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第18話 アクロ王国

―アクロ王国十二騎士団会議室


「議長、事は一刻を争うのです。


 躊躇する必要などございませぬ。たかが辺境の小国、さらにわが国の属国ともなれば彼らとて逆らえますまい」


場所はアクロ王国十二騎士団の詰める黒曜宮、大会議室のひとつ


かつてこの国を治める王が平等な意見を取り入れたいとのことに由来する円形の卓が使用される様式をとっている


そこに正座するはアクロ王国が誇る精兵の中でも選りすぐりの隊長たちである。


この場を俗に"円卓会議"という


ここでは先日オーロ帝国より宣戦布告があったプルーヴォ王国への対応について議論されていた


その席には合計12名の騎士が肩を並べており、


「ぜひともあの剣士をアクロに招き入れ軍を強化すべきです


 彼の者の操る戦法は見たことも無いものもさることながら、剣術、統率力、戦況など全てが一線を画しておる!」


先ほどから声高に叫ぶこの男は十二騎士団の"鼠"こと作戦参謀のラートである


痩せ型で灰色の短い髪のオールバックで、白いローブを纏い手にはデンザヂャルデーノ平原の戦果報告書を持っていた


ねずみのような縦長の顔に、こけた頬は狂ったように笑っていた


「しかもあの"剛剣のブルートイ"に一対一で打ち負かす武勇!


 それがこんな隣国に埋もれているとはこのラート、自分の情報収集力の無さを悔やむばかりである!」


興奮気味に話すラートに右隣に座っている色黒の大男が語りかけた


「ラート、貴様先の失敗を忘れた訳ではないだろう。


 オーロの話し合いの席で無駄に先走った行動によってどれだけ損害が出たと思っている。


 今回は"召還者"の話か?いい加減夢から覚めたらどうかね?


 次は国境じゃなくお前ぇの尻に矢をぶち込まれるぞ」


同じく作戦参謀補佐のヴォビーノが釘を刺す


巨体は同じくらい巨大な鎧で固められ、胸にはアクロの紋章が刻まれ背には身の丈の大剣を背負っていた


頭には大きな角が二本生えており、コバルトブルーの瞳が細く煌いた


獣人族特有の獣の名残が特徴として体に残っている。


アクロ王国は元々獣人や亜人が多く混在する集落がその起源である。


先ほどのラートはネズミの獣人でお尻からは尻尾が生えている。


ヴォビーノは牛の獣人で頭には角が生えている。


溢れ出る自身は作戦参謀として激戦地で己が立てた武功による自身に裏づけされる。


「いずれにしろ、あの剣士は並みの使い手ではないということだ。


 我ら"アクロ騎士隊"が攻めあぐねるあのオーロ相手に単騎で勝つなど正気の沙汰ではない。


 忘れたか?あの"ファイロの火力"で推せぬ相手ぞ」


良く通る綺麗な声で鼻息荒い将軍達を諌めるのは、頭から金の角を生やした竜の獣人、


国政担当のヘーラ・ドラコである。


ヘーラは国政の他に民事、財政、軍事も担当しており、若くしてここまで上り詰めた女史である。


整った顔立ちに鼻筋の通った気の強い目元が特徴で、質素なドレスからこぼれんばかりの胸が印象的だ


薄い緑のドレスに身を包み、間から見えるスラリと伸びた脚はハイヒールがよく似合う。


それに加え金色の瞳に真っ赤な唇は見るものを唸らせる美しさがある


「我の龍族と西方の竜族は気性は違えど同じドラゴンの一族


 彼の者から聞いた話ではオーロの軍勢は30万と、奴隷兵7千の合計30万7千人


 戦況が悪くなるとすぐさま別働隊が動き出し、補助に回るためなかなか兵数を削れぬ。


 いかに我ら龍とはいえ"魔物"の軍勢相手はきつい。


 じゃが、此度の戦は圧倒的にプルーヴォが勝っているとしか思えぬ戦果じゃ。


 "対魔法装備"のクラスB+の牛魔相手にの」


ヘーラが手元にポウッと火の玉を浮かべ、それにデンサヂャルデーノ平原の戦いが映されていた


「この動き、言い伝えの"召還者"の中でも群を抜いておる。


 しかもこの赤い兵士、このように突然何の魔方陣も敷かずに召還を行うなど、


 "リッチーロード"の中でもできるかできないかですでに限定されるわい。


 のう」


円卓に着いたほとんどの将がこれに頷く。


参謀役の中でも戦局、政局共に見誤らないのはこのヘーラを置いて他には居ない


彼女の発言には絶大な信頼と効力がある


「ではプルーヴォに使者を出し、共にオーロと戦うのはどうかね?」


アクロ王国財務長官セルペントが口を挟む


セルペントは蛇の獣人で外交官と法務相を兼任している。


「いや、それも無駄だろう。


 先の流行り病でエルフの里とは国交断絶状態じゃ。


 あの時援助を申し出ておれば此度の戦も事が良い方向へ転んだやも知れぬな


 それに...こちらには他にも火種を抱えておるでな、あまり遠くまで行けぬのよ。


 特に"南街道"付近は注意じゃな。わしの軍が何回も妨害されたでな。


 それも公儀の仕事中にの」


そういうヘーラの睨みつける先には、5人の将軍が見受けられる。


現在アクロ王国は一人の女王を頂点にその下の軍部と法務部、そして貴族といった上流階級で席巻している。


ほぼ全員が獣人であったため、元来持ち合わせる獣の荒さや気の強さが表に出てしまうとまま孤立することがあった。


特に貴族派の将は裏で取引を持ちかけられているのが大半で、円卓の騎士を拝するものでもそういった輩は多かった。


「いかが成された、ヘーラ殿。


 まるで我々が狙ってやっているとでも言いたそうな物言いだな。

 

 このような大事に不要な争いはそれこそ国家の存続にかかわりますぞ?」


こちらを見ながらニタニタしているトラ柄の髪に口の端から出る牙、


白銀の甲冑に身を包んだ若い男が皮肉を込めて言い返した


「ティグロ少将


 ヘーラ様は政治面を優先されるゆえ、戦場のことに関しては分からぬことが多いのでしょう。


 そうかっかされるな」


ティグロ少将の横に居た法務部長官のシミーロがすかさず横槍を入れる


「いかにも。


 我ら五臣将(ごしんしょう)が戦場をもっとも知っておる。


 そうであろう?ヘーラ嬢」


一番年配の獣人が静かに口を開いた。


歴戦の傷が無数に顔に残り、片目は潰れ、あごは一部削れていた


アクロ王国騎士隊提督、フンドである。


この中でもっともアクロ王国として戦いを経験しており他国の情勢にも詳しく、


なにより国内外に多数太いつながりを持っている人物でもある


「フンド提督、私はもう半人前ではありません。


 それに、国境の警備でも成果を上げております。最近では近隣諸国から情報も集め」


「そのような戯言はいらぬ。


 戦場を見ておらぬ小娘にいちいち指図されるのが気に食わぬと言うておるのだ」


フンドはティグロ少将を含む己の配下を連れ席を立った


「提督!会議はまだ!」


「このような会議も不要。


 戦ならば我ら"五臣将"で処理する。なにもぽっと出の若造に任せることは無い。


 言い分があるなら、次の戦にて聞こう」


颯爽とマントを翻し、フンドは残る将軍達を一睨みしながら部屋を出て行った


「なんだあの態度は!


 いかに提督とはいえ、あまりに無礼であろう!」


セルペントが毒づく


「いたし方あるまいよ。


 さて、これからの方向性じゃが...」


その後残る将軍達による会議は続けられ、結局のところ一度は使者を立て現状を探るといった内容で落ち着いた。


アクロ王国は現状で内部に抱える火種は数多い


これを一つ一つつぶしていくのは骨が折れるが、ヘーラは予感めいたものがあった


「あの騎士、間違いなく召還者じゃ


 あの腕前を妾の物とし、この国の基盤を磐石なものとするにはあの者の強力が必要不可欠じゃな」


その晩、密かにドラゴンの一族を密偵として呼び寄せ、ある使命を与えプルーヴォ王国へ向け放った


『異国より召還されし剣士とまみえ、アクロ王国へ引き抜けるよう仕向けること


 なお、今作戦中は一切の支援が無いため、作戦完遂不可と思われる場合は速やかに撤収すること』


「あの剣士がそう簡単に収まってくれるはずが無いわい。


 機を見て引き抜く算段をしなければ」


ヘーラの鋼兵引き抜きによる策略構想は深夜遅くまで行われ、ついには日が昇るまで練られた


小野鋼兵、未だ自身に迫る策略に気づかずに居た

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