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奴隷の呪いと  作者:


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77. 王の間

 王の間に集まったのは狩りに参加した貴族と捕まらず、生き残った五人の奴隷達だった。四人の騎士に囲まれ、五人はサンドラの前に跪かされた。


「今回は随分と運の良い奴隷がいたわね。…汚い女奴隷もいるのね」

 サンドラはそう言ってマルレとテレシアを汚い者を見るように一瞥した。

__うわ…これがサンドラ? スケスケの服、奴隷より恥ずかしい格好してるわ。こいつがスタークの背中を傷つけたの?

 マルレは自分の前に跪くスタークの背中の鞭の痕に怒りが込み上げる。肉がえぐれ、化膿している。


「…生き残ったんだ、さっさと首輪を外してくれ」

 身体のデカい奴隷ナジルがそう言うとサンドラは宰相を見た。

「…残念だな。確かに生き残ったが、今回、奴隷の分際で尊い貴族を殺した奴がいる。貴族を殺すと重罪だ」

 宰相は意地悪そうな笑みを浮かべ、そう言った。

「なんだと!? 俺は貴族は殺してねぇ!」

「ああ、だけどお前らの誰が貴族を殺したかなんて証明できないだろう? だから、今回は全員で連帯責任を取ってもらおう。なに…また奴隷に戻っても、狩りに出場してまた生き残ればいいだけだ」

「ふざけるな!」

 ナジルがそう言ってサンドラに掴みかかろうとした時、ナジルの首輪が光った。

「うっ!?」

 ナジルの首から血が吹き出し、首がゴロンと音を立て、床に落ちた。

「!?」

 その光景にレオとテレシアは震え、貴族達は「おぉ…」と歓声に近い声をあげた。

 ナジルの身体は床に倒れ、首輪が転がる。

「お望み通り…外してあげたわよ」

 涼しい顔でサンドラは転がった首輪を蹴り、自分を軽蔑する目で睨むスタークの前に立った。


「私を抱きに戻ったのでしょう? 思ったより…奴隷のくせに優秀だったみたいね。貴族と騎士を殺すなんて」

「殺しちゃいけないなんてルールは聞いてない」

「…あら、頼もしいこと。でも、まだ躾ができていないようね。まぁ…いいわ。デクロニールでも打てば、気も変わるはずよ」

「サンドラ様、こう言うプライドが高い奴は…」

 男娼のアレンが、なびかないスタークの姿を見てサンドラに何やら耳打ちしている。嫌な予感しかしない。

「いいわね…それ」

 サンドラはいやらしい笑みを浮かべ騎士達にスタークを立たせた。 

「褒美をあげるわ。…この公衆の面前で…」

 サンドラがそう言うとアレンはスタークの前に立ち、ニヤリと笑って人差し指で胸から腹をなぞり、ズボンを下ろそうとした。

「…ッ」

 気持ち悪くて歪むスタークの顔に貴族達も楽しそうにニヤニヤとして注目している。

「…ちょっと!いい加減にしなさいよ!」

 マルレに扮したアリアが立ち上がり、アレンの髪を後ろに引っ張ってなぎ倒した。

「な! 貴様!奴隷の分際で!」

 騎士達がマルレを取り押さえようと触れようとした。

 スタークが後ろから手錠をした腕をマルレの頭の上から潜らせ、抱き寄せた。

 上半身裸の二人の肌が重なり、マルレは顔を真っ赤にした。

 心臓がバクバクしているが、スタークの鼓動も背中から体温と共に伝わって来る。

「…近いわ、スターク。…もしかして、気付いてた?」

 スタークは愛おしそうにアリアの身体を抱きしめ、アリアの匂いを吸い込む。

「…当たり前だろ?」

 スタークはそう言ってアリアの首にキスをした。

「ヒャン!」

「ごめん、思わず…」

 スタークはそう言って笑った。

「な、なんなの!?この汚い女は!?」

「サンドラ!僕が殺してもいい!?」

 アレンは激昂し、腰に巻いていた鞭を外し、サンドラに尋ねた。

「ええ、いいわよ。こんな汚い女に触るなんて…」

 憤慨するサンドラとアレンより、スタークはアリアに夢中だ。

「ス、スターク、戦えないわ。ちょっと離れるわよ」

「嫌だ。アリアならこのままでも戦えるだろ?」

「無茶言わないでよ、心臓が爆発しそうなんだから」

「…仕方ないな」

 スタークはそう言って両手を上げてアリアを解放した。

「この鞭男がスタークの背中を傷付けたの?」

「ん、ああ、そうだったな、そう言えば」

「…なんでこの人達、恥ずかしげもなく、スケスケの服着てるの?」

「まぁ…趣味じゃない?」

「趣味悪っ…」

 アリアはそう言って人差し指を唇に当て、フッと息を吹きかけた。

「!?」

 変化の魔法が解け、銀髪にハチミツ色の瞳に変わり、全員が息を呑んだ。

「アリア! なんで解くんだよ!?」

 スタークが焦って横にいた騎士のマントを剥ぎ取り、アリアの身体を隠すように包んだ。

 アレンとサンドラは見たことのない美しいアリアに呆然としている。

「スターク、、、離してくれないと」

「アリアの顔でその格好は誰にも見せたくない」

「…もう、我儘だわ」

 アリアはそう言ってマントでしっかりと身体を隠し、小さくしていた剣を元の大きさに戻した。

「美しい…」

 アレンはそう呟き、アリアに跪いた。

「アレン!」

 サンドラがすごい形相で叫ぶ。

「…あぁ、まるで月の女神のようだ。僕があなたを喜ばせて見せましょう」

 そう言ってアリアに近付こうとした。アリアが軽く剣を振り、アレンの左頬が切れ、血が出た。

「!?」

「キャア! アレンッ!」

「よ、よくも…僕の顔に傷をつけたな!?」

 立ち上がろうとするアレンの顔をアリアは蹴り飛ばす。

「悪いけど…あなたは好みじゃないわ。喜ばせる?笑わせないで、変態」

 アリアはアレンを重力魔法で床に這いつくばらせた。そして背中に剣で大きくバツの字を描いて斬りつける。

「ああぁぁ!!」

 慌ててアリアに斬りかかろうとする騎士達にアリアは水縄で身体を縛り付ける。

「くっ…」

「ああ、アレン!可哀想に…」

 背中を傷つけらたアレンにサンドラは駆け寄り、アリアを睨んだ。アリアはサンドラを見下ろした。

「…スケスケの服で恥ずかしくないの?そのハリのないオッパイが見えちゃうわよ?…ク・ソ・バ・バ・ア。」

 アリアはそう言ってニヤリと笑った。その場の空気が凍りつき、真っ赤になったサンドラと真っ青になった貴族達は言葉を失った。

「防御」

 アリアはスタークとレオとテレシアを防御膜中に入れた。

 サンドラの身体から黒い煙のようなものが出てくる。アリアは自分にも防御膜を張り、アレンにすがりついているサンドラに剣を向けた。

「!?」

「う…サ、サンドラ…!」

 怒りで魔力が暴走し、サンドラの身体から毒が気体になり、にじみ出ている。

「ゴフッ…く、苦しい…サンドラ、や、やめて…」

 アレンが血を吐き、サンドラの腕を掴んだ。アレンの顔が土色に変わり、シワシワになっていく。

「…キャア!触らないで!」

 自分の毒が滲み出ていることに気付かず、サンドラは醜くなったアレンを突き飛ばした。

 バタバタと騎士達が血を噴いて倒れて行く。貴族達は恐れおののき、部屋から逃げようとした。

 王の間の入り口にいた騎士の格好をしたカインがオニキス王子と防御膜を張り、風魔法で空気を遮断した。

「た、助けてくれ! た、頼む!」

 貴族達が押し寄せて来たが、サンドラから出る黒い煙が追いかけてくるように広がり、バタバタと倒れていく。防御膜を張る貴族もいたが、張れない貴族が自分もその中に入ろうとしがみつき、崩され、毒にやられて行く。

 サンドラは血を吐いて倒れて行く騎士や貴族が自分の発する毒のせいだとやっと気付き、震えだした。

「ゾーン」

 アリアはサンドラを水魔法で縛り、ゾーンに閉じ込めた。

 貴族や騎士達は全員、息絶えた。

「…さてと、これかしら」

 アリアは防御膜を張ったまま、転がっている宰相が腰に付けていた鍵を奪う。

「カイン、空気の入れ替えしなくちゃ」

 アリアは窓を開け、カインを見た。カインは風で一気に毒を外に飛ばすと防御膜を解いた。

「…スターク」

 アリアはゾーンを解除し、スタークの首輪と手錠を鍵で外した。

「アリア…」

「たまには…助けられるのも悪くないでしょ?」

 その笑顔にスタークの胸が熱くなる。

「あリがとう…」

 スタークはそう言うとアリアを抱きしめた。

「二人とも、いちゃつくのは終わってからにしてよね」

 カインに言われ、二人とも我に返る。アリアは少し照れながらレオとテレシアの首輪と手錠を外し、テレシアをオニキスの前に連れて行った。


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