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奴隷の呪いと  作者:


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71. 疼き

 新月の魔物討伐の日が来た。キリアは四名の部下を連れ、ユリアの屋敷の護衛に回る。

 スタークの赤軍は魔物討伐、非番のはずの白軍の隊長、カインはアリアと共に青軍の助っ人で街の見回りに参加する。


「大丈夫? 無理してない?」

 カインはアリアの顔を覗く。

「大丈夫よ。この魔宝石とスタークのお陰で、ほとんど吐き気はないの。背中の疼きも前の半分だわ」

「何かあったら、これで連絡して。駆け付けるから」

 カインはアリアの耳に付けている魔道具のイヤリングを触った。

「うん、カインもね。スタークは…大丈夫かしら。奴隷紋を転移して初めての新月よ?」

「サンクニルの森は王都から近いから、何かあればすぐに僕が瞬間移動で駆け付ける」

「私も今度また挑戦してみるわ、瞬間移動」

「スタークができるから、いらないんじゃない?」

「そう言う意味じゃなくて…。もう、からかってるでしょ」

「ハハ。今日のバディは新人のケルンだろ?なんでもアリアが片付けるんじゃなく、ちゃんと育ててやれよ」

「分かってるわ。でも、私、ケルンにあんまり好かれてないのよね」

「まぁ、よくあったよ、最初の頃はそう言うの。男はプライド高いから、なかなかね。ま、気にしなくていいよ。騎士は実力社会だ。相手の強さを認めるのも騎士道だし」

 カインはそう言って片割れのイヤリングを付けた。

「…カインが珍しく頼もしいアドバイスしてくれた」

「珍しくは失礼だな」

「じゃあ、また後でね」

 アリアはそう言って、向こうでイライラしながらアリアを待っているケルンの元に行った。


「…」

 特に会話もなく、アリアはケルンと街なかを歩く。

 ケルンは魔法学校には行かず、騎士訓練学校出身のアリアと同じ年の新人である。騎士学校は首席で卒業したケルンからすると、アリアは学生時代から騎士団の魔物討伐に参加していたからと言う理由で、騎士団に入団したすぐに青軍の副隊長に任命されたのが納得行かなかった。

 実力と言うより、あの魔聖騎士のジェイドの孫で、カイン隊長の妹と言うことで取り上げられただけだと思っている。それなのに、他の騎士達はアリアに対し、疎むどころか、妹のように可愛がっている。

 ケルンはなるべくアリアを避けていたが、今月はアリアとバディを組まされ、ため息が出る。


 雲もないが、月もない。

 闇が広がるとアリアの背中の奴隷紋が少し疼き出した。

__スタークもこの疼きを感じてるのかな。

 そう思うとアリアは申し訳ない気持ちと、一人ではないという心強さがこみ上げてくる。

「! ケルン、あそこに魔獣がいるわ、モンキルみたい」

 人気のない大きな広場に出ると、時計台の塔の上に猿のような魔獣、モンキルがいる。

「…わかってる」

 ケルンは不機嫌そうにその魔獣を狙い、火弾を放った。魔獣は火だるまになり、塔から転げ落ちてくる。

__もう、雑だなぁ…。

 アリアはそう思いながら、周りに火が燃え移らないよう、その火達磨を水魔法で消した。

「! 副隊長!」

 ケルンに呼ばれ、振り向くとモンキルより身体が三倍もある、人と同じ大きさの魔獣が八体もいる。

「わぉ…大きいわね。八体、一人で行ける?」

 アリアの言葉にケルンは耳を疑う。

「!」

__俺にだけ仕事させようとしてるな、こいつ…。

 ケルンは意地になり、剣を抜いた。

「一人で行ける」

「じゃあ、どうぞ」

 アリアは高みの見物とばかりに噴水の縁に腰掛け、観ている。

 ケルンは必死に剣と火魔法で巨大モンキルを倒していく。

「くっそー!」

 がむしゃらに戦い、ケルンはなんとか八体、モンキルを倒すと肩で息をしながら座り込んだ。

「ご苦労様。…と言いたいところだけど、まだいるみたい」

 アリアはそう言って暗闇の中からこちらを観ているモンキルの数を気配で数えた。

「…十四体いるわ」

「う…嘘だろ!? 応援を…」

「大丈夫よ。あとは私がやる」

「ば、バカ言うな!できるわけ…」

 アリアは地面に魔法陣を描き、自分とケルン以外に重力をかけた。

『ズン…』

 モンキルの身体が重さに耐えれず、地面に這いつくばる。アリアは水魔法で噴水から水を呼び込んで竜巻を起こし、十四体一気にモンキルを飲み込み、溺死させた。

「…」

 十四体の巨体モンキルに二分もかかっていない。

 アリアはケルンに右手を差し出した。

「なんでこんなに大量発生してるんだろう。さ、立ち上がって」

 アリアは息一つ乱れてはいない。小さいけれど、豆がつぶれ、固くなったアリアの掌を握り、ケルンは立ち上がった。

『騎士団は実力主義だ』

 マリウス団長が入団した時に言った言葉だ。そうだ、だから騎士を目指した。貧しい平民だった自分が上を目指せる場所だから選んだ。

「行きましょう」

 アリアの華奢な背中を見つめ、ケルンは駆け足で隣に並び歩き出した。



 ペドロは新人のキケを連れ、サンクニルの森を歩いていた。

「大体、なんで俺達と同期で新人のアリア・ハルクが青軍の副隊長なんすかね。ぶっちゃけ、どう思います? ペドロ副隊長」

「ん?あぁ? 別に」

 キケはさっきからずっと軽口を叩きながら歩いている。月明かりのないサンクニルの森は真っ暗で瘴気も漂っている。ペドロ達は魔法で自分達の周りを明るく灯し、森の中に進んで行く。


「そもそもペドロ副隊長が青軍の副隊長だったんでしょ? まぁ…スターク隊長は分かるんすよね、カラパイトで活躍してたって聞くし、魔力もすごい。同期って言っても俺らより二個上だし?」

「なんだ、アリアが副隊長なのが不満か?」

「そりゃ、学生時代から騎士団の稽古や魔物狩りに参加してたって言うのは大きいですけど、俺達、騎士学校の生徒だってたまには参加してたし」

「ありゃ、お遊びだ。騎士学校の研修で命の危険に晒されちゃ、入団するやつなんていなくなっちまうだろ。アリアやカインが参加してたのはガチな討伐だ」

「美人だし?そりゃいい広告塔ですもんね。あれに憧れて女性騎士が増えるとか?」

「見た目は関係ねぇよ。お前も舐めてると痛い目に遭うぜ?」

 ペドロは昔の自分もキケと同じだったなと思い、フッと笑う。

「アリア・ハルクも確か古代魔法の属性持ってましたよね?」

 キケはそう尋ね、目の前に飛び出た蔦を剣で振り払いながら歩く。

「ああ、重力と気だ」

「俺も持ってるんすよ、属性は土なんすけど、氷属性。あんま強くないから、属性ってほどじゃないですけど」

「氷か…確かに珍しいな。強くなくても、魔力を強化すれば自然と強くなるからな」

「そんなもんすか?」

「普段の生活じゃ使わねぇから成長もないが、こう言う仕事をしてると頻繁に使うからな。だから騎士は年取るほど経験積んで強くなる奴もいる」

「じゃあ、今日は氷の力を使ってみますね」

 キケはそう言って自分達を狙っているつけてきた小さな魔獣を一匹、氷の矢を飛ばして仕留めた。

「使えんじゃん、それ」

「まぁ、これくらいなら」

「じゃあ、あれは?」

 ペドロは前方から来る熊のような魔獣を指差した。

「あれは、水で身体が膨れる。だから、ゾーンに入れて火で蒸発させるか、水分を抜くのが早いが…」

「凍らせて砕くのは?」

「いいかもな」

「やってみます!」

 キケはそう言って魔獣の前に飛び出した。動きがはやく大きな爪と牙で攻めてくるクマに対し、キケは避けながら手から冷気を出すがクマには当たらない。

「これならどうだ!」

 キケは土魔法で土を粘土に変え、魔獣の足をぬかるませて動きを止めた。そして冷気で凍らせていく。

「ふぁ! どうです、ペドロさん、カチコチっすよ!」

「おお、スゲェじゃん」

「あとはこれを…」

 キケはそのクマを爆破した。

「おぉ…粉々。やったな、新しい武器…」

 そう言いかけてペドロは青ざめた。キケの背後の景色が急に歪み、二メートルはある銀髪に浅黒い肌の男が現れた。

「!? ネリ将軍…」

 ペドロは念写画で見たネリ将軍の手配書を思い出した。

『我が力を使う者よ…』

「キケ!後ろだ!逃げろ!」

 キケが驚き、振り向くとネリがキケの頭を鷲掴みにした。キケの身体が宙に浮く。

__ヤバい!

 ペドロは慌ててキケに当たらないようにネリに攻撃するが、全く効かない。

「…フン、氷は氷でも、こりゃ雑魚だ。何の足しにもならねぇぜ、ジゼル」

『…紛らわしい雑魚め』

 ネリの身体から魔物の声がした。ネリはキケを掴む手に力を入れた。

「ゔああああ!」

 握り潰す力にキケが叫ぶ。

「クソ!離せ!」

 ペドロは剣を構え、ネリに向かって風魔法で攻撃を始めた。

「!」

 ネリが怯んだ隙に素早い動きでペドロがキケを奪い返す。

「速いな。…でも、俺ほどじゃない」

「!?」

 気が付いたらネリがすぐ背後にいた。

「弱い者は死ね」

 ネリが二人を爆破しようとした瞬間、ペドロはキケを庇うようにマントで包んだ。爆破はマントに吸収されたが、マントは衝撃でボロボロになった。

「チッ…良いマントだな。じゃあこれでも耐えれるかな?」

 ネリは薄ら笑いを浮かべ、右手に火の玉を持っている。

__マジヤバい。キケだけでも逃がして…

 ペドロは恐怖で動けないキケを自分の背後に突き飛ばし、防御幕を張った。それだけで身を守れるとは思っていない。

「!」

『ドーンッ!』

 ペドロが目を閉じ、死を覚悟した時だった。ネリの身体が吹っ飛んだ。

「スターク隊長!!」

 キケが叫んだ。スタークが剣を抜き、ペドロとキケの前に立っていた。

「大丈夫ですか、ペドロさん」

「ったく、ヒーローは登場もカッコ良いな!」

 ペドロに手を差し伸べ、スタークはネリに雷鎚を落とした。

「またお前か」

『…ネリ、奴から奴隷紋を感じる』

 ネリはジゼルの声にピクリと反応する。

「そりゃ面白ぇ…」

 ネリはスタークに火砲を連続で浴びせる。スタークはそれを避けながらわざとペドロとキケから遠ざかり、反撃する。

「キケを連れて離れて下さい!」

「わかってる!」

 ペドロはキケを連れ、元来た道を戻ろうとするが無数の魔物が立ちはだかる。

「クソ!お前らくらいは楽勝なんだよ!」

 ペドロはそう言って魔物達を蹴散らす。

「キケ!戦え!」

「はい!」

 二人は魔物を相手に戦うが魔物が次から次に生まれて来る。ペドロとキケは必死に応戦していた。


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