第62話「再会ですわ!」
前回のあらすじ!
女性陣のなんかいい感じの話(元凶は姫)♨
「国王陛下!!」
レインが通りすがりついでに壊滅させた魔王軍拠点の敵兵を拘束している国王の元に、一人の兵士が駆け寄ってくる。娘を中心に結成された『フィーラ部隊』のランドだ。
「おお、ランドか。レインたちには会えたと報告を受けているが、その様子だとまた何か進展があったな?」
「大有りでございます! フィーラ姫……じゃなかったシーラ姫が見つかりました!!」
「何だと!?!?!!?」
思わず声を張るが、直ぐに心を落ち着かせる。
一人娘が心配だったのは勿論だが、一国の主である以上、おいそれと人前で取り乱してはいけない。報告に騒めく周囲を片手で制して、「詳しく教えてくれ」と詳細を促す。
「はっ! 同部隊兵のテクトがレインとは別の強大な魔力を感じ取り、程なくエアリが姫さまと思しき話し声を確認! アイルに最終確認させたところ、姫さまの姿を目視したとのことでした!!」
超魔力探知力のテクトに超聴覚のエアリ、超視力のアイルときたか。フィーラ部隊の中でも周囲の警戒・確認において右に並ぶ者が存在ない3つ子が言うなら間違いないだろう。
「理解った。通信兵はこれを他兵士に伝え、厳戒態勢を取らせよ。私は娘を迎える。ランドよ、他に耳に入れとくべきことはあるか?」
「はいっ! 姫さまの他にすっごい居ます!」
「すっごい居ます?」
こんなざっくりした報告をするとは珍しい。それほど衝撃的な何かを見たということだろうか?
だが、娘のことだ。私の幼稚な性分を百重に煮詰めたようなお転婆の中のお転婆たるあの娘なら思考が追いつかない何かをしでかしていても不思議じゃあないのだ。0歳から脱走騒ぎ起こしてるし。
それよりも確認が先決だ。ランドに目視位置まで案内させて、遠眼鏡を覗き込む。
そこには……──、乗馬して先導するレイン・シリス・マリナの姿に、その後ろを着いて走るなんかすっごい大きな黒い巨狼。その背中に娘のシーラと角が生えた仮面の青年、耳が尖った女性に目が黒い気がする幼子と子犬が……5匹?
そして、巨狼の左右を人ひとりは乗っけられそうな黒狼の軍勢が固めていて、こちらを目指して走ってきていた。
「すっごい居る!!」
◇ ◇ ◇
「姫さま! 迎撃拠点が見えてきました!!」
一方、姫一行も拠点が肉眼で見える位置まで来ていた。
「あれがそうですわね! リツさん!」
「こちらにございます」
手早く用意された遠眼鏡を「サンクス!」と受け取り、覗き込む。そして私は「あ……──!」と声を漏らした。
お父さまが居た。私が遠眼鏡を覗くとき、父もまた遠眼鏡を覗き込んでいて、遠眼鏡越しに目が合ったと確信した瞬間、じんわりと涙が滲む。
あぁ……やっとお父さまに再会えるのだ。誘拐されたからこそ理解るが、家族の存在のなんと尊きことか……!!
ジェックさんたちにしっかり掴まるよう呼びかけ、レインたち乗馬3人組と夜王さんに全速力で駆けてもらう。こちら目指して走ってくるお父さまの姿がどんどん明瞭になっていく。
そして私は、夜王さんから飛び降りて──父の腕の中へ飛び込んだ!!
「お父さま、ただいま帰りました……!!」
「あぁ、シーラ……! シーラ……!!」
お父さまも涙ぐんで何度と私の名を呼ぶ。
そして、一頻り鼻をすすると私を地面に下ろして……──、
「多 い よ !!!!」
明らかな困惑顔で、そう叫んだのであった!
「多い?! 多いとはなんですの?!」
「多いよ!! どうして誘拐されておきながら3人とひぃふぅみぃ……45匹を引き連れる大所帯になってるの?! 再会できた安心感と感動を、衝撃と動揺と頭痛が想像の斜め上を通り越して天元突破するくらいには上回っちゃってるよ!!」
「いいじゃないですか大所帯になったって! そりゃあ1人と44匹は成り行きで旅路に加えましたが、その方が賑やかじゃあないですか!!」
「その成り行き仲間が多すぎるんだよ! そりゃ「すっごい居る」とざっくりした報告しか上がってこないのも納得だよ! 自分の部隊員の5倍の頭数揃えて帰ってきたんだもの! なんなら明らかに魔族も居るし!!」
「でしたら紹介しますわ。ジェックさん方〜!!」
「「「「は〜い」」」」
ぞろぞろと寄ってくる3人と45匹を並ばせていると、ジェックさんが不意に申し出てくる。
「あー、フィーラ? 俺の挨拶は後回しを推奨する。内容が内容だから、後の話が入ってこなくなりそうだ。ということで国王陛下、自分の自己紹介は最後にさせていただきます」
確かに彼は『魔王の落とし子』と衝撃的すぎる爆弾を抱えている。それを配慮するなら先手で自己紹介をするのは控えたいところだ。
「あ、そう? じゃ、じゃあ、先ずは耳が尖っているそこの君から聞こうか」
お父さまは首を傾げながらも納得してくれて、リツさんに自己紹介を促す。
話を振られたリツさんはお腹の前で腕を組むと、一歩前に出て綺麗なお辞儀を披露する。
「お初にお目にかかります、世話役のリツ・ジョーと申します。魔王城では姫さまの身の回りのお世話を担っていたのですが、彼女が脱走したことで解雇を避けられない立場となりましたので、なれば雇い直してもらおうと着いてきた次第でございます」
「そのふてぶてしさ私は好きだよ。次はそこのお嬢ちゃん、お名前は何かな?」
「ルルなのー」
「ルルちゃんか。娘とはどんな関係かな?」
「おかあさんなのー」
「お母さんかーお母さん?!?!?!!」
「教会兼孤児院から引き取りましたの。帰国しましたら養子縁組を結びます」
「あぁ、そういう意味ねびっくりした……。まぁ、そこのところ帰国したら詳しく話し合おうか。それで……そこの子犬たちは?」
「こちらは魔界の犬こと『魔界犬』ホニョちゃん。魔王城から連れている私の愛犬です。周りを走っている4匹は先日産まれたホニョちゃんの子どもたちですわ」
「イヌッ!」
「「「「イヌヌイヌ」」」」
「人間界産・魔界産問わず犬は可愛いものだね。あれ? ということはもしかして、後ろの狼? の何れかが番かい?」
「ご明瞭、私がホニョの夫だ。密猟者から逃れるべく貴公が背負う御国の自然保護区へ身を寄せるよう提案されて参った次第。人からは『夜王』と呼ばれている」
「夜王……『ナイトキング・ウルフ』か! 我が国では要保護生物として扱われている! 直ぐに受け入れ体制を整えよう!!」
「かたじけない」
夜王さんは頭を垂れて感謝を示す。これで粗方の紹介は済んだが、ジェックさんの自己紹介がまだ残っている。
その彼はというと……、私の帰還と、彼の魔力に釣られて続々と兵が集まってくる中で、何度も深呼吸して精神を整えていた。
「ジェックさん……」
「大丈夫。やましいことはない」
ジェックさんは言い切って一歩前に出ると、先ず始めに大剣『大海』を地面に置いて、お父さまの足元へ滑らせた。
それをお父さまは拾い上げると、ぎょっと目を見開く。
「龍文字……?!」
ざわっ──!!
兵士たちが衝撃を受ける。当然だ。レインが『空龍テンセイ』から聞いたという話通りなら、彼こそが件の『龍文字が刻まれた得物を持ちし男子』に該当するのだから。
「君……一体、何者なんだね……?」
お父さまからの問いに、ジェックさんは後ろ手に組んで、自己紹介を始める。
「初めまして国王陛下。私の名前はジェック。……魔王の落とし子です」
幼少期国王の脱走頻度は月1でしたが、姫さまの場合は週5~6です(毎週新経路開拓してる)♨
「自分も騒がせたことあるで♨」って方はブクマ等よろしくお願いします(リアクションもモチベになります)♨
次→明日『18:00』(残り8話!!)
 




