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第25話 共倒れ


あの術師は逃げたのか


ファイロ王国国王軍魔術師隊、第弐炎術師隊隊長のファイエスタは自身の持つ魔力の限界、


"鳳凰"を完成するべく陣を張っていたが相手方の魔術師が一人になったのを確認し、密かに別働隊に連絡を入れていた。


元々グラツィーオ一族が治めるこの地には長居は不要である。


次期王妃の祖国であるこの土地の戦士達は非常に優秀な武人である。


我々ファイロが介入せずとも自身の武力で解決するはずであった。


しかし、それがほんの少し前オーロの襲撃に遭い壊滅的な被害を被った。


それは先日の夕方から深夜に掛けての襲撃だった。


これほど早くグラツィーオの戦士はやられはしない。


しかし、これほどの武勇の剛の者であれば話は別である。


こちらの攻撃をあしらいつつも攻めに転じる隙を狙い続けている


デンサヂャルデーノ平原の戦いはファイロにまで聞こえている。


元より、"魔術を剣で弾く"剣士など聞いたことも無い。


オーロとて魔術師には魔術師を当ててくる


それが戦争のやり方であり今まで変わることなき常套手段である


それが今、覆されようとしている


―恐らく、目の前の戦士はオーロの手先ではないだろう。しかし、生かしておけば確実にファイロの脅威となる。


デンサヂャルデーノの悪魔との戦いは始まっている。


横にいる若い魔術師はミルダヴァールモ


今年魔術師隊に入隊した新人で、実力もあり将来を期待されていた男である。


若くして頭角を現し、ファイエスタに師事するため魔術師隊を志願。これが3回目の出動であった。


―ミルダ、許せ。俺も共に行く。


魔力を使いすぎれば自身の生命エネルギーを代価に術は展開される。


すでにファイアウォールに渾身の魔力を注ぎ込んでいるので杖を持たない左腕は魔力を通わせておらず、指先から炭化が始まっている。


それでも苦痛を表情に出さず、相手の攻撃を必死に抑えていた。


ミルダヴァールモは自身最期の戦いとなるだろうこの戦闘に文字通り命を燃やして挑んだ


祖国と、愛する王女を護らんが為


―行くぞデンサヂャルデーノの悪魔よ。ファイロ魔術師の意地、とくと見るがいい!


鳳凰の陣、完成まであと5分





―思ったより火力が高い...!


プルーヴォで着付けてもらった服がところどころ焦げている。袖は破けてボロボロだ。


そして、周囲の炎系魔術師が鋼兵一人になった頃合を見計らってより一層攻勢に出始めたのも痛い


全てはこれを見越してか、全員が命がけで鋼兵の頭を取りに来ていた。


地面は度重なる炎の影響で焦げ、乾き、ひび割れている


周りの木々は焼き払われ、すでに炭化し鎮火している。


「がぁああはははははぁああああぁぁあああぁあぁあアアアアァァアァァア!!!!!!!」


ふとファイアボールを撃っていた魔術師が突然苦しみだす


「ッ!.....隊長、後を.....頼みます」


魔術師がそうつぶやくと、その体が見る見るうちに灰となり消えていった


残ったのは赤いローブと黒く焦げた杖のみだった


「.....エルバエン」


これを期に次々魔力切れを起こし、魔術師の大半が灰となっていった。


鋼兵は他の余力のある魔術師数人を二刀流の刀にて仕留め、残るは隊長格のみとなった


すでにファイアウォールを構成していた魔術師は灰となり、現在は隊長格の結界のみとなっている。


「...残るはお前のみだ」


鋼兵は手にした脇差を向け、刀を腰にしまった


「...で、あるな」


魔術師もまた杖を鋼兵に向けた


「しかしここでお前は負けようぞ」


「それは無いな」


しばしの沈黙のあと、鋼兵は脇差も腰にしまった


そして、右腕の梵字に気を込める


「わざわざ待っていてくれるのか」


鋼兵は相手と一定の距離をとり、静かに印を組む


「待っていたのは貴様であろう。


 こちらの準備は良い。いつでも来い」


「ああ、行かせてもらう。


 ...ただ、譲れない所があってな。これだけははっきりさせておきたい」


「奇遇だな。私もだ」


お互いに不敵に微笑みあい、そして


「「勝つのは俺(私)だ」」


ほぼ同時にお互いに魔術を放った。


ファイロの魔術師は鳳凰の術を


鋼兵はゆっくりと腕を掲げ、その経文に気を込める


「"万物の静止

       凍て付く時空

              全てを閉ざす理の回廊


  対時空結界-森羅-"」


瞬間の攻防。


「そ、そんな事が....!」


ファイエスタの魔術は完璧なタイミングで発動した。


しかし


「私の魔術を"留めた"だと!?」


鳳凰の術は術者を中心とした高周波発振装置なので、半径20kmはオーブンになるという凶悪な魔術である。


故に鳳凰


その術は準備時間がかかるものの、一度発動してしまえば十割通る技として有名だった。


ゆえにデンサヂャルデーノの悪魔を仕留めるのにはこの術が必須と思われていた


これが間違いだった。


鋼兵はその術を"術ごと静止させる"事で不発に終わらせた


「...この数の命をもってして止められんとは」


元々俺達がここまで騒ぎ立てたわけじゃない。


とばっちりもいいところなのである


「残念ながら不発のようだな」


俺は結界を解き、術者に近づいた


その瞬間、ファイエスタはカッと眼を見開き


「カカカカカ!!!


 お前をこの程度で止められるとは思っておらん!!!!


 "火具鎚(カグツチ)"!!」


再起不能と思われたファイエスタの腕から、突如幾重の呪文が浮き出た


赤く光るその呪文はファイエスタの両腕から全身に広がり、顔にまで広がった


魔術の発動まで0.1


「!?」


ファイエスタを覆う赤い呪文は鋼兵の腕に絡みつき、地面にも広がり始める。


遂には一帯に呪文の魔方陣が完成した


「くっ、これは縛術結界か!」


『共ニ、散レ』


ファイエスタの両目が赤く光り、ニヤッと笑う


声はしゃがれており、顔は火の様に真っ赤である。


そして、ファイエスタの体が膨張し始めた。


「ならばっ!


 極弐式」


『無駄ダ。コノ術ハ解ケナイ。』


そして、体の倍以上膨れ上がったその体は、遂に弾けた


「布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)!!」


ファイエスタの体がはじけ飛ぶその瞬間、鋼兵の頭上に魔方陣が発生する


その中央から刀の切っ先がのぞき、そのまま鋼兵に向かって刀が振ってきた


鋼兵とファイエスタの間に一振りの短い刀が刺さる


―ドゴォォォォォォオオンッ!!!


全てをなぎ倒すほどの爆風が辺りを覆う


耳を裂く爆音


ホワイトアウトを起こすほどの閃光


ファイロ魔術師の最期の意地だった


閃光が収まる頃には辺り一面焼け野原となっており、地面には大きなクレータが出来ていた


その中心部の一際黒ずんだ地面に、異国の剣と炭化した木の杖が刺さっている


穏やかな風が一陣吹き抜け、森は静けさを取り戻した

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