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奴隷の呪いと  作者:


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82. 我儘で貪欲

 宿に帰って来るとすっかり日も落ちていた。食堂は酒場に変わり、にぎわい始めている。

「はぁ…治癒力使うとお腹空いちゃうのよね」

「ああ、分かる。キュイの父親もだけど、あの竜のケガは酷かったから、疲れただろ?」

「そうね。グッと魔力が減った感じがしたわ。でもよかった、竜に会えるなんて」

「うん。…ちょっと馬を繋いでくるから先に入ってていいよ」

「ええ、じゃあ席をとっておくわ」

 アリアはそう言って店に入って行った。スタークは馬を繋ぎ、盗難防止の魔法をかけた。


 アリアが他の客に絡まれてないか心配になり、スタークは急いで店に入ろうとした。

「ねぇ、お兄さん。今夜の宿は決まってるの?」

 顔立ちの綺麗な紫色のドレスを着た女がスタークの服を掴んだ。胸の谷間を強調したドレス、色っぽい瞳と香水にスタークは娼婦だと気付き、首を横に振った。

「あぁ…悪いが、恋人と来てるから」

「あら…私の方が満足させてあげれるわ。せっかくの旅路…たまには他のワインを飲むのもいいんじゃない?」

 スタークは微笑み、断ろうとした時だった。

「スターク、エールって飲んだことある?」

 アリアが店の中からわざわざ呼びに来た。

「ん? エール? あるけどなんで?」

 突拍子もない会話にスタークがアリアの顔を見ると、アリアは娼婦の豊満な胸の谷間を見て少し焦ったようにスタークの手をパッと握った。

「あ…と、あの、、隣の男の人がワインもいいけど、エールも美味しいって、勧めてくれて…」

 スタークは握って来た手をギュッと握り返し、微笑んで娼婦に言った。

「いつものワインが良い。他のはいらないんだ」

 アリアは娼婦とスタークの会話の意味が分からず、スタークを見たが、スタークはアリアを見て言った。 

「どいつ?」

「何が?」

「アリアにエールを勧めてきた奴」

「ん? あの人達よ。美味しい料理、色々教えてくれて…」

 アリアはそう言って、三人で座っている職人のような雰囲気の老人達を指差した。スタークは少しホッとしてアリアと席に着いた。


「おぉ~、美男美女だな。お嬢ちゃんがエールを飲んだことないって言ってたから勧めてたんだ」

 隣のテーブルの老人達はほろ酔いで顔を赤くしながらスタークに話しかけた。

「そうなんですね。この辺ではエールが有名なんですか?」

「ああ、ブドウはジオルグの北でしか採れないが、ここらへんで麦はよく育つ。香りも良く、有名なんだよ」

「じゃあ、飲んでみようかな。アリアはサングリアにして、俺のを味見してからにしたら?」

「そうする。このグラタンが美味しいんだって。あと、このお肉料理もここの名物だって」

「味は保証するよ!二人とも若いんだからたくさん食べてたくさん飲みな!」

「あリがとうございます」

 遠いテーブルには昼間の冒険者達もいる。チラチラとこっちを気にはしていたが、二人は気にせず料理を頼み、エールとサングリアで乾杯した。

「ん…やっぱりサングリア、美味しい」

「へぇ…ラスタのより美味いな、このエール」

「そうなの?よく、ペドロさん達は飲んでるわよね?」

「ああ、飲んでみる?」

「うん。…ん、苦いわ。でも、シュワシュワしてるのね」

「まぁ、エールだからね」

「私はサングリアでいいわ。スタークと二人きりでお酒を飲むのは初めてよね」

「そう言われれば。ま、毎晩騎士団で飲んでるからね」

「私はたまによ。だって、お母様達が待ってるんだもの」

「その方がいい。皆、酒癖悪いから…ま、アリアもか」

「あの時は初めて飲んだから…。ん…このグラタン、美味しい」

「本当だ。ジオルグは海もあるから、食材が豊富なんだな」

「そうね。この国の人達も…幸せになってほしいな」

 アリアはそうポツリと呟いた。


 食事を済ませ、二人、二階の一人部屋に入った。

「アリア、水はここに置いておくよ。明日朝、迎えに来るから」

「…どういうこと?」

「俺は外で寝るから大丈夫。気にせずゆっくり眠って」

 スタークの言葉にアリアはムッとしてスタークの胸ぐらを掴んだ。

「どういうつもり?」

「…アリア?」

 アリアが怒っている。サングリアは一杯しか飲んでいない。

「…さっきの娼婦の人と約束したの?」

「娼婦…?あぁ、さっきの?…するわけないだろ」

「…じゃあ、なんで出ていくのよ?」

 アリアの質問にスタークは、ハァと大きいため息を吐いた。

「…一緒に寝れるわけないだろ、このせまい部屋に」

「昨日だってゾーンの中で寝たわ」

「…アリアは分かってない」

「分かってるわよ」

「分かってない。俺、男だよ?」

「分かってるってば!」

 アリアが珍しく怒って声を荒げた。スタークは少し驚いたが、アリアの目が少し潤んだように見えた。

 スタークはもう一度息をゆっくり吐き、諭すように言った。

「…心配いらない。娼婦なんか抱いたりしないよ。でも…アリアとこの部屋に泊まったら我慢できなくなる。…俺はいつもアリアを抱きたいって思ってるから」

「…分かってるわよ、そんなこと。…スタークこそ、分かってない」

 アリアは少し潤んだ瞳を伏せ、掠れた声で言った。

「私だって…スタークにもっと…キスしたいし…もっと触ってほしいし…もっと…」

 アリアの言葉と胸ぐらを掴んだ震えた手を見てスタークの胸が熱くなった。

「あぁ…ごめん…」

 スタークはそう言ってアリアを抱きしめた。

 アリアの胸から伝わる鼓動にスタークの鼓動が合わさる感じがした。アリアの唇にキスをし、舌を絡める。サングリアの甘い味がした。

「…酔ってない?」

 唇を外し、スタークはアリアの目を見た。恥ずかしそうに目をそらし、アリアは口を開いた。

「酔ってないわよ…」

「酔ってても…もう逃さないけど。…変化を解いて」

「うん」

 二人は変化魔法を解き、いつもの姿に戻った。

 もう一度深くキスをしながらベッドに優しく押し倒し、上着を脱いで部屋の灯りを消した。



 スタークはすっぽりと自分の腕の中に収まるアリアを抱きしめながら髪を撫でる。

 胸が一杯で何故か全身に鳥肌が立つくらい、気持ちが高揚していた。

「ハァ…」

 アリアが大きいため息を吐き、スタークをトロンとした目で見た。

「…こんなの聞いてないわ」

 掠れた声でアリアが呟いた。スタークはドキッとしてアリアの顔を見た。

「ごめん…嫌だった?」

「…ちがうの。マーガレットさん達が言ってたの。初めての時は、とにかく痛くて、相手の首を絞めてやろうかと思うくらい、痛かったって。ユーラスさんは痛くて相手のお腹を蹴り飛ばしたって…」

 アリアの言葉にスタークがギョッとする。

「え…」

「なのに…なんか…その…初めてなのに、めちゃくちゃ気持ち良かったのはなんで?」

 アリアはそう言ってスタークの腕の中で両手で顔を隠した。耳まで赤い。

「今まだ…フワフワしてて…なんか…私って…やらしいのかな」

「あぁ…もうマジで…」

 スタークはアリアをギュッと抱き寄せる。

「大丈夫。俺の方がアリアのその何倍もやらしいから。アリアをもっとめちゃくちゃにしてやりたくなる」

「…スタークは、その…さっきのが本当に初めて?」

「…ん、妄想の中では何回もいや、数え切れないくらいアリアを抱いたけど」

「…」

「言っただろ? 俺の方がやらしいって」

「でも…初めてキスした後、あんまりしてこなかったし…」

「歯止めが効かなくなるから」

 スタークはそう言うとアリアの額にキスをした。

「…最初は笑顔が見たかったんだ。初めて会った時泣かせちゃったから。次はアリアのそばにいたいと思った。そうしたらもっと貪欲になった。アリアに触れたいって。俺以外の男に触らせたくないし、アリア以外の女はいらない。キスしても…今こうやってアリアを抱いても…どんどん自分が我儘で貪欲になっていく」

 スタークの言葉にアリアは顔を赤くする。

「重たいよね?俺の気持ち。自分でも呆れる…」

 その言葉にアリアはスタークの頬に両手を添え、微笑んだ。

「重たくない。多分…私も同じだもの。このまま…この世にスタークと二人だけでもいいって思っちゃうくらい…」

 その言葉にスタークはグッと来てアリアを強く抱きしめた。

「そんな可愛いいとまた抱きたくなる。早く寝せてあげたいのに」

「…スタークの…好きにして」

「ハァ…アリアって、悪魔だ」

 スタークはそう言うと再びアリアにキスをした。







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