第2話 会合
その日もいつもどおり仕事から帰った鋼兵は自宅近くの雰囲気がいつもと違うことに気づく。
今日の仕事は討伐任務だったので早めに終わり、昼ごろには家路につくことができたのだが遠目でも不明な点に気づく。
山間にある我が家はあまり広くはないが、一般家庭の持つ家の倍の大きさを持っている。父が大きな家に住むことに拘ったからだ。
山道は一本で、この家まで一直線に向かってきており、かつ周りにはなにも遮蔽物がないので容易に家を一望できる。
広い庭先で普段なら母が洗濯物を干していて、昼食時に出る焚き火の煙があがっているはずであった。
はやる気持ちを抑えつつ、鋼兵は全速力で家に向かった。
鋼兵が家に着きそこで眼にしたものは荒らされた室内、玄関の扉は何かで斬られたようにボロボロで、
奥の居間には全身に刀傷を負った父と、肩口からわき腹にかけて斬り跡があり、大量に失血している重症の母が横たわっていた
鋼兵が近づくと父が気づき、母は鋼兵が居るのを確認すると息を引き取った。
何がなんだかさっぱり分からない鋼兵は、頭の中が真っ白だった。息も絶え絶えに父は事の経緯を語った。
父が気づいた頃には居場所がばれており、一族がこちらの存在に気づいて襲撃してきたのだと言った。
俺は、父がこうなることを知っていて、あのことを俺に言ったのだと思った。
「…いいか、鋼兵…絶対に仇討ちなど考えるな……お前さえ残ってくれれば…
お前もその隠し通路から逃げなさい。すでに追っ手が戻ってきている。
…何も残してやれずにすまない……」
「父上!!何を弱気なことを!!
父上!!」
取り乱す俺に、父は一振りの刀を向けてきた
「妙法村正…我が家の家宝だ
俺には扱えなかったこれをお前ならば扱えるだろう…」
それを俺に託すと、父は満足そうに息を引き取った
「父上!!!!」
俺はしばらく何も言えず、ただただ呆然と刀を見つめていた
少しして、戸口に5名の忍の衣装を着た人間が集まって来ていた。おそらく一刀の手下だろう。
「小僧、貴様小野鉄斎の息子だな?」
俺が目を向けると、ちょうど真ん中の人物が俺に向かって刀を向けている
「子供といえど、容赦はするなとお達しだ。悪く思うなよ」
音も無く近寄り、残像が残る速さで刀を振るう
「シャッ!!!」
俺はただそれを眺めながら、少し体をずらし紙一重でよける。
「逃がさぬ」
一瞬のまもなく、追撃の一撃を加えようとする忍の手をはじき、代わりに方術で強化した神速の一撃をわき腹にお見舞いする。
瞬間ぐきっというやな音。
「…かはぁっ」
音も無く崩れ去る忍。わき腹が抉り取られ、血があふれ出る
はじめはこの攻防に唖然としていた周りの忍も瞬時に散開し、森の中に隠れていった
そしてどこからとも無く雨のように手裏剣とクナイ、毒矢が鋼兵向けて降り注いだ
「あああああぁぁぁあああぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁあ!!!!!!」
野獣のような咆哮と共に駆け出し、辺り一帯が血の海になるまで殺戮を繰り返した。
気づいた頃には木はなぎ倒され、殺された忍のものと思われる臓物や腕、足が散乱し正に地獄絵図である。
鋼兵は、父と母の亡骸を丁寧に埋葬し終えると、俺はある人物をたずねるため北へと向かう事にした。
父は現在の自分の流派を形成するに際し、一度剣聖として名高い師へ弟子入りしていると聞いたことがある。
俺自身できないこと、わからないことが多くあるので一度弟子入りすることで能力の向上を図ることを目的とした。
すんなり弟子入りさせてはくれないだろうとは思っているが、俺の力で、父を死に追いやったあの男を成敗するまで許すわけにはいかないという意思のみで行動を起こしていた。
実際に弟子入りした後、壮絶な修行が待っていたのはまた別の話。