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第20話 雷帝


鋼兵に勢いをとめられた赤い男はすぐさま鋼兵から離れ体勢を整えた


「な、なめてんのかぁ!


 おでの攻撃にけんも抜かず、素手でうけるたぁおかしな話だぁ!」


赤黒い大男が地団太を踏む


それだけで地面がグラグラとゆれ、森の木がざわざわと揺らめく


「あ、鋼兵様この男はこの辺一帯を荒らしている盗賊の一味ですぅ!


 皇女様より討伐指令が出ている一人ですよぉ!」


たまたまスクツは旅が始まる前に一通りの近隣諸国の情報を仕入れていた


その情報の中には、盗賊、強盗、魔獣の情報も含まれており、


スクツはそれらの情報を瞬時に思い出すことができるためこのときもその記憶に則り相手の素性が知れた


「お、お前、ち、ちびの癖におでの事を知っているなんてえれぇなぁ!


 そうよ、おでたちはヴィーヴォの森をしめる山賊、"蛇"の一員よ!


 へへへ、怖くなってももう遅いぞぉ!


 ここからおでがお前ぇらをたっぷり可愛がってやるからなぁ!


 あぁあああぁぁあ、あの白い肌、早くむしゃぶりつきてぇ」


飢えた獣のようなセリフに、フローロもエレネも思わず鳥肌が立った


「うっ....生理的に無理」


「...私に触れるのは鋼兵様只一人です」


「スクツに触れられるのも鋼兵様だけですよおー!」


エレネはあからさまな嫌悪と共に空間魔法をいくつも展開しており、フローロはエレネの後ろに隠れてしまっていた


スクツは笑顔で雷撃を全身に帯電させていた


「ぐははははは!!!


 おでの体はゴムのように強化皮膚にて強化されてんだぁ!


 そんな軟な魔法じゃ通るわけがネェ!!!」


「そうかい」


「ははは


 え?」


鋼兵の右腕には幾条もの雷電が走っており、左腕にも激しく火花が散っていた


「陰陽五行 複合方術-型式 雷術-


 "雷帝"発現」


両腕から発せられる雷撃は全身に伝わり、ついにはその身から全体から雷撃が発せられるようになってきた


髪は静電気で逆立ち、周囲は発せられる電気で大気のプラズマ化が進み淡く光り始めた


「だはははは、そんなもの無駄だ!!!


 おでの体は耐電性に特化している!


 そんな電撃じゃ痺れねぇ!」


『天より顕現せし神の裁き



 自らを門と成し 己が敵を貫かん



 呻れ(うなれ) 雷砲(らいほう)』


瞬間鋼兵の両腕が一瞬にして光り、直径1mの雷の柱が大男へ向けて発射された


時間にして0.0001秒以下


「....」


そして、閃光が消えて残ったものは大男の膝から下のみだった


「...雷帝解除」


鋼兵の全身から雷が抜け、逆立っていた髪も元に戻った


「これが俺の使用する術式の一角、


 陰陽五行 複合方術-型式 雷術-だ。


 思ったよりも出力が大きいので驚いたが」


いやぁ参ったといわんばかりに型をぐるんぐるんまわす鋼兵


「こ、鋼兵様


 あの魔法...は?」


「おう?


 だからおんみ」


「それは分かっています


 なぜ"特定指定魔法"をお隠しになったのです?」


「スクツも驚きましたぁ!


 獣人以外で雷系統の術を使用できる人、初めてみましたぁ!」


「私も驚きました


 あの出力はA+ランクの使い手でも難しいです」


三者三様で驚いていた


「そんなに驚くことか?


 スクツだって毎日ビリビリかましてたろうが」


「いえ、それは違います。


 我らエルフ、スクツのような獣人は自然界の魔法を使役できて当然です。


 なぜなら我々は神よりの恩恵を魔法という形で与えていただいています。


 しかし人間種が使える魔法はほんの一部です。しかも攻撃に使える魔法などそれこそ大掛かりな陣を必要とします。


 これがどういうことかお分かりですか?」


いいや、と続きを促す


「鋼兵様、私の魔法は水系統ですが、実際雷系統は魔法の種類として存在しません。


 存在するのは火、水、土、金、木の五属性です」


しばしの沈黙のあと、鋼兵は静かに口を開いた


「俺の方術はこの世界の理から外れる。


 まず方術には再現できない自然現象はないし、できない物は無い。時間だって陣を敷いている間は操作できる


 俺はあまり布陣をせずに使役するので大掛かりな術はできないが、先ほどのもの程度で有れば詠唱無しでもいける」


鋼兵は手に再び雷撃を収束し始める


「俺はこれぐらいしか使っていないけどな」


そして手のひらの上に帯電した大気の球体を作り上げる


エレネは身構えつつも俺の様子を観察し続けている


「鋼兵様はいくつ術が扱えるのでしょうか?」


横で聞いていたスクツもそのとおりだと言わんばかりに頷いている


フローロは静かに俺の言葉を待っていた


「覚えている範囲でいいか?


 長いぞ?」


「お願いします」


「まず俺の小野流は火、水、土、金、木、雷、風、光、闇系統が主な戦闘術。


 他に治癒、身体強化、飛行、潜航、時空、結界とかだな。


 能力も様々な形態があり一概に放出するだけではない。


 実際にさっき見せた雷系統は非常に扱いが良くて身体強化、結界にも応用が利く。


 ちなみに俺の能力は複合も可能だ


 君にもらったこの石もあまり必要は無い。」


懐から最初エレネにもらった石を取りだす


「この石に俺の術をいくつか施した。


 お守り代わりに持っていてくれ」


「はい」


エレネに石を手渡すと、懐からもう一つ魔道具を取り出す


「これは俺が作ったものだ


 名を"式神"という。王城で待機させている紅葉も同じ系統の術だ


 紙に印を記し術を施したもので様々な使い方がある。一人3枚ずつ持っていてくれ」


これを全員に手渡し、最後に戦った相手の亡骸に向かった


「鋼兵様?」


「いくら盗賊とはいえさすがに野ざらしでは士道に反するのでな


 葬るぐらいはやってやらねばなるまい」


そのまま大男の足をつかむと、近くの茂みに向かっていった





「お、お頭」


その様子を遠くで見つめていた残りの盗賊は恐怖で動けずに居た


「や、やはりあの噂は本当だったのか...!


 さっさとこの場を放棄、離脱するぞ」


そそくさと退却しようとした男の後ろにゆっくりと黒い影が迫る


「勝手に任務放棄で逃げたかと思えば...


 こんなことをしていたとはな、あきれたぞコンヅキ」


「!!!」


男の後ろには鈍い銀の甲冑を着込んだ女性が立っており、その顔は仮面で表情が窺い知れない


「あ、アルジェント総帥!!」


「ひっ!?


 オーロ帝国陸軍総帥、白銀のアルジェント様ですか!?」


男が驚くのも無理は無い。


"白銀の騎士"を冠するこの女傑は長きに渡り荒くれ者が集まるオーロ帝国陸軍歩兵隊を己の腕のみで纏め上げた実力者にして


現オーロ帝国オーロ帝の第3女に当たる王位継承者であることと相まって畏敬の念を込め"白銀の女王"と呼ばれている


その女傑が今完全武装の状態でここに来ている。これから分かることは一つだった


「コンヅキ、貴様には数ヶ月前に斥候任務と敵戦力調査任務を与えたはずだ


 なぜこのような状況になっている。説明しろ」


アルジェントは腰の細剣に手をかける


「ま、待ってください!


 確かに私はあの日任務を仰せつかりました!!


 しかし、私一人ではあのような悪魔相手にどうすることも適わず、命からがら助かった次第でございます!!


 確かに敵前逃亡は斬首刑ですが、どうかもう少し待ってはいただけないでしょうか?


 私とてただ逃げていたわけでは有りませぬ!こうして身を潜め敵の動きを」


「そのような戯言を抜かすようではもう我ら”オーロ帝国陸軍歩兵隊”には不要


 先陣切って仲間の士気を高め、後の魔術部隊の道を切り開くのが我らの務めであろうが


 それを敵の力に圧倒され逃げ出すようでは不要だと申して居るのだ」


腰の細剣を抜き払い、突きつける


「お、お頭、こんな細い剣の使い手、あっし一人で十分ですわ!!


 あっしが片付けます」


そういうとネズミ顔の男が背中の鉈のような刃物を取り出し、アルジェントに対峙した


「ふん、貴様のような奴でも手下にはなつかれていたらしいな


 それも、今日までか」


「うるせぇ!


 お前のような女一人で何ができる!!あっしはこう見えても力には自身があるんだ」


ブンブンと鉈を振り回す


「...散れ」


一瞬の出来事だった


アルジェントの剣先が揺らめくと同時にネズミ顔の男が一瞬でばらばらになった


「ひっ...!!!」


ばらばらになった男の臓物や手が男に降りかかる


「もう一度言う


 "デンサジャルデーノの悪魔"の実力を試して来い。おまえ自身の命でな


 ...あぁそうだ、一つ言い忘れていた。故郷の妻がお前のことを心配していたぞ?」


「!?」


仮面によってその表情は窺い知れないが、きっと悪魔のような微笑をしているのだろうとコンヅキは思った


「受けてくれるな?」


「しょ、承知しまし...た」


男は泣きながらこの指令に応じた


「そうか、よし


 お前の働きに期待しているぞ」


そういうとアルジェントは颯爽とマントを翻し森の奥へと消えていった


「...悪魔は身内に居たか」


乾いた笑いを漏らすと、男は立てかけてあった愛刀の双剣を取り、鋼兵がいる街道まで走り抜けていった


長年親しんだこの握りが今のコンヅキにとって確かな安心感を与えていた


「アルメリア...お前だけは無事で居てくれ....」


その顔は、悲しみと怒りでくしゃくしゃだったが、男の足はとまらない


そして、ちょうど茂みにむかってきていた鋼兵に狙いを定め、一気に突進していった



「みんな離れろ!!」


一瞬なにがなんだか分からないといった様子のエレネたちを結界術を使い無理やりはじき出す


「きゃっ!」


勢いが強く、スクツは少し遠くまではじかれてしまった


その直後、茂みから突進してきた男の斬戟を身体強化した肉体で受け止め、そのまま結界を張り弾き飛ばす


「....見ていたのだろう?


 なぜ出てきた」


鋼兵は傷だらけの顔の男に問いただす


「無論、任務のため


 同胞を殺られた恨み、思い知らせてくれる」


そのまま男は双剣で仕掛けてきた


思いのほか使い込んでいるようで、コンパクトな斬戟の中にいくつか危ないのも混じっていた


「...やるしかないのか」


「何を今更


 はじめからそのつもりだろうが!!」


フェイントを入れた蹴りの一撃をわき腹にくらい、よろける


「仕方あるまい。


 武士の礼をもって剣術にて相手仕る。


 小野流免許皆伝 小野鋼兵、推して参る」


鋼兵はゆっくりと腰の刀を抜き取り、そのまままっすぐ正眼に構えた


「元オーロ帝国陸軍歩兵隊第一大隊副隊長、コンヅキ


 全力をもってお相手いたす!!」


そして、コンヅキ決死の戦いが始まった


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