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奴隷の呪いと  作者:


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84/103

84. 竜

「スターク!お帰り」

 騎士の砦で騎士達と話していたカインはスタークの姿を見て駆け寄って来た。

「ただいま。…カイン、色々ありがとな」

「やっぱりスタークはあんなフリフリのスケスケの服より、騎士団の制服の方が似合うよ」

 カインはそう言ってハグした。カインはニヤリと笑い、スタークを見る。

「…幸せオーラが全身の毛穴から出てるよ」

 カインがそう耳打ちするとスタークは顔を赤くし、それを右手で隠した。

「大丈夫、多分、僕にしかわからないから」

「あ…と。そうだ…レオはどうした?」

「キャロラインの経営してる孤児院に連れて行ったよ」

「ああ、あリがとう。明日にでも会いに行くよ」

「そうだね。」

「アリアは?」

「マリウス団長に報告してる。気の魔法ももう一度封印しに行かなきゃならないから、ラステルさんも来てると思う」

「丁度いい。カインも来てくれ」

「ああ」


 二人がマリウスの執務室に行くと丁度ラステルも呼ばれて来た所だった。アリアとマリウスはソファに座り、話していた。

「スターク、よく帰ってきたな。はぁ…本当、どうなるかと思ったよ」

 マリウスはホッとした表情でそう言った。

「すみません、ご心配をおかけして」

「カインから聞いてたよ。お前、男娼にされそうだったって?」

 マリウスは笑いながらからかうとスタークはカインをジロっと睨む。

「ハハ。まぁ…今回はアリアのお手柄だったな。他国の王族や貴族を殺さず、一国を救ったんだから」

「カインったら、私がサンドラにクソババアって言ったのもマリウス団長に報告してるんだから」

「クソババア…こりゃまた…」

 ラステルが苦笑する。

「そうだ、ラステルさん。アリアと帰って来る途中で竜を助けたんです」

「え!? 竜!?」

 カインが真っ先に食いついた。

「ほう…そりゃまた珍しい」

「銀色で…アリアみたいな竜でした。まだ子供でしたが…。なんか魔法陣みたいなのを出したので契約魔法かなと思い、俺の魔法陣も出したんですが」

「まさか、契約したのか?」

 マリウスは驚き、カインはワクワクした目でスタークを見ている。

「これなんですけど…」

 スタークはそう言って竜と交わした魔法陣を出した。

「これは…」

 ラステルは魔法陣を見つめる。

「あぁ、問題ない。懐かれたな。聖獣遣いが結ぶ契約みたいなもんだ。召喚すれば出てくることもあるし、出てこないこともある。竜は気まぐれだからな」

「召喚した場合、どこから来るんですか?」

「聖獣や魔獣は基本、平行時空の世界に住んでるんだ。私らが住んでいるこの世界とは違う時空の生き物なんだ。魔物もそう。本来なら交わることはないが、時空のねじれや磁場の狂いで時空にねじれができ、干渉する。聖獣でも知能や魔力が高いと自分の意思で時空を行き来することができるらしい」

「だから消えたのね」

「ス…スターク、竜を召喚して!」

 カインがスタークの肩を掴んだ。

「ここで?」

「ここは狭いわ。」

「じゃあ、屋上は?」

「いいけど…」

「召喚される竜は見たことないな。俺も見てみたい」

 マリウスはそう言って立ち上がった。いつになく、乗り気だ。

「いや、来るかどうかは分かりませんが…」

「…ラステルさん、竜は何を食べるのかしら」

「竜によるんじゃないかな。私が昔、プルディルで見た竜は果物を好んで食べていたが…」

「プルディル!竜が馬の代わりに人を乗せてるんですよね!?」

「ああ、あそこの翼竜はあまり魔力はなく空を飛ぶだけだそうだ。時空は行き来しない、まぁ、普通にこっちの生き物だ」

「魔竜は人間を襲うし、魔物を食う竜もいると聞いたことがある」

「神秘的ですね。じゃあ、屋上でやってみましょうか」


 五人は建物の屋上に行った。

 スタークは竜と交わした契約魔法陣を出し、召喚の呪文を唱えた。

「!」

 空間が歪み、銀色の竜が現れた。見たことのない竜にカインは釘付けになった。

「案外すんなりと召喚されたな…」

「…うわぁ、すごい!めちゃくちゃキレイだ!」

「すごいな、確かに…こんな竜は見たことがない」

「ああ、私も初めて見る竜だ」

 スタークは竜に近寄り手を差し出すと竜はスタークの手に顔を擦り付ける。

「なんか…アリアみたいだ」

「ちょ、カイン、人前で私はあんなこと…」

「見た目のことだよ。…人前じゃなきゃしてるの?」

 カインはニヤリと笑う。アリアは赤くなり、バシッとカインを叩く。

「アナスタシア…」

 スタークは竜に向かって言った。

「君の名前はアナスタシアだ」

 スタークの言葉を理解できてるのか分からないが、アナスタシアは目を細め、グルグルと猫のように気持ち良さそうに唸り始めた。

「僕も触りたい…」

 カインはそう言ってアナスタシアの頭を撫でた。

「…スタークって、竜にもモテるんだね」

「ほんと、お前のたらしも節操ないな、スターク」

 マリウスもそう言ってアナスタシアを撫でる。

「…?」

「どうしたんです?マリウス団長」

「いや…別に」

 マリウスは笑って誤魔化すようにアナスタシアを撫でた。

「これ、食べるかしら」

 アリアは食堂から慌てて持ってきたリンゴとオレンジをアナスタシアに差し出した。

「ん、食べてる。…可愛い」

 アリアがリンゴを食べさせている姿を見てスタークとカインは顔を見合わせ、笑った。

「竜の言葉が分かればいいのに。キャロライン、そう言う魔道具作れないかしら」

「さすがに…」 

「でも…なんとなく気持ちは通じる気はするな」

「うん、この子、遊びたそうだ」

「…うん、そんな気がする」

「仕事が終わったら、レナルドの森に遊びに行こうか」

 カインの言葉にスタークもアリアも頷いた。


「いいな、若さとは」

 ラステルが微笑ましくそう言うとマリウスが三人を見ながらラステルに言った。

「あの竜…魔力鑑定してみたんですが、人間の言葉とは違う記号みたいなのが出て、さっぱり解読できませんでした。ただ…」

 マリウスはそう言ってアナスタシアを触った左手をみつめた。誰にも言ってなかったが、左手の薬指と小指が動かなかった。カラパイトでの魔物との闘いの時からだ。動かないが、右利きだし、特に支障はないと諦めていた。

「私達が持ってる魔力とはなんとなく違う魔力を感じました」

「かもしれんな。…どちらにしても、引き寄せるんだよ、あのお姫様は」

「?」

 ラステルの言葉の意味は分からなかったが、マリウスは動くようになった指を見つめながら微笑ましく三人を見ていた。

 












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