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第11話 極致

今回は戦闘パートなので短いです。


ガキィィン


もう数十合打ち合っているが鋼兵の剣の冴えに一切の衰えが無い。


ブルートイは今まで力押しの戦いでこれほど技量と精神力のある剣士と戦ったことが無かった


自身の誇る剛剣すら流されその力を利用する動きに苦戦させられていた


―これほどの技量ならば、我が軍にも対抗できる者はそうはおるまい!!


流れるような剣捌き、鋭い突きと、円を描くような剣戟、


袴を着込んでいるので足元が見えないため、足運びを見切ることもできない。


そしてこの凄まじい気迫!!!


鋭い一撃はかわしきれるものではなく、小さな傷がどんどん増えていく


気を抜けば一気に首を持っていかれる!!


どれもこれも未経験で、とても常人の剣士では耐えられなかったろう


いままで戦争を経験してこなかったであろう国にこれ程の使い手が居ることを事前情報で知りえなかった事に内心舌打ちする。


いや、魔術兵を率いてきても結果は同じだろう。


相手がわざわざ"剣のみで"戦っている事には感服せざるをえない。


ここまでされてもはや意地も何も無いのだが、軍人として譲れないものがある。


そして、ブルートイもまた牛魔筆頭にして剣術指南役として牛魔軍の総司令官の自負がある。


―負けるわけにはいかぬ


その背負ってきたものこそがブルートイを支え、ここまで耐えさせている


しかし、己の振るう剛剣の威力と速さは時間を追うごとに鈍っているのも事実。


このままではやられるのは時間の問題だ。


そして数合打ち合った後、お互いに距離をとる


「はぁ...はぁ..


 息切れひとつ無しか..!


 化け物め!!!」


激しく息切れしているブルートイに対し、鋼兵は息ひとつ乱さず汗ひとつかいていない。


「やれやれ、人を化け物呼ばわりする割には、お前は見た目が化け物過ぎるだろう」


ゆっくりと、鋼兵は刀を正眼に構える。


ブルートイも応じるように大剣を上段に構える。


そして、ブルートイが気づく頃にはすでに奴の範囲内に自分が居るのに気づいた


「!?」


慌ててよけるものの、横に抜ける際にわき腹を深く斬られ苦しみで顔がゆがむ


本格的にやばくなってきた


―ここで終わるはずがない!!


乾坤一擲、ブルートイは最後の掛けに出ることにした。


今まで左右に細かく振るう戦法から、豪快に大振りで決めにいく戦法に変えた。


剣を思い切り上段に構え直し、一気に切り下げる。


するとその隙を寸分の狂いもなく鋼兵が突き、一気に懐にもぐり込んできた


ブルートイはこれを誘っていた


待ってましたとばかりに飛び込んできた鋼兵の体に体当たりをかまし突き飛ばす


意表を衝かれ鋼兵はたまらず吹き飛ばされるが、体勢もたて直らぬままそこにブルートイの追撃が次々に繰り出される


防戦一方の鋼兵に、状況はブルートイの方へ傾いたように思えた


勝利を確信したブルートイは高速の数回のフェイントの後、渾身の一撃を振り下ろした


相手の死角を狙い、寸分の狂いもない正確な一撃だった


これで決まった


盛大に舞い散った土ぼこりがパラパラと降る中、剣を振り下ろした先に鋼兵の姿は見えなかった


「...下だ」


「ぐぅ!?」


いつの間にか懐にいた鋼兵の虚を突く一撃に、ブルートイは後ろに下がるようにステップを踏む


しかし鋼兵はそれを追わず、刀をまっすぐ真横に構える


「"心流月派 

      攻型二式

           飛燕"」


「!?」


音速を超える速度で振られた刀から、空気を裂く強烈な真空の刃がブルートイへ向け飛んでいく


ここまでの現象を"攻撃"として顕現するには普通魔法を使うが、


"体術のみ"で発動出来るものはこの世界には存在しない。


ましてや剣のみで発動など不可能だ。


しかし、鋼兵はその荒業をやってのけた。


心月流の極意は、その剣捌きによって発生するソニックブームの斬撃である。


壮絶な修行の末、手に入れた人外の力の一端だった。


放たれた、空気を裂くほどの鋭い剣戟をとめる術は無い。


見えない刃が飛んでくるのとほぼ同じようなものである。


「があぁぁあああぁぁああぁああぁぁあ!!!」


それを打ち払おうと全力でブルートイは大剣を振るうが、真空の刃にはいかな剛剣といえどその硬度で耐えられるはずも無く


「ぐふぅ!?」


大剣ごと巨体を真っ二つに裂かれた


ドサッと後から続くように上半身が地面に落ちた。


オーロ帝国が誇る"剛剣の猛将"率いる牛魔軍が壊滅した瞬間だった。


過去100年、オーロの軍勢が負け戦をすることは無かったし、周辺諸国もそれに頭を抱えていた。


しかしそれを成しえたのは、ファイロの熟練の魔術師でも、グルンドの精強な騎士でもなく、


異界より現れた侍だった。

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