18. レナルドの森
二人は学校から二〇分程馬車に乗り、レナルドの森に着いた。
「ここがレナルドの森?」
「そうだよ。こっちに広場がある」
スタークはアリアを連れて森の中に入り、五分程歩くと開けた野原に出た。
学校のグラウンドよりも広い開けた土地には、四方に黒曜石でできた二〇メートル程の高い柱が立っている。
スタークはその広間の入り口の石碑に手をかざし、呪文を唱えた。ブーンと言う音がしたかと思うと、その広間を囲むようにオーロラのような空気のカーテンが現れた。
「うわ…結界?」
「うん。四方の柱で結界を作るから、この中で思いっきり魔法の練習ができるんだ」
「やった! お祖父様からも聞いたことあったの。騎士団の敷地より広いから週に一度は騎士達の練習でここに来てたって」
アリアは目を輝かせてその空間を見渡す。
「あ、スターク。ちょっと向こう向いてて、着替えるから」
「ここで!? いや、せめてあっちの茂みで…」
スタークの前でアリアはさっさとブレザーを脱ぎ始める。スタークは慌てて背を向けた。
「スタークは着替えないの?」
「ブレザー脱ぐだけでいい」
「あら、余裕ね。制服がズタボロになっても知らないから」
アリアはパンツ姿に着替え、魔法で小さくしていたアカジャイルの木剣を取り出し、元のサイズに戻した。
「属性はどうする? 二つに絞る? 空中は?」
「フルで」
「了解」
スタークもアカジャイルの木剣を用意する。二人は野原の中央に行き剣を突き合わせた。
ジリジリと結界の中の空気が音を立てる。二人は見つめ合い、ワクワクする気持ちを抑えている。
スタークが手から放つ雷の矢がアリアを狙う。アリアは、自分の周りに防御膜を張り、膜内の空気の量を一気に増やした。
電気は空気量が多いと放電しにくい。前にスタークと戦った時、逆に真空にしたらひどい目に遭った。
防御膜の中に入ったままアリアは左手から気砲を放ち、圧力をかける。スタークの身体が吹っ飛んだ。スタークは空中で踏ん張ると今度は空中から烈火の火砲を放つ。アリアは防御膜の中を一気に真空にするとその火砲に飛び込み、スタークに木剣で斬り掛かった。真空で烈火は消え、スタークは慌てて剣でアリアを受け止める。腕力でアリアを跳ね返し、今度はスタークが土魔法で砂利を巻き上げ、アリアを狙う。アリアは、砂利を重力で地面に落とし、水魔法で水砲を放つ。スタークは烈火でそれを蒸発させ、水蒸気に雷を放つ。ビリビリと電気が走り、アリアが感電する寸前で魔法を解いた。
「あ~!悔しい!」
アリアは地上に降り、そう叫んでスタークを見て笑った。
「でも楽しい」
スタークも地上に降り、微笑む。
「ケガはない?」
「ええ。あなたが加減してくれてるから」
「なんのことかな。ま、お互い様だろう」
とぼけるスタークにアリアは周りを見渡す。
「すごい地面がボコボコよ?」
「そりゃ、大魔法使い同士の戦いだ。結界がなければ、戦争が起きたって思われてもおかしくない」
スタークの言葉にアリアはクスクスと笑う。
「…どうする? まだやる?」
「もちろん」
アリアはそう言って剣を構えた。
「疲れるデートだな」
スタークは苦笑しながら構えた。




