じみた生還など聞いたことも無い。


「なんというべきなのかな...


 あれは土から再生したのではなく、土にしたのさ」


「土に?」


「体を限界まで細かく分散させることで爆破の威力と拘束を解き、大地へと還すことで一時的に回避、


 その後自然界の気の流れに沿って体を再構築させた。


 それだけだ」


あっけらかんと言う鋼兵に対し、ヘーラとスメラルダは眼を丸くした


―こやつ、何を言っているのか一切分からぬ!!


話の合間に、地上に眼をやり国境の目印といわれている長い壁が眼に入った


「....とと、この辺でいい。おろしてくれ」


そうこうしているうちにエレネ達を追い越し、いつのまにかオーロ国境に着いてしまった


鋼兵はおいていた布都御魂剣を手に取り、ヘーラからもらった竜神織と呼ばれる不思議な布で丁寧に巻いていった


竜神織は龍の一族に伝わる布の名称で、刃物で切れず、燃えないという優れた素材である。


「.....そなたの名前を聞いておらなんだな。


 名はなんと言う?」


「ん?


 そういえば自己紹介もまだだったな


 俺は鋼兵、小野鋼兵という。現在はプルーヴォの客分として籍を置いている


 そちらは?」


ヘーラは意を決し口を開いた


「私はアクロ王国国政政務官ヘーラ・ドラコ。こちらは副政務官のスメラルダ。


 今日は用あってこの地へ赴いた。


 それはな、そなたの捕獲じゃ。"デンサヂャルデーノの悪魔"よ」


瞬く間に鋼兵の体へ幾条もの呪文が走り、鋼兵を縛り付けた


ヘーラが渡した服には細工がしてあり、服の内側に捕縛用の結界陣が描かれていた


それに加え、龍人特有の"瞳術"により鋼兵は動くことが出来なかった


「ふむ、こんなものかのぅ。


 動くでないぞ小僧、わしとて本気じゃ。しかし術はこれでも抑えておる」


ヘーラの眼は金色に加え光を放っているほど輝いていた。そして、頭に生えた角もまた輝いていた


「悪く思うなよ小僧、お主の力はちと危のうてな。


 こうして、手元に置くのが安全じゃと判断したまでよ」


鋼兵はヘーラをにらみ返し、体に力を入れようとしたがまるで力が入らなかった


「無駄です。ヘーラ様の瞳術は龍の一族でも特に強力なものです。


 諦めなさい」


スメラルダはいつの間にか短刀を用意しており、鋼兵に向けて真っ直ぐに突きつけた


「しかし、このまま固めていては使い物にならぬからの、どれ口だけでも動かしてやろうかの」


指先を動かし鋼兵の口だけ術を解く


「どうじゃ、これが龍の力じゃ。お主のような若造には解けぬ


 無駄に抵抗しても、このようにすぐに拘束できる。わしらと一緒に来やい」


なおも鋼兵が抵抗すると見て術の拘束自体は解かない


―ふん、いかにデンサヂャルデーノの悪魔とは言え所詮は人。こんなものかの


やれやれといった具合にかぶりを振る


ヘーラの中ではすでに鋼兵には勝利していた。拍子抜けですらあった


「ひとつ、勘違いしているな」


鋼兵は表情ひとつ崩さず、真っ直ぐにヘーラと対峙する


「なに?」


「瞳術は半分暗示のようなもの、それを妖術と併せて掛けることであたかも瞳術で留めていると見せかけている。


 そんなことで俺は止められはしないぜ?」


「威勢だけは褒め置こう。しかし、この状況は待っていても改善はせぬぞ?」


「確かに、この術は並みの術者では解けまい。


 発動も強固のようだな。


 しかし、ヌルい」


―キイイィィイイン!!!


ぐっと力を込め、全身に気をたぎらせ、瞬間的に爆発させる


「何!?」


「これは...!」


幾重にも重なった拘束術式を一気に解き放ち、その勢いでヘーラとスメラルダに"金縛りの術"を掛けた


「悪いね、暗示、金縛りの類は嫌と言うほど食らってきたんだ。


 この程度では抜けることは容易いのさ。


 ああそれと、相手がそれ相応の術者であると分かっていながら何の対策もしないようでは戦場では通用しないぞ、龍よ」


鋼兵がヘーラに歩み寄り、同じ目線で語りかける


「この籠は置いてゆこう。


 しばらくしたら解ける。それまでそのままだな


 さらばだ」


踵を返し、籠に付いている窓のヘリまで歩いていく


「......!!!」


声にならない声で叫び、鋼兵を睨みつけるヘーラ


「...悪いね、今の空気が気に入ってんだ。


 あんたらとはその後で付き合わせてもらうさ」


そういい残すと、鋼兵は窓から身を乗り出し遥か下の深い森までダイブした


残されたヘーラとスメラルダは鋼兵が飛び去るのを確認すると、全力で術を解きに掛かった


(と、解けない!!!)


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