転校生-第三者視点-
騒がしい教室。
本来であれば、喋り声はあれどもこれほど騒がしくなった時は何かのイベントや
事件があった時ぐらいでしかない程に騒がしい。
だが、それもある種必然と言える。
『転校生』の存在は、それほどに学生達を揺さぶるものだった。
理由は簡単だ。
“転校生はほぼ有り得ない”からである。
通常の学校でも、滅多にしかない転校生と言うイベントではあるが、この学校においては
意味が変わってくる。
基本的に、この学校では転校生は認められていないのだ。
過去に日本では誰もが知る大企業の社長の息子が転校しようと学校へ打診をしたが
まったく取り合ってもらえなかったのだ。
一度は強引に話を進めようとしたが、それ以上の資産家達から顰蹙-ひんしゅく-を買い
一時は赤字まで追い込まれたと言う逸話すらある程に転校は厳しい。
そんな学校に『転校生』が来るのだ。
過去の数度しか事例がない事態に、生徒たちが沸き立つのも無理はない。
そんな朝の教室の喧騒を打ち破ったのはガラリと開いたドアの音だった。
教室中に響くその音に生徒たちは会話を止め、静寂が教室に戻る。
先生「席に着いてください。ホームルームを始めます」
入ってきた妙齢の女性のその声で全員が素早く席へと座る。
教室の内装は2人で使う長机が縦に5つ。横に3つの30人体制だ。
椅子は黒いカバー掛けがされている平椅子。
それぞれの机の間には階段が設けられ、前の電子黒板を後ろも見やすいように設計されている。
天井には場違いのごとくシャンデリアが光源となって吊るされていた。
先生「皆様、御早う御座います。……既に知っている方も大勢居る様ですが
本日から一緒に勉学を学ぶことになる『転校生』を紹介致します」
その声で、教室が再度騒がしくなる事はなかったが、教室の雰囲気が変わる。
先生「入ってきて下さい」
その声で、クラス全員が入口へと視線が集中する。
そうして……僅かな時間の後、一人の男が教室へと姿を現す。
先生の隣まで行き、止まる。
先生「では、自己紹介をお願いします」
コクりと頷くと、声を発した。
四生「皆さんこんにちは。僕の名前は『国条 四生-こくじょう しせい-』と言います。
急な転校なため、まだ勝手がわからず皆さんにご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが
精一杯頑張っていこうと思いますので、どうか宜しくお願いします」
そう言って、頭を下げる。
黒髪にメガネ。恐らく日本人だろう。
顔は若干童顔で、見た目よりも多少若く見える。
服装こそ指定の制服を着ているが右手には何故か黒い指ぬきのグローブを付けている。
先生「彼は右手に火傷を負っている為、特例でグローブを付けています。
まだ生活に慣れないと思いますので、皆様どうか困っていれば助けてあげて下さいね」
見るとキョロキョロと落ち着き無く目線を動かしている。
なるほど、確かに慣れていないのだろう。
この内装だけでも普通の学校とは違う。
緊張しているのもわかる。
大多数の人間がそれを微笑ましく思いながらも彼自身に興味を惹かれていた。