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奴隷の呪いと  作者:


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83/103

83. 旅路 2

 髪を撫でる心地良い大きな手にアリアは目を覚ました。

「…おはよう、アリア」

 スタークはベッドに座り、アリアの寝起きの顔を見て微笑んだ。

「ん…おはよう…スターク」

 起き上がろうとしたが、下着も何も着けてないことを思い出し、シーツで胸を隠した。

「身体、痛くない?」

 スタークは上半身裸のまま、アリアに水を汲み、渡す。

「あリがとう…身体…?うん、大丈夫」

 朝日が窓から入り、アリアの白い肌と銀髪がキラキラして眩しい。

「…キレイだよ、アリア」

 スタークは思わずそう言ってアリアにキスした。スタークの幸せそうな笑みにアリアも胸が一杯になり、スタークの首に手を回した。

 唇を外し、見つめ合い、スタークはアリアの背中を優しく撫でた。

「…ずっと触れていたいけど、そう言うわけにはいかないな」

 アリアもスタークの背中を撫でる。二人の背中には全く同じ奴隷紋が刻まれている。

「お揃いだね…」

「うん…」

 二人にはまだやらなければならないことがある。

「…さぁ、着替えて食事をしたら出発しよう」

「ええ。お腹空いちゃった。こんな小さなベッドの上でしか動いてないのに、お腹ってすくのね」

 あっけらかんとそんなことを言うアリアにスタークは苦笑しながら服を渡した。

「お腹はすいてるけど、アリアを補給できたから魔力も体力も満杯だ。今の俺なら大陸ごと破壊できそう」

「フフ…じゃあ二人で世界征服しちゃう?」

「統治するのが面倒臭いな」

「それ」

「世界なんていらないよ、アリアがいればそれでいい」

「…私も」

 アリアは微笑んでそう言うと服を着て変化の魔法で髪を黒くした。


「おはよう、眠れたかい?」

 おかみの挨拶にアリアは思わず顔を真っ赤にした。ほぼ寝てない。

「はい、お陰様で」

 スタークは笑顔でそう言って、赤くなったアリアに耳打ちした。

「大丈夫だよ、ちゃんと防音魔法かけといたから」

「…良かった。あれ、聞かれてたら恥ずかしいわ」

「アリアの声、でかいからね」

「! もう、スターク!次は絶対声出さないんだから」

「嘘だよ。次もちゃんと聞かせてね」

 スタークにからかわれ、アリアはちょっと拗ねて食堂に行った。


「ここからミズさんのいるサンティアナの街までは馬で四時間程かな。昼過ぎには着く」

 二人は馬に乗り、また旅を始めた。

「サンティアナからラスタまでは?」

「王都までは馬で一日。明日の昼すぎには王都に帰れる」

「王都に帰ったら竜の契約を調べなきゃね」

「そうだね。あの竜はまだ子供だったけどどのくらい大きくなるんだろう」

「そうだ、竜…名前、付けないの?」

「ん、アリア」

「ダメ」

「じゃあ、何がいい?」

「うーん、、猫みたいにグルグル言ってたから、グルルとか?」

「アリアって…ネーミングセンスないんだね…」

「失礼ね」

「そうだなぁ。アナ…」

「?」

「アナスタシアがいい」

「!」

 アリアはドキッとしてスタークを見た。その名前はアリアが捨てたダリアのミドルネームだ。

「再生とか、復活の女神だ」

「…」

「どうかした?」

「え、いえ、、すてきな名前ね。でも女の子の名前だわ?」

「だって、あの竜は女の子だ」

「え...なんで分かるの?」

「なんとなく。アリアに似て可愛かったし」

「それ、褒めてる?」

「うん。また会ったら、アナスタシアって呼んでみよう」

「女の子の竜だから、スタークに懐いたのかしら」

「嫉妬する?」

「しないわ。私の方が手なづけて、背中に乗せてもらうようにするから。竜って何食べるのか、ラステルさんに聞かなくちゃ」

「アリアを手なづけるのはスイーツだけどね」

「スタークはイチゴのタルトでしょ?」

「もうさすがにイチゴのタルトは卒業したよ」

「え…じゃあ、今スタークの大好物は何?」

「分かってるくせに」

 スタークはニヤリと笑う。

「…ミートパイ?」

「アリア」

 スタークの言葉にアリアは赤くなり、照れるのを誤魔化して「もうっ」と怒ったフリをした。

  


「ミズさん、ただいま!」

 変化魔法を解き、二人はミズの診療所を訪ねた。

「よく戻って来たね、アリア…。スターク、久しぶり」

「色々と協力して貰ってあリがとうございます」

「ミズさんのお陰ですべて作戦は上手く行ったわ。」

「カインから聞いたよ。サンドラは処刑されたのかい?」

「ええ、昨日。マンダリは同盟国に加盟するみたい」

「ジオルグもネリが倒れれば、いずれラスタや同盟国に吸収されるだろうね」

「…ジオルグはなくなってしまうのかしら」

 申し訳なさそうなアリアの表情にミズは首を横に振る。

「国とは名前ではなく、土地でもなく、人だ。正当なジオルグの王は昔そう言ってたよ」

「…」

「たとえ国の名がなくなっても、それは歴史の一部になるだけだ」

 ミズはそう言って預かっていたアリアの騎士の服と剣、そして一番大事なネックレスを出した。

「…このネックレスはスタークがアリアに贈ったものだろ?」

「ええ、そうよ。なんで分かったの?」

 ミズはスタークを見てニヤリと笑う。

「いや、色々と加護がかかっているからね」

 スタークは気まずそうに咳払いをした。

「?」

 ミズはアリアの首にネックレスを付けてやり、愛おしそうに銀色の髪を撫でた。

「…必ず…幸せでいておくれ」

「…あリがとう」

 アリアはミズにハグをした。その様子を見ながらスタークは不思議に感じた。アリアがミズと会うのは二回目のはずだ。

「ミズさん、馬を一頭、貰ってくれませんか?」

「ありがたいが、いいのかい?」

「俺達は一頭いれば大丈夫ですから」

「あリがとう、助かるよ」

「…必ずネリを倒すわ」

「信じてるよ」

「ではまた、会いに来ますね」

 スタークがそう言うとミズは冗談っぽく笑って言った。

「王子様、姫様を頼んだよ?」

 その言葉にスタークは全てを理解したかのように微笑んだ。

「任せてください」

 そう言ってスタークはアリアを先に馬に乗せ、その後ろに跨った。

「また必ず来るわ!」

「楽しみに待ってるよ!」

 ミズはそう言って二人を見送った。スタークの温もりを背中に感じながらアリアはグッと涙をこらえた。

 自分の生まれた国をどうすることもできない無力さと申し訳なさが胸に押しかかる。

 スタークは何も言わず、アリアを優しく抱いていた。

 


 ハーシックの森を抜け、ラスタとの国境に着いた。

 結界をくぐり、ラスタの地に足を着ける。

「今夜はここで宿をとろうか」

「ええ。…部屋は二つ?」

 アリアがわざと尋ねるとスタークはクスッと笑ってアリアの手を握った。

「部屋は一つだ」


 宿を見つけ、二人は食事をする。スタークは誰かが置いていった今朝の新聞を手に取る。

「…マンダリのことが載ってる。サンドラが乱心で貴族を殺し、死刑に処された、だって」

「よかった、私達のことは伏せてくれたのね」

「ああ。…!」

「どうしたの?」

「同盟国のコストリアの王子が拐われたって…属性が霧だと…」

「! それって…ジゼルの?」

「…だろうな。ネリとジゼルの仕業なら、霧の魔力も手に入れたと言うことか?」

「…もし、ネリが無限魔法を手に入れたら大変な事になるわ」

「こっちも何か手を考えなきゃいけない」

「手って?」

「致命傷を負わせてもジゼルの魔力でネリの身体は再生する。それにもし、ネリを殺したとしてもその寸前でジゼルは逃げてしまうんだ」

「…昔私がジゼルを殺しかけた時も逃げられたわ」

「ああ。ヨルンの時もだ。黒い煙のような姿になった」

「…気体を閉じ込める何か方法を考えなきゃ。ゾーンだと気体は通すわ」

「防御膜は気体も通さないが、それだと攻撃もできない」

「私の気の魔法でどうにかできないかしら」

「そうだね。…王都に戻ったら調べよう」

「ええ。やることがいっぱいね」

「ああ」

「…皆スタークを心配してたから、早く皆に会いたいけど」

「うん」

「…この旅が終わるのも少しさみしいわ」

「…そうだね」

 スタークはそう呟いてアリアの手にキスをした。



「ふぅ…着いちゃった」

「着いたね…」

 馬はスタークの屋敷に着いた。馬上で騎士の制服に身を包んだアリアは振り返り、スタークの顔を見る。 

「…無事に帰ってこれてよかった」

「旅が終わらなければいいのにって思ってたけど…」

「…マリウス団長に怒られちゃうわ」

 二人は顔を見合わせ、笑う。

「アリア…あリがとう。助けに来てくれて」

「…何度もお礼は聞いたわ。…変なの。また後で会えるのに」

「うん…離したくない」

 スタークはアリアをさらに強く抱きしめた。アリアも同じ気持ちなのが伝わって来る。

「私はこのまま砦に行くわ」

「俺も着替えたらすぐ行くよ」

 スタークはそう言ってキスをすると馬を降りた。

「じゃあ、後で」

「ええ」

 アリアは屋敷に入って行くスタークを見送ると馬を歩かせた。










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