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奴隷の呪いと  作者:


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65. 推察

「スターク、夕べはあリがとう。キリア隊長に聞いたよ。新月だったから心配してたんだ」

 カインがそう言ってスタークにハグをした。

「ああ、魔宝石の守護魔法が二回も発動したから、慌てて瞬間移動してみたんだが…」

「すごいな、僕なんか目的地まで行くまで一年以上かかったのに」

 二人は食堂でランチを頼む。夕べの魔物討伐に参加していたカインは夕べのことをさっき聞いたばかりだ。

「アリア、顔が真っ青だった。大丈夫なのか?あれ」

「昨日はまだマシなほうだって言ってたんだ。でも、相手がネリ将軍なら殺されてもおかしくなかった」

「ネリがアリアのことを宝物って言ったんだ」

「宝物?」

「アリアはネリに会ったのは夕べが初めてだと言ったけど…」

「そりゃそうだよ」

「…カインの妹になる前はどこにいたんだ?」

「さぁ…聞いたことない。お母様達は知ってるんだろうけど…」

「アリアは昔からカーテシーや食事の作法や所作が綺麗だった」

「え…そうだっけ?」

「孤児だったって聞いていたから、初めて会って食事とかした時に違和感はあったんだ」

「まぁ…確かにお転婆だけど、言葉遣いも昔からあんな感じだったね、そう言えば」

「昼一、マリウス団長の所に行こう。話したいことがある」

「うん」

 二人は昼食を食べ、マリウスの執務室に行った。


 スタークは古びた本を四冊、机の上に置いた。

「これは?」

「魔法士と竜騎士の物語です。この二冊はカラパイトから持ってきて、一冊は王立図書館、もう一冊は街の古本屋で見つけました」

「これ全部同じ話?うちにも絵本があるけど、もっと子供向けで薄っぺらいよ」

 カインは古本屋の一番古い本をめくった。

「何この字…全然読めない」

「それ、中古代語なんだ。父に翻訳してもらったのがこれ」

 スタークが紙の束をカインに渡した。

「物語と言うより、史実だ。ユリアが眠りについた時に魔法省のラステルさんもこの話をしていた」

「待て待て、話が見えないのは俺だけか?」

 マリウスが慌てて本を手にした。

「俺が知ってる範囲でしか話せませんが…」

 スタークはそう言って大きく息を吐いた。

「カラパイトのヨルン王子の背中には大きな奴隷の紋章がありました」

「!?」

「ヨルン王子が十歳の時、氷の属性が発現し、何者かに誘拐され、呪いをかけられた。奴隷紋は古代語が書かれてあり、預言者がいずれヨルンが魔物に食われ、氷の力で国を滅ぼすと言ったため、ヨルンは氷の力を一切使わないよう生きてきた」

「巨大な魔物がカラパイトに現れた時にヨルン王子は使ったよな?」

「はい。それにより、おそらくヨルンの居場所がある魔物にバレた。そして磁場を動かす新月の夜、魔物はヨルンの力を奪おうとヨルンを襲いに来た」

 スタークは黙る。その先はここにいる三人は知っている。

「物語はどう関係してる?」

「四百年も昔、この大陸にカーディナルと言う国があり、その国の国王が魔法士ジゼルに聖女である娘を渡す代わりに近隣諸国を滅ぼさせた。物語では姫が逃げ出し、ジゼルが怒ってカーディナルを氷漬けにしたとなっていますが、史実だと、国王はカーディナルに魔法封じをし、呪文が唱えられないよう喉を潰し、奴隷紋を焼き付け、奴隷としてこき使ったと」

「ひどい王様だな…」

「ジゼルは魔物と契約し、カーディナルを滅ぼし、聖女を手に入れようとし、竜騎士にやられる。だが、ジゼルは大陸全土に呪いをかけ、時代を超えて、自分の力を持つ者を探すんです」

「それが、氷の属性か?」

「氷だけではないんです。ジゼルは、氷、霧、気、空間、闇の五つの属性を持っていた」

「!? 気…スターク!」

「ああ、アリアもそうだ」

「空間ってネリ将軍も…」

「例外もあるらしいが、ジゼルの力は王族に現れる事が多いらしい。王族の魔力は高い事が多い。三〇年前にこのラスタを襲撃したナスディ国の王子は霧の属性。恐らく、ジゼルに身体を乗っ取られての乱心だろう」

「カレイヤと言う国が十五年以上前に滅んだのも、宰相が内乱を起こしたからだといわれているが、その宰相も氷の属性。王族の血を引いていたらしい」

「ジゼルは何をしたいんだ?」

「自分の力を集め、この大陸ごと滅ぼすつもりなのかも…。五つの力が集まると無敵だろうな…」

 カインがそう言うとスタークは首を振る。

「無敵ではなかった。竜騎士と聖女に倒されてるからな」

「…だから聖女を欲しがった?」

 キリアがスタークを見た。

「おそらく。…夕べ、ネリ将軍がラスタに現れた。ネリ将軍はこの前の戦いで右上半身が吹っ飛んだはずなのに、再生していた。しかも真っ黒な腕で、身体からはあの魔物の瘴気を纏っていた」

「ジゼルに飲み込まれたのか?」

「飲み込まれたにしてはネリ将軍の意識があった。契約したのかもしれない」

「夕べは新月だった。アリアが夜警でギュールと戦った時に気魔法を使ったとしたら…」

「それに気付いてジゼルが現れた?」

「…アリアが飲み込まれたらあの力で国が二つや、三つ滅びてもおかしくない」

「気魔法は一番危険だ。範囲があるにせよ、無空にされたら息ができなくなる」

「…範囲がなかったら?」

 キリアが呟いた。スタークはハッとして息を呑む。

「ジゼルが聖女の力を欲しがった理由はそこかも」

「どう言う事?」

「聖女の力は無限魔法だ。そして俺の婚約者のユリアの力だ」

「無限魔法…初めて聞いた」

「…マリウス団長、魔法省のラステルさんにお願いしてユリアさんとアリアの結界を強化してもらわないと」

「ああ、ユリアさんにはキリア、お前が中心に護衛を指揮しろ。俺は国王とラステル長官に話しに行く」

「しばらくはスターク、ペドロと協力してスタークが赤軍と護衛以外の青軍の指揮をしろ。カインも助けてやってくれ」

「はい」



 




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