令和のランプ魔人は―――
ご来店いただき誠にありがとうございます。
「クソッ!また爆死かよ。ピックアップの確率ぜってえいじってんだろ運営さんよぉ」
カーテンを閉め切った部屋でよれよれのジャージを着た青年がスマホを手に苛立たし気な声を上げていた。
「あ~もう石ねえし。魔法のカードを買おうにも金がねえんだよな。おいっ、ばばあ小遣いくれよ!」
部屋の戸を開けて怒鳴るが何も反応は帰ってこなかった。
「くそがっ、ばばぁいねえのかっ?役にたたねえなぁ」
ぐちぐちと文句を口に出しながら親の部屋をあさる。
「金は…ちっ、隠しやがったな。…あ~、んじゃ金目のもんはねえかなっと」
暫くごそごそと部屋を漁っていたら、奇妙なものを見つけた。
「あん?なんだこりゃ?カレーポッド…ランプか?銀よりはちょっと重いしプラチナだったりするか?」
一先ず金目の物を見つけた青年はソレを部屋に持ち帰って改めて観察する。
「なんつーか、おとぎ話の魔法のランプみたいだな。何でも願いを叶えてくれたり…とか?なんつってな。あれ?ちょっと先っぽ汚れてんな。やっぱカレーポッドか?」
ランプの先にこびり付いたような汚れを見つけた青年は売るのなら綺麗な方がいいかと、そこらにあったティッシュで汚れを擦った。
すると、ランプから煙が吹き上がってきた。
「なんだぁ!?ジョークグッズかよ!」
青年が驚いてる間にも煙は吹き上がり続けて、だんだん凝縮されて人の形をとる。煙に押し流されて漂っていたランプもすっぽりと収まった。
「んなぁっ!?」
「汝が吾輩を呼び出したのかね?ならば、願いを言うがよい。1つだけ叶えよう」
「マジでっ!オカルトかよっ!?んじゃあ願いを無限にしてくれ!」
どう見ても怪しいが現れ方が人ではないので、詐欺ということはないだろうと軽率に願いを言う。
「それは出来ない」
「あーあー願いごとのルールってやつか?」
「否、独占禁止法第2条第9項第5号の優越的地位の濫用である」
「法律!?っつーか、お前よく見ればランプ尻に刺さってねえか?まさかさっきの汚れってう〇こ?」
髭面で上半身は筋骨隆々の肉体を持ち、上半身はノースリーブのジャケットで下半身はビキニパンツ。おまけに尻にランプの先っぽが刺さっており、ケツ圧でメキメキいっている。
「否、吾輩はトイレに行かないのである」
「昭和のアイドルか!?」
禿頭髭面ガチムチアイドルが生まれてしまった。しかし、令和なのでなにも問題はない。
「いや、あるだろ!?」
地の文に突っ込まないでいただきたいこのクズが。
「罵倒されただとっ!?」
「それで願いはないのであるか?クズ殿」
「名前じゃねえよ!」
怒鳴り続けてぜえはあと息を荒げる青年にそっとカップを渡すとランプから爽やかな香りの茶を注ぐ。
「ああ、サンキュ。さっぱり…ぶふぅっ!て、てめえそのランプ尻に刺さってたやつじゃねえか!」
「願いはNA・I・NO?」
青年の怒りを無視して問うガチムチに青筋を立てるが深呼吸して心を落ち着かせる。
「ふぅはあ。むかつく喋り方しやがって。そんじゃあ女だ!このキャラみたいな女を俺にべたぼれにしてくれ」
先ほどまでプレイしていたソシャゲの画面にお気に入りキャラを映して願いを告げる。
「それは出来ない」
「な・ん・で・だ・よ!心を操るのは~とか、倫理が~的なヤツかよ?」
「18歳未満との性行為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に抵触するのである」
「ま・た、法律かよ!っつーか手ぇ出すって決めつけんな!」
「出さないのであるか?」
「…………ちっ」
青年は目を逸らした。
「くそがっ、なんだったら出来るんだよ?」
「何でも出来るのである」
「出来てねえじゃねえか!もういいっ!金があればガチャも女も好き放題だ。金だ、金を出せ!」
「それは出来ない」
青年は白目を剥いた。
「……い、一応言い訳は聞いてやる」
「個人が貨幣を造ることは刑法148条1項通貨偽造罪に当たり、使用することで刑法148条2項偽造通貨行使等罪でたいーほ待ったなしなのである」
「どう見ても人間じゃねえ奴が法律守ってんじゃねえよ」
「コンプライアンス順守は企業の義務である」
「いつから企業になった!?つっかえねえ変態くそ野郎だ…ぶげぇっ」
ガチムチにビンタされた青年は吹っ飛んでピクピクと痙攣していた。
「カスハラには厳正に対処をするのである」
「ぐ、ごぇ」
暴力じゃねえかと青年は言いたかったが、顔の形が変わっていたのでうめき声しか出なかった。
「しかし、クズ殿の先の願いを叶える方法はあるのである。実行するであるか?」
青年は目で「あるんなら最初からやれよ」と訴えながらこくこくと頷く。
「うむ、汝の願いを叶えよう」
再び尻からランプを抜くと、底からシャキーンと棒がせせり出してステッキになった。
「まじかる☆しゃいにんぐまっするぅ♡ご主人様の願いよか~なえ!」
野太い声で呪文を唱えて踊り狂うガチムチ(ほぼ半裸)がステッキを向けると、先端から虹色の光がギラギラと溢れてきて青年を包んだ。
「ごぉーっごぉーっ」
言葉にならない呻きを漏らしていた青年だが、完全に姿が隠されるとその声も聞こえなくなった。
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3か月後
「みんなー!今日は来てくれてありがとう」
どこか現実を超越した美貌を持つ少女が大勢のファンの前でパフォーマンスをしていた。
男性比率が高めなファン達は熱狂的な盛り上がりを見せており、盛況の中少女は最後までステージを走り切った。
ステージを終えて汗だくで疲労した体を引きずって控室に帰ってきた少女は、わき目もふらず大きな鏡の前に寄り添った。
「ああ、疲れ切ったあたしも可愛いわ。大好きよ、あたし。あたしだけがあたしの世界にいればいいのに。愛してる」
少女は鏡に映る自身に口づけをした。
それをガチムチがランプの中から腕を組んで頷きながら見ていた。
「うむ、完璧である。成年であるクズ殿自身が理想の姿になって自身にべたぼれになる。そして、偶像となるような容姿でパフォーマンス出来るスペックがあればもう一つの願いである金も叶うこととなる。ふむ、魔法による精神操作は犯罪に当たらないのである」
自身の成果をしばらく満足そうに見守ったあとは、再び呼び出される日を待つ日々に戻っていった。
衝動に突き動かされて書きました。




