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簡素な部屋の中で

キリアの部屋から出ると真っ直ぐに自分の部屋に戻る。

無機質な金属扉を静脈認証で開け、中に入る。


中に引いてある赤い絨毯とベットと机、そしてクローゼットだけと言う簡素な部屋だ。

中に入り、扉を閉めると、念のために仕掛けておいた

足元の、例え眼を凝らしてもギリギリ見えるかどうかの粒を見る。


……割れていなかった。

ちなみに、普通に入ると高確率で踏む位置に置いてあり

中にはブラックライトで光る塗料が入っている。

それが複数置いてあり、全て割れていなかった。



踏んだ後があれば、その跡が付き、入室の有無から塗料が付いている物を調べてれば

誰が入ったかまでわかる。


……もっとも、此処に居る人間で入る人間は居ないだろうが、これは習慣のようなものだった。

無論、自分ではいる時はそれを踏まない様にするのは、まあ言わないでも当たり前の事だろう。


ベットに腰を掛け、受け取った茶封筒を開き、中の書類を取り出す。

3枚有り、それら全てに順番に目を通していく。


一枚目にはこう書いてあった


『特殊B 狼 潜入長期』



「特殊B、か……珍しいな」


特殊Bとは、任務の重要性や内容を表すワードである。

特殊は通常の任務と違いその任務を行いながらも別の任務を行ったりと

文字通り、通常とは違う特殊な条件等がある場合だ。


Bとはランクであり、Sが最上位であるが今だ受けたことが無い、と言うより発令されたことがない。

それは全てに優先されると言う事であり、理論上は此処が壊滅の危機等の場合しかない。

そのため、通常であればAが最大であり、Bは上位2番目。かなり高いと言える。


ちなみに、今回行った戦闘行動は通常Eであり、下から2番目である。


次の狼、と言うのはその任務が受けられる人間である。

狼は、自分。鳥はクロウ。そして兎がラィである。

複数書かれていれば、例えば狼鳥と書かれていればクロウにも同じ指令がわたっていると言う事だ。


とはいえ、任務はよほどのことでない限り“強制”では無いため、クロウが必ず参加しているとは限らない。


また億が一、自分が受け取った書類に自分の動物、今回で言えば狼が載っていない場合は

直ちに文書を処理し、報告する必要がある。また、中はそれ以上見てはいけないとなっている。


……もっとも、今までそんな事態は存在していないが。



次の文字はそのまま、任務の特性を表す。

潜入長期、は文字通りの意味だ。


基本的に一枚目のその情報だけ見、受けるのであれば中を見る。

受けなければそのままキリアに返すと言う事になっているが、今回は特別である。


任務はよほどのことでない限り強制ではない、が……ランクがB以上は受注必須となっている。

その為、めったに出ないランクではあるのだが。


「やれやれ……どんな難題なんだかな」


ランクが高いのは言わずもがな、それだけ厄介と言う事である。



「とはいえ、Bじゃ断る訳にもいかないか」


左上に有るACTと書かれた蝋印を破り、ぺらりと2ページ目をめくる。


『これから1年間、天凰院学園に転校生として所属してもらう。

任務内容は『護衛』だ。「朝凪 風火-あさなぎ ふうか-」と言う女性を1年間護衛してもらいたい。

ただし、護衛対象に護衛していると気づかれない事。また、周囲にその事を知られない事が条件だ。

護衛方法は判断に任せるが、知っての通り超お嬢様、お坊ちゃま学校の為、過度な銃器の使用や

もみ消し出来ない事件や行動等は禁止となる。

通常任務についてはメッセンジャーを使い、平行してこなして貰う事になる。

その間の護衛は別の者に任せる為そこは心配しなくて良い。

護衛対象のプロフィール及びキミのプロフィールは3枚目に記載する。

なお、これ以上の情報は無いものとして頑張ってくれ!byキリア』


「最後の方で公私混同するなよ……」


しかし、天凰院学園とはまた難儀な場所を……

確か資産1000億以上出ないと基本的に入学出来ない場所だ。

その為総面積もとても広く、施設や機材その他も最高級のレベルを揃えてある

文字通り「超金持ちの為の学園」だ


面倒な事になりそうだなと思いながら3ページ目に目を通す。


対象にプロフィールを10分掛け、頭に叩き込む。

その後、自分のプロフィールを覚えこむ。


「名前は、国条 四生-こくじょう しせい- 18歳 男

両親は死別。学校には特待生で入った。小さい頃から武術を嗜んでいる。

右手に火傷跡有りの為、黒い指貫グローブを特別に付けているか……有る程度今のプロフィールと合わせてあるのか」


勿論俺の右手には火傷なんてものは無い。

しかし刺青を見られるのはまずいと言う事の配慮だろう。


その他細かいプロフィールを覚え、自己暗示のように自分に思い込ませる。

幸いにも、今の現状と変わらないように『設定』されている為、苦はなかった。


四生「……よし」


机の一番上の棚を開け、封筒ごとファイルを入れて閉め、横のボタンを押す。

数秒経ってから、開けるとそこには何も無かった。

この机の一番上は焼却装置になっていて、灰も綺麗に吸い取って情報消去してくれるようになっている。



四生「しかし……四生か、皮肉で付けたのか、それとも唯の嫌がらせか……」


珍しく自嘲する様な笑みと声を出してしまう。

ベットにそのまま寝そべり、仮眠を取る。

さて、明日から準備に搬送しなければな。



しかし、ああ、確かに……“四度目の生”だな


もう一度だけ口角を吊り上げると意識を沈ませていった。

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