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奴隷の呪いと  作者:


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68. 封印

 マリウスの執務室に呼ばれ、物語とジゼル、ネリ将軍の話を聞かされたアリアは少し混乱していた。

 

 ジェイドがもし、アリアの呪いを請け負わなければ、アリアはきっと幼い頃にジゼルに飲み込まれていただろう。

 あの新月の疼きと痛みはジゼルが奴隷紋がある者を探している時のもので、それを魔物に見られるとジゼルに居場所が伝わる。

 また、気の力を使うと居場所を教え、ジゼルへの気の攻撃は自分にも同じダメージが与えられる。

 そして自分が持つ気の魔法は全ての生き物を根絶やしにする威力があること。


 アリアの気の魔法を封印することになった。ジゼルへの気の攻撃がアリアの身体にもダメージを与えることと、万が一、アリアがジゼルに飲み込まれた時のためだ。


「アリア、奴隷紋のことを言うべきだ」

 ラステルはアリアと二人きりになるとそう切り出した。

「気の属性を封じたところで、君の背中に奴隷紋がある限り、その痛みに耐えれなければ意識を失い、ジゼルに飲み込まれてしまう」

「どうしろと?」

「…しばらく身を隠すんだ。スタークとカインに任せて…」

「いつ襲ってくるからわからないのに?身を隠す場所なんてどこにもないわ。ネリは空間移動をしてくる。例え気の属性を封じても、私の魔力をたどって」

「しかし…」

「知ってるでしょ?私の周りには私の呪いを簡単に請け負う人達ばかりよ。絶対に奴隷紋のことはお兄様やスタークには言わないで」

「…」

「お祖父様もラステルさんも心配性ね。私、結構強いのよ?」

 アリアの笑顔にラステルはため息を吐いた。

「…知ってるさ。だからジゼルが狙ってる」

「一番怖いのは…気の属性をあいつに奪われること。背中の痛みなら耐えれるわ。スタークに貰ったネックレスで少しは和らぐし」

 そう言ってアリアはネックレスを見せた。

「…これをスタークが?」

「ええ」

 ラステルはその魔宝石をじっと見つめる。

「…君の恋人はすごいな…」

「こ、恋人じゃないわ! 友人よ。スタークも言ったもの、友人として贈るって」

「…友人ねぇ」

 ラステルは顎髭を触りながらフッと笑った。守護魔法だけではない。いろんな契約と男避けの魔法までかけてある。

「…では封印する。目を閉じて」

 アリアは言われた通り目を閉じた。ラステルは長い呪文を唱え、魔法陣を描くとアリアの身体に吸い込まれて行く。

「…この封印は私にしか解けない。属性が一つ減ると戦いにくいだろうが」

「仕方ないわ。他の属性を強化するから大丈夫。でももし…万が一私が望んだら、封印を解いてほしいの」

「…それは」

「…気の力が欲しいと言うことは、ジゼルはその力を恐れていると言うこと。私はジゼルを一度殺しかけたことがあるわ。だから…」

「それを使えばどういうことになるか分かっているんだろう?君は何日も目覚めなかった」

「死ぬつもりは毛頭ないわ。あの頃とは違う。私が望んだら…解除して。これで知らせるわ」

 アリアはそう言って魔法陣を右掌の上に出した。

「わかった」

 ラステルはアリアの掌の上に手を重ね、魔法陣を受け取った。



「ジェイドさん、聞きたいことがあって来ました」

 ティクルのハルク邸のジェイドの書斎に夜遅くスタークが訪ねて来た。

「…空間移動したのか?」

 ジェイドは驚いて手に持っていた葉巻を落とした。

「この距離は結構魔力を使うんですね…。身体の負担も大きい…」

 スタークはそう言って大きく息を吐いた。

「驚いた。カインでもこの距離はまだ無理だろう」

「心繋と魔力をたどって来ました。ジェイドさんは魔力が高いから見つけやすい」

 スタークは仕事終わりなのか、騎士の制服を着ている。

「わざわざこの時間に一人で来たってことはよっぽど大事なことを聞きに来たんだろう?座りなさい」

 ジェイドはスタークを座らせ、グラスにウィスキーを注いだ。

「あリがとうございます」

 スタークは腰をおろし、グラスに注がれた酒を一口飲む。

「…君が来るんだ、どうせアリアのことだろう?」

「はい」

「予想はついてるんだろう?」

「ええ。大体は。…アリアはジオルグの姫ですね?」

「…ああ、そうだ」

「カラパイトのヨルン王子が言ってたんです。幼い頃に婚約者として会わされたジオルグの姫に似ていると。アリアはシラを切り通しましたが…。ジゼルの力は王族に発現する確率が高い」

「ああ。十二年前、ジオルグで内乱があって間もなく、アリアを奴隷商の館で保護した。昔ラジール国王の護衛でジオルグに行った時、まだ赤子だったアリアを見たことがあったんだ。何かの縁だと感じた。だから引き取ることにした」

「…アリアはその時、奴隷紋を押された?」

「…」

 ジェイドが黙る。

「ヨルン王子の背中には奴隷紋がありました。…小さい頃、アリアとよくここで川遊びをしたけど、アリアの背中にそんなものはなかった。それはもしかして…ジェイドさんが呪いを受け継いだのではないですか?」

 スタークの質問にジェイドは義手でグラスを持ち、ウィスキーを口に運んだ。

「ジゼルは自分の力を持つ者を拐い、奴隷紋を背中に刻み、目印にする。その子が成長し、魔力が大きくなったところで使役するために飲み込む。俺がカラパイトに行っている間にあなたは二度、魔物にやられてる。二度目、あなたが瀕死の状態でアリアが奴隷紋を自分に戻したんじゃないですか?」

「…それを聞いてどうする?」

「メアリー王女がアリアの背中に奴隷紋を見たと言ってました。アリアは絶対に俺やカインには本当のことを話してはくれません」

「だろうな」

「俺はここに答え合わせをしに来たんじゃない。…奴隷紋の転移の仕方を教えてください」

 スタークの目は真剣だった。もし断れば剣を突き立てでもするような目だった。

「…痛みに耐えれるのか?」

「アリアが苦しんでいる方が痛い」

「…分かった」

 ジェイドはため息を吐いて立ち上がり、机の中から古い魔術書を取り出した。 

「これだ。この術式を使った」

 スタークは魔術書を見て魔法陣を目に焼き付ける。

「奴隷紋は新月になると疼く。痛みで意識が飛びそうになるが、それを堪えなければ使役される」

「わかりました」

「すまない、スターク…」

「なんで謝るんです?これでアリアを痛みから救える」

スタークは笑顔を見せた。

「…ラステルから聞いたよ。ネリ将軍がジゼルに飲み込まれたと。アリアを誰にも見つからない場所に閉じ込めて置きたいが…」

「大人しく隠れるような姫ではないでしょう?」

「そうだな」

「だから一緒に戦います」

「…頼んだぞ」

「はい」

 スタークはそう言ってグラスを空けた。


 




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