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サンダリル興国史  作者: 大九
1章ムンズ攻略編
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ムンズ攻略編第2話~出陣命令~

なんとか3話出せました。また、頑張ります。お気づきの点ありましたら、ご教授願います。

「では、マスター。次は必ず勝つからな!」

 閉店時間にナリ、4人は喫茶店を出ていった。

「しかし、いつになってもマスターには勝てないわね、マルク!」

 芙雪はニヤニヤとしてマルクをからかう。マルクはむっとして、

「マスターが強すぎるんだよ。3年半前だって俺は別にそこまで弱かったわけじゃない。少なくとも、体術も魔術も陸軍学校の新入生レベルではトップクラスだったはずだし。間違っても喫茶店のマスターなんかに負けるはずはなかったんだ!」

「またまた、そんな嘘ばっかり。あなたがトップレベルじゃサンダール王国は帝国に負けちゃうじゃない。」

「なっ、なんだと!」

 2人がキャイキャイと言い争いをしていると、ユキトが言った。

「しかし、マスターは何者なんでしょうね。常識から言って、我がサンダール陸軍でも中佐レベルの実力を持つマルクがガチでやって手も足も出ないんだからな。少し、過去を探ってみたが6年前に喫茶店を開いたこと以前のことが全くわからなかった。」

 ユキトがそんなことを調べていたことに3人が驚く。

「それより、マルク。あんたどうすんのよ。本当に単位が出なくなっちゃうわよ。」

 昼間の件を思い出し、心配そうにマルクを見る芙雪。彼女にとって今の一番の問題はそのことである。

「まぁ、出席以外は完璧だし、なんとかなるだろう。それにマジでやばくなったら親父さんが何とかしてくれるよ。」

「私の親を頼るな!」

 マルクと芙雪が婚約者同士ということもあり、マルクは芙雪の父親、つまりハンムリル国王を親父さんと呼ぶ。国王自身もマルクを自分の息子のようにかわいがった。


 4人は、学校の近くの屋敷に帰ってきた。ここは芙雪の別邸である。芙雪が学校に通うにあたり、国王が作らせた。曰く、実家からでなくては安心して夜遊びもできないであろう、とのこと。4人は現在そこに住んでいる。持ち主である芙雪と侍女である沙織はもちろんとして、婚約者なら別に問題ないとのたまう国王により、マルクとユキトの下宿先もそこになった。(ちなみに、最初マルクと芙雪の部屋まで一緒の予定であったが、それはマルクが全力を持って辞退した。)普段の4人は屋敷に帰るとそれぞれ、部屋にこもってしまう。夕食はヨシトの所で済ませてきてしまうし、風呂やトイレといったものは各部屋に備え付けられている。沙織も屋敷にはメイドがいることから芙雪の世話をする必要はない。もっとも、こちらは芙雪の話し相手として夜遅くまで芙雪の部屋にいることになるのだが…。しかし、この日はそのいつものがなかった。


 4人が屋敷につくと門のところに一台の車が止まっていた。

「あれ?ダレル公の車じゃない?」

 ダレル公とは、現在宰相として国政を行なっている。同時に宮廷魔術団の団長でもある。国王と同日に生まれ、互いに切磋琢磨しながら青年時代を過ごした2人には強い信頼関係があった。日頃の忙しさなら国王以上であり、“ハンムリルの守護神”の異名は、国内に留まらず、世界に知られていた。特に、20年前にあった半虎戦争では、ハンムリル軍魔術将軍として伝説になるような戦功を挙げた。現在は、気分屋の国王に対し、ただひとり諫言を言える存在となっている。

 屋敷に入ると予想通りダレル公が待っていた。

「急に来てしまい、申し訳ありません。姫様。マルク様。それにしても随分と帰りが遅いようですな。こんな時間まで大教院で勉強とは、いやはや、このダレル感服でございます。」

 いつも、郊外の喫茶店に入り浸っていることなどお見透しのくせにサラリと小言を言ってのけるダレルはさすが一国の宰相である。

「今日、こちらに伺わせていただいたのは他でもない。マルク様の件でございます。」

 すでに、大教院でのサボりの連発で単位が危なくなっていることを知られているようである。去年までは、芙雪がなんとか教師たちに話をつけてきたが今年はとうとう国王まで話がいってしまったようである。

「マルク様の授業態度に対し、陛下は大爆笑で単位くらいくれれば良かろう。とおっしゃったのですが、やはり他の生徒への示しがつかないということから、私から1つ課題を出させていただくことになりました。」

 そう言って、1つの封筒を取り出した。

「拝見させて頂きます。」

マルクが神妙に封筒を開ける。


課題書

ハンムリル王立大教院 練兵学部兵略学科4年 マルク・アレ・サンダール

上の者、授業態度がすこぶる不良である。よって、下記の通り補修課題を課すこととなった。

課題 現在、我が国の西方にあるムンズ地方において、反ハンムリル組織が挙兵した。騎馬兵100、歩兵300、魔法兵50をつれて制圧すること。

ハンムリル王立大教院 院長 ダレン・カイルス


「ちなみに、軍を動かすために陛下から特別に階級を与えられましたぞ。」

さも当然とばかりにダレルが続ける。


任命証

マルク・アレ・サンダール

上の者、ハンムリル軍特務中佐に任ずる。

ハンムリル国王 忠真ただざね・エクス・ハンムリル


「ちょっと、これどういうことよ!」

 あまりにも突拍子のないことに芙雪が声を上げる。

「あっ、そうそう、制圧中は特例として大教院の授業に出なくても出席扱いにしておくので安心してくだされ。」

そう言うと、ダレルはすたすたと、門を出て帰ってしまった。

「あ~、もう!こんなの無理に決まってるじゃない。戦場に出たらマルクなんてすぐ死んじゃうじゃない。明日、お父様に文句言いに行ってやる。」

 課題書と任命証を見つめて立ち尽くしているマルクを横目に芙雪はすたすたと自室にこもってしまった。その後ろを慌てて沙織が追いかける。そう、激情していた芙雪は気付かなかった。2枚の書類を見るマルクの口がニヤリと笑っていたことに。


 マルクは夜、自室で本を読んでいた。その背後にすっと影が現れる。

「マルク様、失礼致します。」

「よい、して結果は」

マルクは本から目を離さずに言った。

「まず、祖国サンダールについてでございますが、ダイオス陛下は相変わらずのようでございます。」

「まぁ、父上はちょっとやそっとじゃ動じないからな。」

「しかし、弟君のヒューム殿下は最近、軍の上層部や魔術師たちとしきりに接触しているようです。また、コルン帝国とも密かにコンタクトをとっております。」

マルクはくくっと笑うと

「ここで、バレている時点で、密かにっていうのは意味が無いがな。まぁ、よい。そちらは今しばらく静観でよいであろう。それより、ムンズの方はどうだ。これもサンダリル計画のうちなのであろう。」

「おそらく、そのようでございます。ムンズの反対組織は現在1000ほどの規模でございます。制圧にはそれほど苦労しないかと」

「反旗を翻した理由はなんだ。」

「地元貴族の横行でございます。ムンズ伯爵は不当に税を上げ私服を肥やしておりました。」

また、ありがちな。そう思ったマルクであったが不意に真剣な顔をして聞いた。

「では、方法次第で我らの味方になる可能性は?」

「高いと存じます。」

「よし分かった。ご苦労だったな。引き続き、各方面の情報収集をよろしく頼む。あと、しばらく、遠征になると思うのでそちらもしっかりとな。」

「かしこまってございます。」

すっと影が消えた。部屋には再び、静寂が訪れ、マルクがページを捲る音のみが響く。


ようやく第1章ムンズ編が始まります。

1月16日、後の話との矛盾点を修正しました。

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