15話 なんであいつなの?
私の名前を呼ぶ声がしたが、必死に走り続ける。どこかに向かっているっていうわけじゃなくてただ、あの場所から離れたかった。
がむしゃらに走っていると、目の前にドアがあらわれた。
ドアを開けると、強い風と雨が全身に打ちつける。それでも少しでもあの場所から離れたくって、そのまま突き進んだ。
「ここ……。屋上か.....」
.....冷たい。
雨風にさらされるが、戻るつもりはなかった。
当然ながら屋上には、私を除いて誰もいなかった。
.....これからどうしようかなあ。
怒りに任せて、いろいろなことをしてしまった。私への好感度はめっちゃ下がっただろう。
「こんなことになるんだったら、こっそりやればよかったなあ」
……失敗、したなあ。
後悔なんて、今更しても遅かった。どんなに嘆いたって、過去は変えられない。
ああ、ああ、ああ、ああ!
「なんでなの!!!なんで、なんであいつが幸せになるの!!!私のほうが、こんなに頑張ってるのに!!!」
喉が潰れるんじゃないかってくらい、叫び声をあげる。
「おかしいでしょう!!!私のほうが、連斗君を好きなのに!!!こんなにも愛しているのに!!!」
私は連斗君を愛している。
それは、誰が何と言おうと事実なのだ。
でも、
「知ってるよ!!お前らが顔で好きになるのは違うて言ってたこと!!!」
私が連斗君を好きな理由を話した後、取り巻き達はこっそり言ってたのだ。顔で好きになるのは違うって。
「いいじゃん!!!顔だって、その人の一部じゃん!!!なにが違う、だよ!!!必ずしも内面で好きにならなくてもいいだろ!!!」
肩で息をしながら、まだ叫ぶ。
「私のほうが、連斗君を愛しているのに!!!!!」
そうだ。私のほうが愛の重さも、顔も、何もかも勝っているんだ。
.....連斗君が、あいつを好きになるだなんてありえない。
「連斗君は、あいつが嫌いなんだ!!!」
一一本当にそうか?
私の中の違和感が、問いかけてくる。
本当に連斗君はあいつのことが嫌いか?
本当に私はあいつに勝っているのか?
本当にあいつは私に負けているのか?
本当に一一
やめろ。
考えるな。
最後のだけはだめだ。
取り返しのつかないことになる。
本当に連斗君はあいつのことが好きじゃないのか?
駄目だった。
そのことに気づいた瞬間、私の中の何かが壊れた。
ずっと気づいてた。だけど気づかないふりをしていた。
だけど、それももう限界だ。
「あいつ、顔も性格もいいとかさあ。……私に勝ち目無いじゃん」
知っていた。あいつは、ただ優しいんだって。それに比べて、私は醜くて、汚かった。
「……さっき、連斗君が言おうとしてた言葉わかっちゃったんだよね」
ぽつりとつぶやく。
きっとあの言葉の続きは、
好き、だ。
あのとき私は、反射的にわかったから、でもわからなくするために声を上げたんだ。
「連斗君は、あいつのことが好き」
そう言って、歩き出す。
……もういいや。
フェンスの前まで来たが、かまわず乗り越える。
乗り越えた先は、一歩ふみだせば落ちるところだ。
……私に勝ち目なんかないんだ。
自分の醜さを悟った後では、もう取り戻す気力すらなくなった。
「最後まで、誰も救ってくれないのか」
こんなとき、私がヒロインだったら誰か止めてくれるんだろう。
だけど、私は悪役だ。
悪役には、こんな結末がお似合いだ。
私は一歩、踏み出した。
ぐちゃり、と音がしてもう、声にならないくらいの激痛が走る。
視界に、赤い液体が見える。その液体が流れていくとともに、私の力も抜けていくようだった。
誰かの悲鳴が聞こえ、足音が聞こえてきた。声も聞こえる。どうやら救急車を呼んでるみたいだ。でも、どのみち助からないだろう。自分の体くらいはわかる。もう駄目だ、と。
……ああ、最後の最後まで苦しまなきゃいけないのか。
薄れゆく意識の中で考える。
.....こんなに私は努力、してきたのになあ。
なんであいつなの?
15話書きました。これで最終話となります。
さて。最後まで読んだ物語の感想はどうですか?キャラクターに対しての想いはどうですか?ぜひ、教えてくださいね。
ここまで見てくださった方に最大級の感謝を。また、お会いすることを願って。




