12話 まって
なんで、ここに連斗君が......。
「なんで、泣いてるんだ......⁉」
私が混乱してる間に、連斗君はあいつのほうに近寄っていく。
「だれが泣かせた?」
連斗君......本気で怒ってる......。
私はあわてて弁明する。
「ち、違うの......。翡翠さんが私の筆箱を盗んだから、問い詰めたら泣き出しちゃって......」
「そ、そうなんだよ!だから全部翡翠さんのせいなんだよ!」
取り巻きも私の味方をしてきた。
でも、それでも連斗君の怒りは消えなかった。それどころかさらに大きくなった。
「そんなこと、翡翠がするわけないだろ!」
連斗君があいつの名字を呼んで、胸に痛みが走る。
「で、でもっ、翡翠さんの机から出てきたんだよ⁉」
「…筆箱がなくなったのは、いつ頃だ」
突然の質問に、驚きながらも答える。
「えっと…放課後ないって気づいたの」
「つまり、7時間目はあったんだな?」
連斗君が念を押すように聞いてくる。
「えっと、うん。そうだと思う」
連斗君は、私をにらみつけたまま言った。
「じゃあ、翡翠は盗んでないよ」
「っなんで、そう思うの......?」
声が、少し震えてしまった。
「7時間目から放課後、みんなが帰る時までは、俺と翡翠は一緒にいた。....だから翡翠は犯人じゃない」
ゆっくり、大きく目を見開く。
連斗君の言葉にみんながざわつく。
でも、私はみんなの声も耳に入らないくらい動揺していた。
.....なんで、なんで連斗君とあいつが一緒にいたの?なんで.....なんであいつが.....。
「え、嘘。じゃあ犯人は誰なの?」
「誰かが翡翠さんをはめようとしたってことだよね」
クラスに動揺が広まっていく。
みんなのざわめきに私は現実に引き戻される。
.....大丈夫。私はまだ疑われてない。
そう思った、次の瞬間。
「これは、愛ちゃんの自作自演だよ」
耳に入ってきたのは信じられない言葉だった。
それを言ったのは、私の、取り巻きだ。
「え.....」
「愛ちゃん、翡翠さんに嫉妬してたからさ、はめてやろうってことで自分で自分の筆箱を翡翠さんの机に入れたの」
取り巻きが、この場に合わない明るい声で発していく。
「あんた.....。なんで.....」
私の言葉が聞こえたのか、取り巻きはくるりと振り返った。
「愛ちゃん、私のこと覚えてない?中学の時、一緒だったんだよ?」
そう言われて、思い出した。
「あんた.....私をいじめた.....」
そいつは、私をいじめた、リーダー格の女だった。
そいつはにっこり笑って言った。
「せいかーい!.....ずうっとあんたに復讐する機会を疑ってた。さいわい、あんたは私のこと気づいてないみたいだったから好都合だった。.....どう?はめられた側になった気分は?」
そいつは、私を見下すような笑みを浮かべた。
クラスが、またざわめきだす。
「え、あれは愛さんの自作自演....?」
「うそだろ....」
私は震える声で弁明する。
「ち、違うよ。あの子が私をはめようとしてるんだよ」
でも、無駄だった。
「私も知ってるー。愛ちゃん、自分でやってたよね?」
「うん。愛ちゃんのほうが最低だよー」
……まって、やめてよ……。
私のイメージが、ガラガラと崩れていく。
そんなことを思っても、言葉は続く。
「愛ちゃん、男の子たちたぶらかしてたよ」
「うーわ、屑じゃん」
せめて、連斗君だけは、聞かないでよ……。
12話書けました!
愛ちゃん…大丈夫でしょうか?
…もうこうなると誰が悪いのかわからない……。




