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第52話「まさかのですわ!」

前回のあらすじ!

シリアス「子犬が産まれたよ。めでたいね」

 深夜──、森の中で(わたくし)たちは大騒ぎしていた。

 森の住民たちからすれば迷惑極まりないだろうし、(いえ)でやったものなら両親と城中の兵士と使用人が駆けつけてくるだろう。だが、今回ばかりは許してほしい。



「イヌ、イヌ」

「「「「イヌイヌイヌイヌ」」」」



 だってまさかのホニョちゃんが、4匹の子犬のお母さんになっていたんだもの!!


 もう一度言う!!



 ホニョちゃんが!

 4匹の子犬の!!

 お母さんになっていたんだもの!!!!!!



「ホッホホホホホホホーホーホッホホホホホーーホニョちゃア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ん!!?!?!?!?!!?!?!!!?」

「えーーーーッッ!?!?!!? え!!? え、えーーーーーーッッッッ!!?!?!?!?!!?!?!?」

「ッッッッッッ!!!?!!?!?!!? ッッッッッッッッッッ!??!??!!!!??!?!!」


 目の前の光景に、(わたくし)は追われ身なのをすっかり忘れて仰天に仰天を重ねる。隣のジェックさんなんか眠気も何もかもが吹き飛んだ吃驚声を森の中で轟かせていて、リツさんに至っては驚きのあまり尻もちを着き、ルルちゃんは「かわいいのー♡」とホニョちゃんたちの前にしゃがみ込んでいた。


 ──が、とにもかくにも……、



「「「病気じゃなかった〜〜……!!!!」」」



 (わたくし)たちは照らし合わせるまでもなく、安堵の溜め息を吐いたのだった!


「いやホント吃驚(びっくり)しましたわよ本気(マジ)で!! ずっと病気と思っていたんですもの!! 安堵感と驚きで頭の中が大氾濫土砂崩れですわ!!」

本気(マジ)でそれな!! これなら寧ろハッキリ言ってほしかったわ「おたくの犬、出産近いかもよ?」って! その方がまだ心の準備できたわ! あ〜杞憂で良かったァ〜〜……!!」

「本当に病気でなくて安心しました……! 私め、ホニョさまの不在に気付いてしまった故、最悪の事態を覚悟しておりましたもの……!!」


 (わたくし)たちは口々に内包していた不安を暴露し合う。特に第一発見者だったリツさんなんかは気が気でなかったでしょう!


「ホントにご愁傷さまですわリツさん! 怖かったですわよね?! ですわよね!! この際安堵感を涙に変えてスッキリしなさいな!!」

「では胸をお借りいたします。プルタ内海にて、ホニョさまが随分重いとグレストさまからご指摘受けていたものですから、まさかそれが要因で病気じゃないかと、本当に心配で心配で……ひぃん……!」

「それは不安になるのもやむなしですわよ! おぉよしよし……!!」

「まぁ、病気じゃなくて良かったね、で落ち着こうや。それはそうと……──、」

「ええ。それはそうと……──、」

「その通りでございます。それはそうと……──、」


 ジェックさんの言うように、長々と安堵していたって執拗いだけだ。それはそうと……──!



「イヌ、イヌ」

「「「「イヌイヌ、イヌヌ」」」」

「「「可愛いなぁ〜〜ッッッッ!!」」」



 今度はしっかり示し合わせて、存分に子犬を愛でることにした!!


「「「「イヌイヌ、イヌヌヌヌ」」」」

「あら〜! この子たち、ちっちゃいお口で(わたくし)の指をあもあもしてますわ〜! 可愛(きゃわ)いい〜〜ッッ!!」

「しっかし、産まれて間もないってのに動くもんだなぁ……! 今更ながら、魔界犬(まかいぬ)は『魔界を生き抜くための遺伝子進化で、産まれてから動けるまでが極端に早い』って聞いたことあるが、本当なんだなぁ……!!」

「小麦色と黒色でちょうど2匹ずつですわ♡ 愛いですわ♡ 愛いですわ♡」

「あれー?」


 皆で思う存分子犬を堪能していると、ひと足先に子犬を愛でていたルルちゃんが、意味深に首を傾げる。


「ホニョのおなか、ちいさくなってるのー……?」

「え? なになにルルちゃん、妊娠に気付いていらしたの?!」

「そういうもんかとー」

「ならしゃあないですわ。(わたくし)たちも気付いておりませんでしたし。初めての犬──つまり初犬とはいえ、ホント無知は罪ですわ」

「どうして、おなか、ちいさくなってるのー?」

「それはお腹の中に居た子犬たちを外に出したからですの」

「なるへそー。……どうしておなかのなかにいたのー?」

「赤ちゃんは必ずお腹の中に現れるんですの」

「なるなるへそー。……どうしたら、おなかのなかに、あらわれるのー?」

「おおっふ……」


 遂に来ましたか、子ども特有「赤ちゃんはどこから?」が! (わたくし)も幼き頃に父上・母上に訊いて困らせたものですわ……!!

 ちら……とジェックさんとリツさんに目線を送ると、「ドジったらフォローする」と目で約束してくれる。なら(わたくし)も(義理の)母としての務めを全うしよう!

 (わたくし)は覚悟を決めて、全ての脳内細胞を起動する!


「赤ちゃんがお腹に現れるには、大前提としてひと組の男女が夫婦となり、お父さん・お母さんになる必要があります。これが前後逆になる方々も存在()りますが、まぁ今はいいでしょう」

「ふうふじゃなきゃ、だめなのー?」

「基本的には無理ですわね。(わたくし)たちとルルちゃんみたく施設から引き取って我が子とする夫婦も存在()りますが、出逢いには余程の根気と幸運が必要ですわ」


 脱線した話を戻しましょう──。


「それで、どうすれば赤ちゃんが現れるのかですが、夫婦が2人きりの部屋の中でとある儀式を行うのが絶対条件です。それ以外の方が居れば確定で失敗し、赤ちゃんがお腹の中に現れることは決してありませんわ」

「そのぎしきって、なーにー?」

(わたくし)もまだ見たことありませんの。ですが、下手に知ろうとしてはなりませんよ?」

「どうしてー?」

「15歳未満の方が知ろうとすれば災いが起こるのです。(わたくし)も14歳の頃に好奇心で動いた結果、それはもう恐ろしい存在に泣くまで追いかけ回されましたわ」

「どんなそんざいだったのー?」

「ゴブリンよりも悍ましい、ジェックさんが裸足で逃げ出す程の存在ですわ」

「おい」

「ひぇ〜……、なのー」

「なので、然るべき時までこの質問は我慢しておいてくださいまし。母(※義理)との約束ですよ」

「はーいなのー」


 ルルちゃんは納得してくれた。良かった、良かった。


「じゃあ、ほかのはなし、していーいー?」

「なんでしょう?」

「こどもは、おとうさんとおかあさんの『ふーふ』がひつようっていってたとおもうのー」

「でしたわね。それがどうかしまして?」



「じゃあ、ホニョはだれと『ふーふ』になったのー?」



「…………うん?」

「ホニョはだれと、『ふーふ』になったのー?」

「……スゥーー……」


 ちょっとお待ちあそばせ──と、(わたくし)はジェックさんとリツさんを連れてその場から距離をとる。

 そして、ルルちゃんにギリ聞こえない位置にしゃがみ込み、緊急会議を開いた!


「そうですわよ忘れてましたわよ! 子犬が産まれたということは、ホニョちゃんに伴侶が存在()るってことじゃあないですか!?」

「衝撃と安堵と愛しさですっぽ抜けてたわ! とりあえず相手は黒毛で確定だな?! 子犬2匹黒かったし!!」

「どこぞの犬の骨が口説いたかも気になりますが、ホニョさまがいつから身篭っていたかも重要ですわ。少なくとも航海中には身篭っていたのは確定でございます」

「ホニョちゃん重くね? ってグレストさんから指摘されたやつですわね?! であればプルタ避暑地前から妊娠していたのは確定ですわ!!」


 と、ここまで推理したところでジェックさんが「あれ?」と何かに気付く。


「だとしたら俺たち……ホニョの伴侶、プルタ側に置き去りにしちまってね? 伴侶即ち子犬の父親と金輪際のお別れにしちまってね……?!」

「やめてくださいよ! だとしたら(わたくし)たち露知らずで番と親子を引き裂いた極悪人じゃあないですか!!」

「でも俺たち海渡ってきてんじゃん! 仮に追いかけてきているとしても、陸路伝いに追うしかないじゃん! 向こうからすりゃ会えるかどうかなんて、リプフォードのカジノ以上に大博打じゃん!?」

「おごごごごごごご……!!」

「ちょっと例えが最悪ですわよジェックさん! 心臓に悪い大勝利以来ギャンブル恐怖症になったリツさんが腹痛起こしてるではありませんか!!」

「ごめーん!!」

「なんであやまってるのー?」

「「「ぎゃあ!!?!?!」」」


 全員同時に飛び跳ねる。いつの間にかルルちゃんが背後に立っていた!


「ルルルルルちゃん、いつからそこに?! 急に話しかけるのは吃驚(びっくり)するからやめてくださいましねぇ?」

「さっきからなまえ、よんでたよー?」

「あ、だったらごめんなさい。それで、何のご用ですか?」

「つのはえたのー」

「つの? ……()?」

「あかちゃんたちに、つのがはえてきたのー」

()()()()()()()?」


 申し訳ないが、本気で仰る意味が分からない。

 ので、百聞は一見にしかずと再び子犬たちの前に来てみれば……──、


「……角ですわねぇ」


 4匹揃って、小さな一本角が、額に生えていた。

 この世に生を受けてから生えてくる仕組みなのだろうか? だが、今抱くべき疑問は別にある。

 それを裏付けるように、ジェックさんが角を一目見るなり断言する。


「オマエら……ホニョの伴侶、魔界犬(まかいぬ)じゃあねぇぞ……?!」

「あ、やっぱり?! 角生えた魔界犬(まかいぬ)存在()るのかなー? って一瞬脳裏を過ぎりましたがやっぱりィ?!」

「だとすれば、ホニョさまのお相手はイヌ科の魔物と考えるべきでしょう。イヌ科の魔物は嗅覚ならぬ魔力探知覚がずば抜けていると耳にしたことありますので、ならばお腹に宿った我が子の魔力を辿ってきている可能性があります!」

「だとしたらマズイぞ! 向こうからすれば俺たちなんざ知ったこっちゃねぇ筈だから、よくも番・子どもと引き離したな! って出会い頭に襲撃(かち)こんできてもおかしくねぇ──ん?!」

「どうしまし──はッ!?」


 ジェックさんに釣られて顔を向けたその時、(わたくし)たちは確かに見る。


 遠い暗闇の中に潜む、2つの巨大な眼光が現れた瞬間を……!!

子どもの「赤ちゃんはどこから?」は真面目に向き合うべき質問だと私は思います。それはそうと、子犬可愛いですね♨

子犬の動画見てる方はブクマ等よろしくお願いします。感想もあったら嬉しいです。


次→明日『18:00』

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