ムンズ攻略編第3話~出陣~
プロローグを加筆修正しました。そちらから是非読んで欲しいです。
3話は相変わらず、芙雪のツンデレっぷりがうざいです(笑)
「お父様、どういうことですか?マルクが討伐軍の指揮など無理です。」
バンッと机に手をつき、芙雪が捲し上げる。王は執務をあきらめ、腕を組んで娘に向き合った。
「しかしな、こうするしか方法はないし、別に後ろで指揮の真似事をするだけだ。実際は副官がしっかりとやる。強いて言うなら御輿みたいなもんだよ。」
あきれた様子で王が言うと芙雪は言った。
「ならば、私も一緒に行きます。」
「ならん!芙雪に何かあったらどうするんじゃ!」
「言っていることが矛盾していますお父様。」
いきなりうろたえる王に向かってますます頭に血が上る芙雪であった。
翌日、芙雪はマルクを引きずり、父であるハンムリル国王に直談判に来ていた。そして、ずっとこのような押し問答の繰り返しである。
「だいたい、マルクだって無理だと思ってるわよね?」
「へっ?」
急に話を振られたマルクは思わず間抜けな返事を返してしまった。
「はぁ〜。いい?どうして私がこんなに頑張っていると思っているのよ。全て、あなたが戦に行かなくてすめためじゃないの!私、ひとりがバカみたいじゃない!」
いつまでも芙雪は怒り続ける。王は急に納得顔をして
「芙雪の言いたいことはわかった。愛しの愛しのマルクに危ない目には合わせたくないってことだな。しかし肝心のマルクがどう思っているか儂は聴いておらん。」
その質問に、マルクが答えようとする前に芙雪が捲し上げる。
「そんなの、聴かなくっても解りきったことじゃない。行きたくないに決まってるわ。それに愛しの愛しのって何よ。私はただ、お父様が勝手に決めた婚約者でも一応は婚約者だし、いくら形だけでもころっと死なれたら後味悪いっていうか、えぇっと。と・に・か・く、マルクだって行きたくないの!!」
「い、いや、おれは…」
「なに?」(ジロリ)
「いえ、なんでもありません。」
芙雪の睨みに震えるマルクは再び口を瞑る。
「これこれ、芙雪。そう威嚇していてはマルクが何も言えなくなってしまうではないか。妻とは夫を立てるものであって威嚇するものではない。マルクも少しは物事をはっきりと言わないと。その歳で尻に敷かれていたらこの先やっていけないぞ。」
「まだ、結婚してないんだから妻じゃない!へっ、変なこと言わないでよ。マルクもなに照れてるのよ。」
怒りから逆に恥ずかしさであわてだす芙雪。顔は結局赤いままであったが。
「まだ、のう。しかし、大教院の者からいつも言われるぞ。二人のイチャイチャだけはどうにもならないって。親として、育て方を間違えたのかのう?」
「知らないわよ。有ること無いこと言わないでくれます?」
「いや、別にあることしか言っとらんが・・・」
芙雪は腰に手を当てると、はっきりと言い切った。
「とにかく、マルクの出陣の件は撤回しておいてください。別の課題を作っておいてください。いいですね?へ・い・か!」
「おおぅ。マルク君。芙雪が他人行儀な呼び方をするぅ。」
「いえ、わたしに言われても・・・」
「では、もう下がりますから。行きましょ、マルク!!」
「あぁぁ、ちょっと。引っ張らないでぇぇぇ〜。」
芙雪に引きずられるマルクを見ながらダレル公がボヤく。
「また随分と偏愛されておりますな、芙雪様は。」
「親としては、複雑なんだがな。しかし、今回のムンズ攻略はなんとしてもマルクに行ってもらわないといかん。ダレル、どうするかのう。」
ダレル公はううむと悩むと
「おそらく、サンダール王国はあと半年でしょう。それまで何としてもムンズをマルク様の地盤にしていただかなくてはなりません。」
「何とかしないとな。とにかく、明日マルクにもう一度話をして明後日には出発してもらう。芙雪はしばらく話をしてもらえなくなるかもしれないが仕方ないな。」
娘の追及を考えると溜息しか出てこない王であった。
「まったく、お父様は何を考えているんでしょう。マルク、心配しなくてもいいわ。私がしっかりと話をつけるから。絶対、出陣なんてさせないんだからね。」
「しかし、それで単位をくれるなら楽じゃないか。」
マルクが恐る恐る言うと
「ばか!!そんなので命賭けるとか意味解らない。」
「でもまぁ。決まってしまったんだから。芙雪もあんまりお父さん困らせちゃいけないよ。」
「でも、それで死んじゃったらどうするのよ。」
「だから、俺は今回、司令官として行くから自分が実際に戦闘することはないし。副司令官がすごい優秀らしいから指揮を採るのもそっちだろう。あっ、もしかしてそんなに俺のことが心配?いつも婚約破棄してやるとか言ってるのに。」
予想外にマルクが反発するので芙雪は言葉に詰まる。
「私が言いたいのは・・・ぅぅぅ〜。私が婚約破棄したいと本気で思っているの?あと半年でマルクは国に帰るのよ。少しでも一緒にいたいじゃない。・・・って、別に深い意味はないのよ。ただ、マルクはいつもだらしないし私がいないとしっかりとした王子としての勤めが果たせないからであってその・・・。・・・もういい!!マルクなんて戦場に行ってしまえばいいんだわ。でも早く帰ってくるのよ。ああ、もう。私は何を言いたいのよ〜。」
翌日、まだ愚図りながらも芙雪はマルクの出陣を承諾してしまった。そして、
「それでは、無事ムンズの内乱を平定してまいります。」
「うむ、分かっているとは思うが、此度の戦はそなたの一生が左右されるものとなる。細かい事はこれにしたためておいたのでよく読んでおくように。それでは、武運を祈っておるぞ、マルク。それとデイヘラー少佐、マルク特務中佐の補佐を任せる。」
「はっ、マルク殿下を補佐し内乱を速やかに沈めてまいります。」
「マルク、早く帰ってくるのよ。べっ、別にあなたがいないと寂しいとかそういうのじゃなくて、えっと、そう!私はこの歳で婚約者に死なれるなんて汚点をつけたくないからなのよ。いいから、サッサと行ってきなさい。待っててあげるから!」
「はははっ、それじゃ行ってくるよ。全軍、出陣!」
「マルク様、行ってしまわれましたね。大丈夫でしょうか、姫様。」
「沙織、いくらあなたでも、マルクを侮辱する事は許さないわよ。マルクはもともと戦闘能力はそこそこあるし、今回は私の婚約者として御輿役だから戦闘はでないって言ってたわ。」
「そうですよ、沙織。マルクはああ見えても自分の身くらい自分で守れます。」
「ユキト?あなたは行かなかったの?」
芙雪がびっくりして尋ねる。
「ええ、私には帰国命令が出ました。この時期になぜ?と思うのですが命令なので戻ります。しばしの別れとなり申し訳ありません。」
「そう、ユキトも居なくなってしまうなんて、なんかサンダールの痕跡をすべて無くしてしまおうとしているみたい。」
芙雪のつぶやきにユキトは一瞬びくっとした。
「そんなこと無いですよ。ただ、ちょっと寂しいですね。私も午後には出発します。それでは」
「沙織、あなたはいつまでも私のそばにいるのよ。」
「姫様、何を言ってるんですか。たとえ、マルク様に捨てられても、私は絶対離れませんからね。」
ずっと4人で過ごしてきた芙雪にとって2人との別れは少しこたえるものがあった。
一方、ムンズに向けて出発したマルク率いるハンムリル王国軍は、一路ムンズに向かっていた。馬上で並んでいるマルクにデイヘラー少佐が尋ねた。
「司令官殿、陛下からはなんと?」
「ああ、その事も含めて今夜、野営地で話す。ただ、これだけは言わせてもらう。少佐には相当な貧乏くじを引いてもらってしまった。しかし、このことは少佐にしかできないという陛下の信頼からである。そのためにハンムリル王国に対して反逆者と罵られるようなことがあっても耐えられるか?」
「それはすべて陛下の意志ですか?」
「そうだ」
「わかりました。ではこの命マルク様に預けることにします。」
「すまないな」
その後、二人は野営地まで一言も話さず進んだが、どちらからも確固たる意志を持った顔が伺えた。
しばらく本業があるので、次話投稿が遅くなりそうです。なるべく、今月中に出したいです。活動報告は定期的に更新するので、そちらでご確認ください。
まだ、手探りで書いているので、いろいろアドバイスなどが欲しいです。
1月16日微修正兼加筆しました。