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第50話「龍命人③ですわ!」

前回のあらすじ!

リプフォード脱出!!

 姫一行がリプフォードを脱出したその深夜、人間界──。


「…………んウッ……!」


 垂れ糸目茶髪ゆるふわボブカット小柄女性軍兵マリナはイマジナリー鼻ちょうちんの破裂とともに起床する。焚き火の揺らめきが良い感じに眠気を誘ってくるが、魔物がチョゲ〜! と跋扈する森で不寝番をしている以上誘いに興じるわけにはいかないのだ。


 ──チョゲ〜……!

 ちょうど聞こえてきたし。


 けれど、眠いものは眠い。不寝番の訓練は受けているし、今日は私の当番だから仕方ないのだが、私自身睡魔に頗る弱いのだ。


「……………………ハべッ……!!」


 己を律しているうちに、またも眠気に身を委ねそうになる。油断すれば直ぐこれだ。


「いつものやるかぁ……」


 私は焚き木を放り込んで、テントの中へお邪魔する。

 寝静まる二人の傍にしゃがみ込み、シリスの頬をニプニプつつく。こうしていると眠気覚ましになるのだ。過去にバレた際「アンタだけだよ」と言われたけど。


「あ……」


 次にレインをニプニプしようとして、頬を止めどなく涙が伝っていることに気づく。夢の中で記憶を辿っている時に起こる現象だ。


「多くなってるなぁ……」


 フィーラ姫ちゃんの魔力の残滓が色濃くなる(※レイン談)につれて明らかに頻度が増している。それだけフィーラ姫ちゃんが捕らわれている魔界に近付いている証拠だが、それだけに彼女が災難に遭っていないか不安が強まってきているのだろう。


 この涙を止めるためにも早く魔界へ向かわねば……。私は人知れず決意を固める。


 ◆ ◆ ◆


 入隊から9龍年間──、レイン属する『フィーラ小隊』は破竹の勢いで功績を挙げていた。


 特にレインの活躍は著しかった。国際指名手配大規模盗賊団の首領撃破……ドラゴン複数体討伐……友好国と全軍をぶつけ合う実戦的交流戦において迎撃した小隊を単騎全抜き、なんなら友好国兵士皆殺し(※生きてる)……と大人顔負けの実績を次々叩き出していた。皆殺し(※生きてる) は後でコテンパンに叱られたものだが、未だ納得いってない。


 だって、こっちが兵士たちを「ギャフン!」させまくってたら「とんだ化け物飼ってやがる!」と向こうが言ってきたんだもの。それって即ち『レインを見つけてくれた姫さま(と国王たち)は化け物(レイン)を飼ってる異常者』と言っているようなものではないか。姫さまを異常者扱いする輩はぶちのめされて当然だし、友好国の国王からも「自軍がどれだけ腑抜けていたか再認識できた」と感謝されたんだから自分は悪くない。


 そして今回もレインたちは、遠征のために祖国を出立するところだった。


 城下町門前に差し掛かるなり、路肩に並んだ大勢の国民が歓声を上げて軍隊を出迎える。


「見ろ! 『フィーラ小隊』だ! ホワイトロック王大国が誇る期待の新星だ!」

「凄ェもんだよなぁ! 小隊が立ち上がったのはつい最近だってのに、この前だって国際指名手配中の盗賊団を一網打尽にしたんだろ?!」

「あれ? でも……『フィーラ小隊』って正式な小隊になる前から所属員(メンバー)自体は固まってたんだっけ?」

「全員姫さまの幼馴染みで構成されてるんだと。ほら、シーラ姫ってよく『フィーラ』って名前でお忍びしてるから」

「だから『フィーラ小隊』なのね。それがこれだけの大物部隊になるんだから、姫さまの先見の明も凄いわね〜……!!」


 姫さまが賞賛されると我がことのように嬉しい。国民の噂話に内心得意気になっていると、熱い眼差しを向けてくる女性が目に入る。


「きゃ〜、レインさま〜! 手ェ振って〜!! ギャ〜〜〜ッッ!! ガクッ……」


 求められるがまま応えれば、名を呼んできた女性は気絶して担架に乗せらせる。こちらの評判が良ければそれだけ恩人(姫さま)たちの評判に反映されると気づいてからは、積極的に要望に応じるようにしていた。


 そして──、やっとこさ門を潜り終えて、「ぶはァ……!!」と盛大に息を吐けば、マリナさんが話しかけてくる。


「あららレイちゃん。また息詰まってた〜? 相変わらずチヤホヤされるの苦手だね〜」

「もう勘弁ですよ持て囃されるの……! 姫さまの評判に繋がるから顔には出しませんが、毎回息が詰まってしんどいですよォ……!!」

「うんうん、今回もよく我慢したねぇ〜。でも、サプちゃんみたくどっしり構えて聞き流すのもありだと思うよ〜?」

「クソぅ……サップさんみたく最初からクール系目指しておけば良かった……! 下手に国民の要望に応じちゃったばかりに……!!」

「そこは結果論だから仕方ないだろう。それとマリナ。サプちゃん呼びは止めてくれないか? もう俺も20歳になったんだし、むず痒くて仕方ない」

「そういうときは、聞き流せばいいと思うよ〜」

「悪魔か」

「悪魔ね」

「悪魔ですか」

「皆酷〜い」


 皆と口々に野次を飛ばすが、マリナさんは相変わらず笑みを崩さない。微塵も通用していない。

 皆への『〇〇ちゃん』呼びは一生続くのだろうな。レインは妙な確信を抱きながら、馬を走らせた。


 ◆ ◆ ◆


「退避、退避ィィィ!!」

「「「「「わぁぁぁぁ!!」」」」」


 曇天の下で、兵士たちが逃げ惑う。

 その日は大規模な魔物討伐遠征だった。複数の魔物の群れが平原に集いつつあると目撃情報が入り、魔物大行進(モンスターパレード)に発展する危険があったからだった。


 けれど、現状はよろしくないようで、遠目に見える本陣の遠征隊長は頭を抱えている。


「隊長、攻撃失敗です! 突如飛来してきた超巨大ワイバーンの灼熱吐息(ブレス)で兵たちがまたも下がってしまいました!!」

「折角詰めた距離がまた振り出しに……! 他の小隊の合流を急がせるんだ!!」


「ギャオオォォォオォオオォオオッッッッ!!!!!!」


 目前に迫る空を飛翔()う超巨大ワイバーンが平原に鳴く。あのままだとワイバーン付近の魔物の群れたちが合流して魔物大行進(モンスターパレード)に発展するのは時間の問題だ。


「クソッ、これではワイバーンのいいように本陣への接近を許してしまう……!! 奴と魔物大行進(モンスターパレード)への発展を防ぐためにも、どうにか頭数を揃えねば……!! どの小隊でもいいから早く合流してくれ……!!」


「──と、隊長殿は言ってるぜ、シリス」

「了解エアリ。テレス、この距離いける?」

「余裕だわね」


 聴覚がずば抜けているエアリが声を拾い、テレスがバチッ! と拠点に魔力を飛ばせば、遠征隊長はこちらに気づいて顔を明るくする。彼女の『テレパシー』は遠距離からでもやり取りしたいこんな時に使えるから便利だ。


「いの一番によくぞ駆けつけてくれた『フィーラ小隊』! 君たちが来たとなれば文字通りの百人力だ! 用意してほしい物はあるか?! ──と言ってるぜ」

「巨大剣1本となるべく厚い大盾を8枚」

「了だわね」


 聴覚がずば抜けているエアリが声を拾い、テレスがバチッ! と拠点に魔力を飛ばせば、遠征隊長は部下に大盾を集めさせる。テレスの『テレパシー』は(以下略)。


 本陣に到達して、早速シリスが「現状はどうです?」と遠征隊長に訊く。最年長ではないが、最も頭の回転が早く機転も利く彼女は満場一致で隊長を担っていた。


「ワイバーンの灼熱吐息(ブレス)に阻まれ埒が明かない。こちらは群れに備えて部隊を再編成しているからどうにか抑えてくれ! なんなら撃墜(たお)してくれ!!」

「最初からそのつもりです。皆行くよ!」

「「「「「イエス、シリス!!」」」」」


 小隊お決まりの返事をしながら自分は用意された巨大剣、皆は用意された大盾を携え、「無茶するなよ!」と背中に言われながら超巨大ワイバーンの元を目指す。火傷の心配がある以上馬は連れて行けないので全員己の足で平原を駆ける。


「ギャオオォォォオォオオォオオッッッッ!!!!!!」


 当然、超巨大ワイバーンはこれを黙って見ていない。直ぐさま息を吸うとこちらに向かって灼熱吐息(ブレス)を放ってきた。


 ──が、「吸気音確認!」とエアリが叫んだことで既に陣形を整えていた仲間たちは「やるよ〜!」と双槌を奏でることで展開されたマリナさんの防御魔法も合わさり万全の防御態勢。見事に灼熱吐息(ブレス)を防いでみせた!


 その様を眺めながら、仲間たちの少し後方で待機する。


「ギャオオォォォオォオオォオオッッッッ!!!!!!!!」


 灼熱吐息(ブレス)はまだ続くが、仲間たちの少し後方で待機する。


「ギャオオォォォオォオオォオオッッッッ!!!!!!!!!!」


 灼熱吐息(ブレス)はまだまだ続くが、それでも仲間たちの少し後方で待機していると……──、


(エアリ、吐息(ブレス)途絶音確認!)


 テレスの「テレパシー」が飛んでくると同時に大巨漢のサップが右腕を後ろに構える。灼熱吐息(ブレス)はまだ続いているが、エアリの耳を信じて駆け出した!


「ギャオオォォォオォオオォオオホッッ……!!」


 ──すると、ちょうどサップの右手に飛び乗ったタイミングで灼熱吐息(ブレス)を止めた!


「ドンピシャ」

「むぅん!!」


 そして、レインは『剛力』のサップに思い切り投げ飛ばされた!

 助走と投げられた勢いのままに超巨大ワイバーンへ急接近しながら、巨大剣を構えて、レインは想起する。


 ──この超巨大ワイバーンを倒せば、魔物大行進(モンスターパレード)を未然に防げる。


 ──それ即ち、国民の安全に繋がり、国王方も安心する。



 ──つまりは、姫さまの守護になる!!



 結論付くなり身体の奥底から力が湧いてくる!

 レインは莫大な魔力を解き放ち、巨大剣へと纏わせた!


 感情魔法──『忠誠』。

 師父で養父のジェラルド将軍に名付けられたそれは、その名の通り、主君への忠誠心が強ければ強いほど魔力総量が増幅するレインの魔法。6歳より姫さまと運命的な出会いを果たしたレインだからこそ最大限発揮できるのは想像に難くない。

 因みに……この魔法自体は姫さまへの忠誠を誓った辺りから発現していたのだが、存在を知ったのはつい最近である。


「はッッ!!!!」


 レインは巨大剣を振り上げて、超巨大ワイバーンの右翼付け根を切り捨てた!


「ギェェエエエェエェェエェェエエエッッ!!!」


 右翼を失った超巨大ワイバーンが断末魔を上げて墜落する。

 そして……ゴギッッ!! と嫌な音を立てて、そのまま動かなくなった。



 レイン、15歳──。

 巨大剣に纏わせた魔力を解除しながら、地上の魔物の群れに備える。

『姫さまの愉快な仲間たち』がたくさん出てきた過去回でした。それはそうと、ほっぺたって良いよね♨

理解(わか)る方はブクマ等よろしくお願いします♨


次→明日『18:00』

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