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第19話 ヴィーヴォの森


「ほう、君はオーロの間者として長らくグルンドへ渡っていたのか」


ここはプルーヴォからオーロへ向かう森のひとつ"ヴィーヴォの森"である


古来より生息する生物の住処として有名で、その実態は現代でもよく分かっていない


しかもこの森の固有種が存在し、そのほとんどが強力である。


しかし、それは森の深部の話で今回通るような森の入り口ではそのような危険は少ない


今鋼兵は元オーロの間者であるフローロ、そしてアクロ王国のエレネ、スクツと共にオーロを目指し、


オーロの国境に近いこのヴィーヴォの森へとやってきていた



なぜこのような事態になったかと言うと、話は2日前にさかのぼる


あの後鋼兵が捕らえたフローロは自らの行いを皇女の前で詫び、許しを請うた


皇女がよほど厳しい判断を下そうと思っていると思い込んでいたのでフローロははじめかなり怯えていた


しかし実際の皇女の態度はあっけらかんとしたものだった


「いや、よいぞ。


 そちの行動は許しがたい物かも知れぬが我は気にせぬ。許そう


 しかしな、あの鋼兵の姿で言い寄るのは我以外にするで無いぞ」


『皇女様!!』


ナタリアの発言にエレネとミーネがハモった


「えーと...」


どうしていいのか分からず、二人のやり取りにぽかんとするフローロ


「オホン。


 とにかく、そなたにはこれよりプルーヴォ王国の一員となり故郷となるオーロと戦に臨んでもらう。


 戦場の前線で戦えるとは聞いておらぬ。しかし最大限尽力してもらおう。


 そちの望みも聞いてやれるかも知れぬ。ゆえにしっかり働いてもらわねばのう


 よいな」


「は、はい!」




そして現在に至る。


元々エレネかスクツに外の世界を案内させようとしていたので外からきたフローロは適任というわけだ


「私はグルンドへ表向きは流民として溶け込んでいました。


 準備は万全でしたし、それに関しては絶対の自信がありますから。


 ですが、潜入から3ヶ月経ったある日に突然グルンドの近衛兵に捕まり、


 辱めを受けそうになったところを命からがら抜けてまいりました」


「え!?


 あのグルンドの"近衛兵"がですか?


 彼らは清廉潔白にして敬けんな教徒だと聞いておりますが」


横からエレネが驚いたように声を上げた


ちなみに配置は俺が真ん中、左右にエレネとフローロ、頭の上にはスクツである。


スクツは王城を抜け、森に入ってしばらく歩いてから、


エレネの許可を得て鋼兵の頭にしがみつく形で乗っかっている


「エレネ様、スクツもそれは聞いたことありますです。


 たしか、グルンドは宗教色が強くて有名です。


 旅路に鋼兵様の異国の服装を直してもらったのはそれもあるですよ」


スクツのシッポがふるふると揺れる


そのたびに膨らみかけのスクツの胸が後頭部にあたっているのだが、


それを表情に出すとエレネに切り殺されるか空間ごと圧縮されて消されるためおもてには出せない


「はい、それが発見された原因でした。


 私も逃げるときに発見したのですが、彼らは一人一人が個人識別人別帖に登録されているため、


 外界より来た者は獣魔関係なしに登録され管理されます。


 その記録は朝と夕の礼拝の時間につかわれます。礼拝に来ない者を割り出すためです。


 宗教は、お金がかかるみたいですからね」


なるほどなぁと感心している間にも、森を抜け小さな小川へとたどり着いた


ちなみに、ここまで来るのに鋼兵は両サイドを美女二人にがっちり掴まれ逃げられない状態である。


「「離してください(くれないか)」」


見事にエレネとフローロがハモった




「いや、俺は動きづらいから両方離して」


「「ちょっと黙ってくれる?|(くださいます?)」」


またもやハモった


「はぁ...


 うん?ここの川は何ゆえこんなに広いんだ?」


鋼兵がたどり着いた川は川幅20mはある大河である。


よくみると水底には魚が泳いでいる


「鋼兵様は異世界の人だから知らないのも無理ないです。


 この川はプルーヴォとアクロ、グルンド、オーロをまたぐようにかかる川で、国境にも使用されているですよ」


「へぇ


 良く知っているな、スクツ」


「えへへ、ほめられたですぅ」


にっこりと相変わらず鋼兵の頭にしがみついているスクツが嬉しそうに笑みを浮かべる


「...スクツ」


「ス、スクツは何も知らないです!


 鋼兵様、川をわたる船を見つけて渡るです!」


「あ、スクツ!


 いい加減鋼兵様から離れなさい!」


「嫌ですぅ」


横で怒るエレネを横目に、フローロはぴったりと鋼兵に寄り添いさりげなく自身の胸を当てるのだった


「あんたもなかなかやるわね」


「私はすでに鋼兵様の物ですので。


 どうぞ、お気遣い無く」


むむむとエレネがフローロの反対側に周り込み、ここぞとばかりに腕を組んでくる


「二人とも、歩きづらい」


「「すみません」」


ぱっと腕を放し、慌てて謝ってくる。





この様子を遠くから観察する一団が居た。


この辺境に出没する山賊の一味で、近年増加する近隣諸国からの移民がその大部分をなしている


「お頭、えらい良い女ですぜぇ


 しかもエルフと魔族風な女ですわ...あんな良い女を見たことがねぇ」


クククと卑下た笑みを浮かべるネズミのような顔つきの男に、横の恰幅のいい大男が身を乗り出して覗き込んだ


「ウオォォ、お、お頭!


 あんな良い女なかなか居ねぇですぜ!さっさと行って男をブチ殺して犯しましょうぜ!!」


口からよだれをだらだら垂らしながら血走った眼でエレネを舐めるように見る


「あぁ?


 !?


 バカ野郎!お前ら良く見ろ。ありゃあ只の旅人じゃねぇ。


 いま"黒髪、奇妙な剣"といやぁあの男しかいねぇ


 "デンサジャルデーノの悪魔"だ」


声高に叫んだ男は一味の取りまとめ的な存在だ。


褐色の肌、筋骨隆々な腕の大きな火傷の痕、潰れた片目は歴戦の戦闘を物語っている。


「へ!?


 あんなガキがですかい?何かの間違いじゃ」


「んだぁ。


 お頭、あんな上玉逃したら今度はネェですぜ?


 ここ数日グルンドの憲兵隊がしつこくて女を抱いてねぇんだ...犯したくて頭が発狂しそうだぁ!」


その巨体の丸太のような腕をブンブン振り回しながら暴れる


「黙りやがれ!


 てめぇら、あの悪魔は最強と名高いオーロの牛魔隊を全滅させたあの男の恐ろしさが分かっちゃいねぇ


 あの男はな、敵となったものに容赦しねぇんだ。たとえ絶対的に自分より弱い相手にもな」


そういう男の目には恨みと畏怖の色が浮かんでいた


「し、しかしお頭、あいつらでまともに戦えるのはあの男のみですぜぇ?


 どう見ても俺達のほうが有利だ


 こっちには魔族が3人もいるんですぜ」


「あぁぁああああぁあぁっぁぁぁぁあああ!!!!


 もう我慢なんねぇ!


 あの女、犯す!!!」


先ほどから暴れていた大男が体を真っ赤にしながら、その巨体揺らし鋼兵達の方へ走っていった。


その様子をとめる風でもなく、お頭と呼ばれた男は走っていく仲間をただ見続けていた


「お、お頭?」


「良く見ておけ、あの男の戦い方を


 俺は見つかる前ぇにずらかる。見つかったら殺されることは間違いない」


そそくさと変える準備を進め、お頭は大男の向かった方向を見ていた


「あいつが出て行ったことでこちらの位置が知られた


 それとな、俺たちはすでに奴の射程範囲に居る。


 剣は抜くなよ、ナイフもな」


「へ、へぇ!」


あまりの剣幕に驚きつつもその指示に従った


気づいた頃には巨体の男は鋼兵達のすぐ背後まで迫り、息を殺してゆっくり近づいていた


「あの男は悪魔なのさ


 それも軍さえも勝てない、な」




「...」


「鋼兵様、如何されました?」


急に黙った俺を不安げにエレネが覗き込んでくる


「エレネ、フローロ、スクツ、動くな」


「え?」


「はい」


「うん!」


その直後、ちょっとした小山ほどの大きさの大男が茂みから飛び出し、鋼兵のすぐそばを通り抜けた


「...ゲゲゲゲ、逃がしたか」


鋼兵の目の前に赤黒い塊が飛んできた、というより良く見ると人間だった


「鋼兵様」


「心配するな


 すぐ片付ける。


 あぁ、それとスクツが見たがっていた俺の方術を見せてやるよ」


嬉しそうにぱたぱた足をばたつかせながらスクツが嬉しそうにはしゃぐ


「本当ですか!


 やったです!エレネ様も一緒に見ましょう」


そういうとスクツは鋼兵の頭からぴょんと飛び降り、エレネの近くに飛び降りた


「ええ。


 フローロ、あなたも下がりなさい。そこでは巻き添えを食らうわよ」


「は、はい」


フローロは良く分からないがとにかくエレネのそばまで下がった





律儀にもその様子を妨害するでもなく見ていた大男がようやく口を開いた


「おめがデンサぢゃるでーノ平原のあくまか。


 話に聞くよりぜんぜん細いぞ!


 なに、おでの用件は簡単だぁ!おめの女をおでに寄越せ!!


 そうすれば命は助けてやる」


一息にそこまで言うと大男は雄叫びと共に鋼兵に突っ込んできた


「助ける気がねーだろ。


 それと、彼女らは俺の所有物では...ない!!!」


「ぐぬぅ!」


鋼兵は猛牛のごとき大男の体当たりをいともたやすく止めた。それも片手で


「おめぇ!!」


力押しに突き進もうとしてもまるで岩盤を押すかのごとくまるで進まない


「どうした、こんなものじゃないだろ?


 さぁ、来い!」


鋼兵の右腕の梵字が一際輝いた

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