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第5話「見てみたいですわ!」

魔物倒した。

「お邪魔あそばせーーッッ!!」

「うわぁッ! な、何だ貴様は!?」


 町長の部屋のドアを蹴り開けると、暖炉前で呑んでいた町長が驚いた様子で立ち上がる。

 煙突の中から聴いた声と同じですから同一人物に間違いありませんわ。にしても……ルルちゃんから聞いてはいましたが、ホントに健康超度外視の体型ですわね……。


「で、であえであえ! 侵入者だ! 早く来て捕らえなさい!!」


 逃げられないよう(わたくし)がドアの前に立ってみせれば、町長はポケットから取り出したのベルを激しく鳴らし、自宅中の警備兵を呼びつける。


 しかし……、誰も現れませんでしたとさ。


「な、なんだ? どうして誰も来ない! 警備が何人か居ただろう!?」


 取り乱し始めたそのとき、(わたくし)の後ろから現れた青年が、こちらの肩に手を置いた。


「お待たせしました町長どの」

「やっと一人か! 呼んだら直ぐに来たまえ! というか他の者はどうした!?」

「誰一人として来ることはございません。執事は率先して逃げようとしたのでしっかりぶちのめしておきました」

「なんだと!? 一体全体どういう……待て、貴様のような角魔族、雇った覚えないぞ!?」

「それもその筈でございます。なんたって──、」


 そこで一旦言葉を区切り、ジェックさんは(わたくし)の隣に並んでみせる。


(こっち)の仲間でございますから」

「何ィ!? じゃあ、他の者は一体……?!」

「全員廊下でシバいておきました。拘束もバッチリでございます」

「そ、そんな……!?」

「ナイスご活躍ですわ、(わたくし)のお仲間」


 町長が動揺する中、(わたくし)は町長の前に立ちます。


「スーゲ町長。貴方には、魔物を呼び寄せて魔物討伐依頼金を不正に募っていた罪で失脚していただきます。魔物も既にぶっ倒しておりますから、証拠隠滅に逃がすことは叶いませんことよ」

「な、何を言いがかりな! じゃあその魔物を見せてみろ!」


 今しがた倒したと言ったではないか。この男、取り乱しすぎて言葉を理解していない。


「魔物は連れて来れませんわよ。こちらのお仲間がやっつけましたし。町中を遺体の血で汚す訳にはいきませんわ」

「アレを倒したのか!? ……い、いや! 仮に倒したとて、この私が魔物を操り、悪事を働いている証拠でもあるのかね!? 無いものをあると決めつけての蛮行なら貴様たちはとんだ大罪人だ!!」

「魔物以外の証拠ならとっくに探させてますわ。リツさん!」

「こちらでございます」


 私が右手を掲げると同時に入室してきたリツさんが手渡してきた(ブツ)を見て、町長は瞬く間に青ざめる。


「そ、それはッ!?」

「やはりありましたわね裏帳簿。魔物討伐依頼費をでっち上げ、私財の肥やしとしている以上は必須の産物ですもの。うろ覚えで魔物を呼び寄せて依頼費ほざいて「こんな頻繁に来る?」「費用変わってない?」と疑問を抱かれ調べられないよう辻褄を合わせるためにも! ……って、汚ぇ字ですわね。字崩れが過ぎて解読班が必要じゃあございませんこと?」


「あぁ、それと町長さんよ。魔物を操った証拠についてだが、余程の手練じゃなければ操作系魔法は対象者・対象物に使用した残穢が1龍週間は残るのが定石で、あんたの洗脳魔法の残穢は思いっきり残ってた。魔王軍に通報すれば2日と経たずに来れる町だし、ここでしらばっくれようが、あんたに辿り着かれるのは時間の問題だぜ」


「ッッ!!?? そ……そんな……」


 ジェックさんの更なる追撃に、町長は遂に膝から崩れて項垂れましたとさ。


 それでも、町長は喚くのを止めません。


「と、というか貴様たちは旅の者だろう!? 私を裁いたとて何の得がある!!」

「超ありですわ!」

「ひいっ!?」


 町長の股の間を勢いよく踏み鳴らして、(わたくし)はズイっと顔を突き出して凄みを利かせる。


(わたくし)たちは諸事情ありまして追われる身。なれば道行く先での問題事を超解決すれば、追手は実態調査に時間と人員を割かざるを得なくなりますから首を突っ込む価値は十二分にありますわ。それ以上に──!」


 (わたくし)は拳を握りしめ、最も抱いていた内なる怒りを町長に向けて爆発させる!


「穢れを知らぬ幼子に、貴方は『病気かも』と心配させたことが腹立たしくてなりませんわッッ!! ということで、辻褄合わせのためにも今すぐ体調不良になりなさい!! でないとこの怒りは到底収まりませんことよッッ!!」

「そ、そんな無茶苦茶なッ!? 今は風邪の時期じゃあないし、どうやって身体を壊せと言うのだッ!?」

「でしたら、お誂え向きのがありますわ」


 そう言って傍に寄ってきた、つい先程まで伝書鳩を飛ばしていたリツさんの手には、一本のボトルが握られていた。


「リツさん、それは?」

「裏帳簿捜索中に見つけ、何かに使えるやもと持ち出したお酒でございます。世話役(メイド)の先輩方が分け合って飲んでいたのですが、原液のまま飲めば1龍ヶ月は喉が大爆散して喋れないこと確定の、水割りを前提とした激強度数酒ですわ」


「ほぉ……へぇ…………お二方」


 (わたくし)が指を鳴らすや否や、ジェックさんは即座に町長を羽交い締め、リツさんは蓋の開いたボトルを手渡してくるなり町長の口を強引に開けさせた!


「はい飲ーんで飲ーんで飲んで! 飲ーんで飲ーんで飲んで!!」

「一気ですわ、一気ですわ」

「町長の〜〜! ちょっといいとこ見てみたい〜〜ッッ!!!!」

「イヤアアァァァァアアアァァァァアアア!!!! ガボゲボグボボボボッッッ!!!!!!」


 悪は成敗された!

※お酒は用法・用量を守って楽しみましょう。


第6話→本日『17:00』

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