表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奴隷の呪いと  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/79

39. 回復

 放課後、カインはアリア達と別れ、寄宿舎に帰ろうとしていた。

「そう言えば…」

 朝稽古の時に騎士の砦に水筒を忘れてきたことを思い出し、カインは騎士の砦に足を運んだ。

「どうしたの、カイン。忘れ物?」

 マーガレットが声をかけた。

「はい。水筒を忘れてしまって。入っていいですかね?」

「いいわよ。私が付いてれば」

 マーガレットはそう言って門を開けた。二人は中庭で水筒を回収し、渡り廊下を歩いていた。

「マーガレットさんは夕べの魔物狩りは行ったんですか?」

「行ったわよ。数は多かったけど、全部雑魚ばっかりで、すぐに終わったわ」

「そうなんですね。どうして新月には魔物が…え!?」

 カインはそう言いかけて驚く。

「お祖父様!?」

 マリウス団長とジェイドが建物の中に入って行こうとしていた。

 ジェイドはカインを見て少し驚いたが、すぐにいつもの笑顔を見せた。

「…やあ、カイン、久しぶりだな」

「お祖父様! 王都に来てたの? いつ来たの?」

「ああ、夕べ、野暮用でな」

 ジェイドの横にはティムがいる。

「やあ、ティム、久しぶり。なんか、背が伸びたね」

「お久しぶりです、カイン様」

 礼儀正しいティムは少し疲れているように見えた。

「カインはどうしてこんな時間に?」

「朝稽古の時に水筒を忘れちゃって」

 マーガレットがジェイドに深々と頭を下げた。

「お初にお目にかかります、名を名乗っても?」

「私は引退した身。そうかしこまらないでくれ。カインがいつも世話になって…。ジェイドだ、レディ…」

 ジェイドは優しい笑顔で握手を求めた。マーガレットは少し顔を赤くして握り返す。

「マーガレットです。お目にかかれて光栄です。ごゆっくりして行ってください」

 マーガレットはそう言ってカインに手を振るとその場から去った。


「お祖父様、王都にはいつまでいるの? 家には寄るんだよね?」

「ん、…アリアは元気か?」

「うん。今朝もランニングしたし、さっき別れたとこ。いつも通りだよ?」

「ならいい。今回は急に来たから、馬車でこのまま帰るよ」

「え!? アリアや父上達に会わないの?」

「ああ、早くティクルに戻らないと」

 カインはジェイドの顔を見て不思議そうに首を傾げた。しばらく考え、そしてニッコリ笑う。

「お祖父様、僕にご馳走してください」

「?」

「回復魔法ってお腹がすくんだよね、ものすごく」

 カインはそう言っていきなりジェイドの胸に手を当て、目を閉じた。

「!」 

「うわ…まだ…お祖父様、何したの?すごいダメージが…」

 カインは独り言を言いながらジェイドに回復魔法を施す。マリウスとティムは驚いたまま見つめていた。

 身体の中からだるみが消えて行く。溜まっていた疲労が溶けるようになくなり、先程より魔力の回復が感じられる。ジェイドは驚いてカインを見た。

「お前…なんで」 

「見てわかるよ。魔力はまだ回復に時間かかるけど、もう歳なんだから、あんまり無茶しないでよね」

 普段通りに振舞っていたつもりで、カインに自分の不調を見透かされているとは思わなかった。

「あリがとう、カイン。今は言えないが、いずれお前の力を借りる時が来るかもしれん。頼もしくなったな」

「でしょ?はぁ〜、お腹すいた。何か食べに行こう。ティムもお腹すいた顔してるよ」

「お、俺は…」

「たくさん食べなきゃ、回復しないよ、ね、マリウス団長」

「ああ、そうだな。よし、じゃあ今夜は俺のおごりだ。ガッツリ肉の美味い店に行こう。どうせジェイドさん、財布持ってきてないんでしょ?」

「ああ、そうだった」

「え!? 王都に来るのに財布も忘れちゃうなんて、お祖父様はおっちょこちょいだな」

「まさかその言葉をお前に言われるとは…」

 ジェイドはそう言って笑った。


「アリアには会わずに帰る。昨日の今日だ…もしアリアとのつながりを魔物に知られたら…」

 ジェイドはラステルにそう言った。

「ああ。夜は特に。まだ今日は月が暗い。しかし…お前の孫は怪物だな。枯渇した魔力とダメージをそこまで回復させるとは…」

「正直驚いた。当の本人は肉を三人前食ってケロッとしてるからな」

「魔物の発生と力が増えてきている。魔法省でもその原因を研究してるが、まだわからん。ジゼルとの関係がなきゃ良いんだが。とにかくお前は気を付けろ」

「ああ。苦労かけたな」

「本当に。お前のあんな姿は初めてだ。勘弁してくれ。新月の夜は気をつけろ」

「ああ…また連絡する。」

 ジェイドはそう言って、少し離れた所で話しているティムとカインを呼んだ。

「カイン、お前のお陰で魔法移動で帰れる。あリがとう。…今日私に会ったことはアリアには言わないでくれ」

「どうして?」

「怒るだろ?」

「ああ、確かにね。ティムにも会いたかったって怒るね」

「アリアのこと、頼んだぞ」

「任せて、と言っても、魔法はアリアの方が強いけどね」

 カインの笑顔にジェイドは微笑み、頭を撫でた。昔からするジェイドのそれにカインはもうさすがに恥ずかしがる。

「お祖母様によろしく」

「ああ、今度はまたピアナと来るよ」

「うん。あ、今度僕にも魔法移動のやり方教えて」

 「ああ。じゃあな」

 ジェイドはティムを連れ、その場から消えた。




 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ