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第24話 犠牲



ファイロ王国はその昔オーロが台頭する前までは"最強魔道国家"を築いていた。


時のファイロ国王は武道、学問共に優秀で現在の炎系統魔術の基礎を固めた人物である。


王国が全盛期の時には現在のプルーヴォはアクロ王国の属国として名も無かった


-魔道の礎と発展はファイロにあり


とまで謳われるほどファイロは勢いがあった。


しかし、その勢いも長くは続かなかった


イルシュミッヒ暦204年、遂に各国からの造反が起こる


皮切りは初代オーロの元老院が起こしたとされるが、その全容は知られていない


初期戦闘時にはファイロの魔術師が優勢であったが、やがてその数と魔族の力の強さに押され始める。


知略に優れる軍師、頑丈な体を持つ勇猛な騎士、その騎士の支えとなる刀鍛冶、対魔法戦闘の魔法使い、情報を集める忍


その全てがファイロには対処出来なかった。


魔法使いに魔術障壁を張られ、戦術は相手に筒抜け


元々魔術師は近接戦闘向きではないので、剣士との戦闘は言わずもがなである。


そして上手く地の利を使用し、相手の戦況、状勢を踏まえた的確な作戦。


これに加え魔法を打ち払うことの出来る存在が切り札の剣が存在する。


もはやどちらが勝つかは火を見るより明らかだった


すぐさま状況は逆転、所持していた領土を失いながら逃れ続け、遂には国王を討ち取り戦争は終わった。


現在のオーロ帝国の5割が元ファイロである。


このときオーロ帝国は同時に建国。


その存在を世界に知らしめた


そのとき、賢帝と呼ばれた男こそ、初代召喚者といわれている。


奇妙な術を用い爆発を起こせたり、空中を移動できたり、魔術師でもないのに電撃を出せたりしたといわれている。


奇妙な片刃の剣を従え、始まりの森に倒れていたところを、初代オーロ帝国王女が発見、保護している


他にも、オーロが産業で急成長できたのもこの男のおかげといわれている。


名をテッサイといい、奇妙な服装で現れたと伝承には残っている。


他にも、眼にも見えぬ早業で刀を振るい、高速で移動できたなどの逸話が残っている。


このことから、鋼兵の境遇はこの男の逸話に酷似している。


時は流れ、初代召喚者の史実登場より100年の後、今の世界が在る。



-ファイロの魔術師がこんな辺境の魔術師崩れにやられると?


中隊長クラスの魔術師が束になっても勝てない相手は今まで存在しなかった。


オーロの牛魔軍以外は


深い真紅のローブを纏う隊長はこちらの魔法が通用しない事に段々と苛立ちを感じ始めていた


(クソッ!俺の魔法が通用しないだと!?)


ありったけの魔力を込め火炎球を打ち続けるが、効果はいまひとつだった


(アクロの魔術師共ならば得心が行くが、相手はたった一人の剣士だぞ...!?)


中級魔術師が使えれば一人前とされる”火竜”の術もことごとく撃破される。


(後方支援のあの魔術師と獣人も厄介だ)


鋼兵の後ろからエレネ、フローロ、スクツが魔術でフォローしながら攻撃を続けていた


「後続、敵陣中央炎術参式-伏流- 斉射!!」


前方の魔方陣から幾重もの炎の壁が波となって向かってくる


「―させません


 岩術障壁伍式-千間谷-」


フローロの足元に魔法陣が発生し、岩の壁が鋼兵達の間に入り込み爆風を受け流す


「鋼兵様、後ろ!!」


「!!」


鋼兵の背後から"炎蛇"の術で迫るものがいれば、すかさずエレネとフローロが魔術で鋼兵に有利な状況を作り出す。


エレネが水魔術で相手の術を、フローロが土魔術でフィールドを制圧し、相手の術を完全に封じる。


「ハッ!ホッ!ハィ!」


その中をスクツが雷撃を帯びた小柄な体で飛び回る事で、上空のサラマンダーとワイバーンが降りてこれない。


上空から火炎射撃を行おうも、自軍が近く撃つことが出来ない


「くっ、ガキ共が、調子に乗るなぁああぁあ!!!!」


それまで放出攻撃のみだった男の様子が一変する


「隊長、援護します!!」


その横で明るい赤のローブを着た若い魔術師が真紅のローブを着た魔術師の周りに陣を敷き、


すると射撃一辺倒だったサラマンダーの群が、突如鋼兵たちに突撃してきた


「!!


 鋼兵様、”鳳凰”の術です!!」


「何だそれ!!」


鋼兵が空から来たサラマンダーを回し蹴りで沈める間に、エレネが相手の術者の動きにいち早く気づく


「この空間ごと"焼き払う"術です!!


 結界を張るまで時間がかかりますが、その間術者は無防備になります!!」


迫る炎蛇を水魔法で打ち消しながらエレネは相手との間合いを計る


「隊長には寄せ付けない!!」


横にいた若い術師が炎の壁を作り出し自身の周りを固める


「ちっ、この壁"堅ぇ"!!」


鋼兵が周囲の"気"を集め槍にして撃ち出すがすべてが炎の壁に当たった途端に蒸発する


「エレネ!


 この壁は何を元に構成されている!?」


エレネは周囲に水壁を構成しながら敵の攻勢を凌ぎつつ次の一手を模索していた


「この壁は基本的な"ファイアウォール"を応用したものです!


 魔力を注ぎ込めば堅くなりますが、魔力は時間と共に無限大に消費します」


「あの術者はどうして持ってるんだ!」


「恐らくこの瞬間のために命を削って代価にしているのです!


 鋼兵様、恐らくこの場を引くことが最良の策です!


 早く撤退しましょう!」


エレネの水壁が見る見るうちに蒸発し消え始めている


スクツは電撃でサラマンダーを弾く程度で、フローロは岩の壁で何とか炎を防いでいる


それに比べ相手の術は威力を増し、術者自身も自らの術で焦げ始めている


「…駄目だ」


「えっ!?」


「恐らく敵側もこれだけの被害が出ておきながらやすやすとは返さないだろう


 ここは俺がひきつける。


 エレネ、スクツ、フローロを連れて撤退しろ」


「鋼兵様!!」


「スクツ!


 撤退だ!エレネを連れて逃げよ!」


「わか「それは駄目です!!」



 いかに鋼兵様でも、この人数の上級魔術師を相手では持ちません!!!」


エレネはすがるように懇願する


そして足元にいくつもの魔方陣を展開させ、再度水の結界を作り出す


「鋼兵様、私の水魔法は火魔法に対し有効です。


 お願いです、命を粗末になさらないでください!」


エレネは美しい顔を歪め、必死に懇願する


「...分かった。


 この場を引こう」


「鋼兵様...」


エレネが安堵の表情を浮かべたそのとき


「ただし、"俺以外"がな」


鋼兵の見えざる手刀がエレネの意識を刈取る


「なっ...!」


エレネは悔しそうに一瞬鋼兵を睨み、そしてその場に倒れこんだ


「フローロ、スクツ、この先に泉がある。


 そこのほとりに大きな木がある。そこで待っていてくれ。


 朝になっても俺が来なかったらそのままオーロを目指せ。


 フローロ、分かるな」


無言でフローロが頷く


「よし」


「ご主人、死ぬですか?」


スクツは悲しむでもなく、怒るでも無く、ただ無表情で問いかける。


「いいや、死ぬ気はない。


 ただこの場であの術を止められるのは恐らく俺だけだ。


 俺の術を持ってして止めてみせる。


 だから...


先に行け」


周囲にいる魔術師目掛け雷撃の矢を放つ


先ほどから投げてはいるが、一向に手ごたえがしない


恐らくこの場にいる術者ではないのだろう。


実践での傀儡使いは非常に厄介で、集団戦では脅威となる


だからあえてエレネたちを逃がすことにした


俺自身の、力の開放のために



「ご武運を」


フローロがぐったりしたエレネを抱え地中に通路を作る


「穴はふさいでおけ」


フローロたちが穴に潜り、塞いだのを確認した後、鋼兵は目の前の豪火に対峙する


「さて、炎相手は久しぶりだな


 来いや」


鋼兵は腰の刀と脇差を引き抜き、そのまま相手に向かい駆け出した

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