第13話 最強たる所以
―オーロ帝国大老院
かつてオーロ帝国がその強大な軍事力を創立する際に5人の猛将、智将が礎となり現在に至る。
創始者5人はそれぞれが小国を治める領主でありそれぞれがこの群雄割拠の時代を生き抜いた猛者である。
いくつかの戦争の果てに協定を結び、他の諸外国へ対抗する策として協力しあった結果、
現在のオーロが出来上がった。
大老院はその創始者5人が各国の動きを監視、干渉、補助を目的に創立し、
現在は5人の英傑の末裔が席を連ねている。
賢帝サヂューロ 剣帝グラヴィスト 鍛冶師フォルヂスト 機動隠密アナコレート 大魔法師マギイスト
かつて四方より小国の中でも指折りで、列強と謳われし王達である。
そんな彼らがオーロの基盤を作り、軍事面でなく政治面でも国を支え今に至る。
今もその名は受け継がれ、現在で三代目になる。
そしてその大老院に、北方の辺境へ出ていた牛魔軍の戦果報告が届いた。
剛剣のブルートイ将軍率いる軍勢は凶暴ながらも戦果はしっかりと出すことに定評があったため、
その日も似たようなものだろうという空気があった。
しかし、それは駆け込んできたブルートイの腹心の報告により一変する。
大理石によって作られた円形の部屋に、円形のテーブルを囲うように五大老の末裔が座り報告の無いようを聞いていた。
「それで、何ゆえそのような戦況となったか説明せい」
一番奥に腰掛けるガタイのいい偉丈夫が唸るように問いかけた
2mにもなる巨体で肌は浅黒く、牛魔に劣らぬ筋肉、そして銀色の髪を後ろにオールバックで固め、
長い耳は上に向かってとがっていた。
魔人と呼ばれる魔族の一種で、人型でありエルフ族の天敵である。
剣帝の末裔、三代目グラヴィストである。
「我が隠密部隊にて確認しに行ったときにはすでに生存者なし。うそは無い。
ブルートイ将軍も敗れた。これ事実」
グラヴィストの横に座る三代目アナコレートは諭すようにグラヴィストに語りかけた。
全身黒いローブで身を包み、顔には仮面をつけている。
「だから、何ゆえわしのとこの牛魔軍があのような脆弱な種族に敗れるのか説明せよと言っておるのだ!!
かの国は流行り病で男共をなくし、いまや女系国家となっておる!!
ただでさえエルフ族など貧弱であるのに、何ゆえ我ら勇猛な一族が押されるのだ!!!」
ドン!とテーブルをたたくグラヴィスト。たたかれたところがその拳の形に陥没し、穴が開いた
「やはり魔道師隊、必要でしたね~
も一回送ります?部隊。今度は俺んとこの奴をつけますよ~、三千人ほど」
アナコレートの反対に座る間の抜けた話し方の白いローブをつけた男、
三代目マギイストが横から茶々を入れる。
見た目は金髪に碧眼、細身のかなり美形で普通の人間だが、
中身は魔術により強化された不死の"吸血鬼"の一族である。
手には1mの杖を持ち、その先端には髑髏が付いている。
「いらん!
お前のようなナヨついた男に助けられたとあっては一族の恥よ!」
「落ち着け、ブルートイ将軍を失ったのは痛手だが、他の部隊は作戦を終えている。
しかも相手は五大国ですらない。何をそこまで憤る」
鼻息も荒いグラヴィストを静かになだめる三代目サヂューロ
白銀の鎧に身を固め、口ひげを蓄えた初老の男である。
頬には歴戦の中で付いた大きな傷がある
「まぁ待てや。
あの将軍には俺が直々に鍛えた斬岩刀(ザンガントウ)を渡してあるが、
それが真っ二つてのも気にくわねぇ
ほんとにエルフとやったのか?あの辺はファイロにも近ぇからあそこの魔術師どもじゃねぇのか?
エルフごときにワイバーンですら折れねぇあの剣に傷をつけることはできねぇだろ」
最後に、三代目フォルヂストが口を開いた。
身長はかなり低く、ドワーフの一族の血を引く。
口ひげを生やし、禿げ上がった頭ととがった小さな耳が特徴的である。
「うむ、確かに。
アナコレート殿、確かに剣ごと斬られていたのですな?」
「肯定。
切り口は溶けていない。ファイロの可能性低い」
ぐぅと唸るグラヴィスト
「して、相手の出方が変わっていたとの話だが、これは何か?」
ようやく腹心は口を開いた。
緊張と恐怖でのどはカラカラ、足はガクガク震えているが。
「は、はい
将軍閣下が第一陣を率いて進軍する前、敵陣はわざわざ狙いやすい平野に本陣を移してきました。
その後敵の夜襲にあい、我が軍勢の半数がそこでやられました。
私はちょうど兵站(へいたん)の確認に出ていましたので、
引き返せる連絡兵と兵糧搬送兵を引き返させ、今に至ります」
このとき、自分が逃げ帰ってきたと思われ、軍法会議に掛けられるのを恐れていた。
「ふむ、なるほど。
お前はもう良い、ご苦労だった下がれ。」
その言葉にはじかれたように立ち上がり、一礼して下がっていった
「先ほどの話、信じられるか?」
グラヴィストは苛立ちを抑えきれずに自分のこめかみを押さえる。
「いや、にわかには信じられぬが、それでも事実だろう。
これはあの噂は本当のようだ」
「召還者か?
ありゃあ失敗も多い上に代償もでけぇ儀式だ。
もし仮に斬った奴が使うのが異世界の武器なら、俺の剣がおられたのも納得だがよ」
それだけ言うと、フォルヂストは席を立つ
「おい、会議中だぞ」
「次は"折れない"剣を作る。
それに、俺は相手の武器を見てそれに応じられる剣を作るのが仕事だ。
工房に戻る」
「あ、俺も~
何か魔術が必要そうだから、兵糧庫とポーションのストック見てこないと~」
マギイストが続けて席を立つ
「ふぅ、やれやれ。
しかし、話も一理ある。各自部署の管理確認と今後の戦況を踏まえ、装備を確認しておけ。
では解散だ」
そ言うと、音も無くフォルヂスト以外全員が姿を一斉に消した。
これは"転送席"といわれる魔具で、座ったものをもうひとつの席へ送るだけの装置である。
一回の使用に、一般の魔法使いの1週間分の魔力を使うので、人間に近い種族は使用することができない
この後、オーロ帝国からプルーヴォ王国へ正式に会戦の通達が成された。




