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奴隷の呪いと  作者:


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93/103

93. 決戦

 昼だと言うのに、雲が低く、王都は薄暗かった。

 ジェイドは王城にマリウスを運んだ時、既に他の国でも魔物達の攻撃が始まったことを耳にした。同盟国はラスタ王国と同様、非常事態に備えているはずだ。

 マリウスは虫の息だったが、ジェイドが少しだけ治癒で回復させた。

 王城にはマリウスの妻シキノがいたが、足のちぎれた瀕死のマリウスを見ても泣き叫ぶことはなく、ジェイドに頭を下げた。そしてマリウスの治癒を治癒士に任せると、毅然とした姿で怪我をしている兵士や民達の手当てを続けていた。

 戦場に戻ろうとしたジェイドをラジール国王が呼び止めた。

「…ジェイド、やはり行くのか?」

「こんな老いぼれでも騎士五十人分の働きをしなきゃ、可愛い孫たちに怒られる」

 ジェイドはそう言って笑う。

「…お前が一番、戦場に行きたそうな顔をしてるな」

 ジェイドはラジールの肩に手を置き、そう言うとラジールは大きく息を吐いた。

「結局は国王と言えど、国民のために大して何もしてやれない。ただ安全な城で守られるだけだ」

 ラジールの顔には悔しさがにじみ出ていた。昔は騎士として共に闘った仲だ。

「国民がお前を必要とする時は、闘いの時ではない。その後だ。俺の親友が王になったあの日から、平和のために国民のために走ってきたのを俺は知ってる。だから戦は任せろ」

「ああ。武運を祈る」

 ラジールはそう言ってジェイドを見送った。

 


 キャロラインの孤児院は避難所になっていた。ヴィオラとユルゲイ、そしてキャロラインの家族も総出で怪我人や避難してきた者の救助に当たる。孤児院の子供たちもその姿を見て自分の出来ることを探し、動いていた。

 不安で泣き叫ぶ子供の声が響く。何もできないもどかしさと不安で男達の中にはイライラする者も出て来た。

「うるさい!その子供達を泣きやませろ!」

「仕方ないだろ!お前こそ黙れ!」

「なんだと!?」

 小競り合いになる男達にキャロラインは困惑し、父親のエルビス伯爵を呼びに行こうとした。

「キャロライン先生、僕に任せて」

 そう言ったのはレオだった。

「え?」

「大丈夫。皆不安でイライラしてるだけだ」

 レオはそう言うと言い争っている男達の所に行った。

「なんだ、このガキ…」

 レオは呪文を唱え、金色の魔法陣を空中に描いた。魔法陣はフワフワと拡がりながら天井近くに上っていく。驚いて全員がその魔法陣を見上げた。レオはパチンと音を鳴らして両手を合わせた。

「!?」

 魔法陣は霧のように粉々になり、避難所全体に振り注ぐ。

「!?」

 泣いていた子供達が泣き止み、喧嘩をしていた男達はスーッと怒りが収まる。シーンと静まり返った建物の中、全員がレオを見た。

「今この瞬間にも、僕達を守るために命をかけて魔物と戦ってくれてる人達がいる。家が壊れても、命があれば前に進める。だから、僕達は今自分に出来ることをするんだ」

 レオがそう言った。十歳の子供とは思えない落ち着きようと、威厳に、男達は拳を下ろし、頷いた。

「…そうだ、何か手伝うことはないか?」

 男達がキャロラインを見た。

「あ…えっと…薪が地下にあります。ここと上の階に運んで下さると助かります。あと、炊き出しも人が足りなくて…」

「任せろ!」

「私も手伝うわ!」

 次々に大人達が声をあげた。

「あ、ありがとうございます!」

「キャロライン先生、子供達の世話は俺らがします」

 孤児院の子供達がそう言うと、キャロラインは感動しながら頷いた。

「任せるわ!…レオ、ちょっといい?」

 キャロラインはレオを呼び出した。

「…さっきの魔法陣は何?」

 レオはキョトンとした表情でキャロラインを見上げた。

「うーん、よくわかんない。でも、あれを出した方がいいってなんか思ったんだ」

「精神魔法よね?魔法士さんに習ったのかしら?」

「ううん、あんなの習ってないよ。でも多分…」

 レオはそう言葉に詰まり、胸に手を当てた。

「やっぱりわかんないや。俺も皆を手伝って来るね」

「ええ。レオ、カッコよかったわよ、ありがとう」

 キャロラインに言われ、照れくさそう笑うと、レオは他の子たちの所に駆けて行った。

「俺…?」

 キャロラインはふと違和感を覚える。普段レオは自分のことを俺と言うが、先ほど、大人達に言い聞かせた時は確かに"僕"と言った。しかも、大の大人が黙って耳を傾けるだけの威厳を感じられた。

 そしてあの魔法。精神魔法なのは間違いない。キャロラインさえもあの瞬間から、不安が和らいだ。

「…」

 キャロラインは子供達の面倒を見るレオの横顔を見て首を傾げながら持ち場に戻った。





 









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