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第41話「第一回戦・第二試合ですわ!」

前回のあらすじ!

本戦開始。師弟対決!


【現在の偽名】

姫……フィーリ

ジェック……ジャック

リツ……リラ

「お疲れ!」


 選手用席に現れたジェックさんを、(わたくし)はハイタッチで出迎えた。


「完封勝ち、お見事でした! 一度も攻撃受けるどころか、擦り傷も作ってないですよね?」

「おう。これも師匠のおかげだな。迂闊に魔法使えないんだから、とにかく肉弾戦で制しろ──ってあらゆる戦法叩き込まれたもんだ」

「ああ、グロウさんと出会った日に話してた方ですか」


 (わたくし)の膝に乗っているルルちゃんともハイタッチを交わすジェックさんには師匠が存在する。魔王軍兵士時代に「血筋で燻っていいヤツじゃない」と時間を作っては直々に鍛えてくれたんだそうな。ゴブリンに襲撃された村の子どもを庇って痛手を負った末、遅れをとったと魔王から咎められて解雇されてしまったらしいが。


「そのお師匠さまって何方に住居を構えていますの? 魔界西方面(こちら)側なら、大会後にでもこっそり会いに行きます?」

「いや、いいよ。詳しい住所知らねんだ。そもそもの話、魔王城から南東方面みたいだしな」

「あー……それじゃあ会いようがないですわね。ざっくりとしか知らないなら尚更」

「そういうこった。それより次の試合観戦()ようぜ。リラだったろ」


 ジェックさんは言って、ピッ──と武舞台(ステージ)を指差した。

 第二試合出場者は『リラ』名義で参加登録した我らが世話役(メイド)リツさん。一行(いっこう)から2人続いての出場だ。因みに(わたくし)は後半。


「そうですわね。今はリラさんの応援に集中するとしましょう。貴方はホニョちゃんを抱えてくださいまし」


 おうよ──とホニョちゃんを持ち上げるジェックさんを眺める傍らで、ルルちゃんが質問を投げてくる。


「つぎのひとは、どんなひとなのー?」

「確かマール選手でしたわね。ゴーレムにも臆せず堅実な戦いで第四位進出を果たした方ですわ」

「どんなたたかいかたなのー?」

「印象に残ってませんわねー。(わたくし)(わたくし)でゴーレム相手に精一杯でしたから。というかルルちゃんも覚えてないんですのね?」

「フィーリさんたちみてたー」

「えっ可愛いッ。キッス」

「ゔぇー」

「なんです今の反応嫌だったのですかでしたら(わたくし)立ち直れない!!」

「べつにいやじゃないのー」

「言質とったァ!! チュチュチュチュチュ!!」

「ゔぇ〜」

「母性爆発させてねぇで観戦()てやろうや。出てきたぞ」


 ジェックさんに言われて我に返れば、ちょうどリツさんがスタート位置に立ったところだった。

 司会者が魔力拡声石を響かせる。


「さぁ、続きまして第二試合! 先ずは、第四位で進出を果たした『蒼チーム』のマール選手ゥゥ!! 前大会から2連続で本戦トーナメント進出を決めた三つ子冒険者の長男は3連覇者に臨めるか乞うご期待です!!」


 本戦トーナメント経験者だったか。現状兄弟以外の印象はないが、人は見かけによらないものですわ。


「対するは今大会出場『紅チーム』がひとり、リラ選手ゥゥ!! ゴーレムの頭部を一撃で蹴り砕いた足技は第二試合でも通用するでしょうかァァ!!」


 リツさんは完全に『足技武人』のイメージで定着してしまっている。タミテミの町で購入した弓矢はほぼお荷物で、予選でも一切使わなかったのだから当然ではあるが。チョモ村でも結構『へ〜ん……』て外してましたし。

 なれば大会後、二束三文でも武具屋で売ってしまおうか? などとあれこれ思案しているうちに「試合開始ィ!!」とゴングが鳴った。


 リツさんは早速距離を取らんとバックステップを決める。彼女の超高速蹴りは一定の蓄積(チャージ)を必要とするのだ。魔王城『中庭』でもチョモ村『大活祭(だいかっさい)』でも今大会予選の『巨人(ゴーレム)狩り』でも例外はなかった。


「……ッ!!」


 しかし、彼女は直ぐに距離を詰められ、応戦を迫られる。表情にこそ出さないが、非常に戦いにくそうですわ。


「リラ嬢ちゃんよ! 予選ではちょっとしか観察()れてねぇが、ご自慢の蹴りを放つ際は必ず蓄積(チャージ)してただろう?! その弓矢も新品並みに綺麗な辺り、遠距離戦法(スタイル)を印象付けるための偽戦法(ブラフ)なのは一目瞭然!! 矢筒の蓋が閉まってるのも矢を落とさない動き方を知らない、扱いきれていない証左だ!!」


 なんと、リツさんの必須動作も、弓矢を使い込んでいないのも見抜かれている! 2大会連続本戦出場の実績は伊達じゃあないですわ!!


「なんと!! 先制を決めたマール選手、予選の間にリラ選手の観察・分析をしっかり済ませていたァ!! 2大会連続本戦出場なだけあり、事前準備には余念が無ァい!! リラ選手はここから逆転の一手を放てるかァ!?」


 司会者の実況に観衆は大いに歓声をあげる。


「ふむ……ていっ」

「おおッ!?」


 これにリツさんは一瞬逡巡してみせると、矢筒の蓋を外して中身を無造作にブチ撒けて、マール選手の動きを止めた! 止まったのは一瞬ながらも、リツさんが距離を離すには充分な猶予ですわ!


「んん……?!」


 しかし、リラさんの動きは鈍い。毒魔法を使われた様子もないのに何故……?


「そこッ!」

「! きゃっ……!」


 そこへ体勢を整えたマール選手がすかさず爪攻撃を再開するが、リツさんは尻もちを着くように……否、尻もちを着く形で土──というか砂? を巻き上げながら奇跡的に回避する。


「……あッ!!」


 今ので確信した! リツさんの動きが悪くなったんじゃない、あからさまに柔らかくなった地面で彼女の足が踏ん張れなくなっているのだ!!


 これに司会者はわざとらしい反応を示し、観衆の興味を引く。


「おやおやおや、どういうことでしょう?! 魔法・アイテムの影響が残っていないか入念に確認(チェック)した筈の武舞台(ステージ)の地面が砂になっております! しかもリラ選手の足元に限ってです! それは何故なのか、3連覇者のエイティ・フットさん解説願います!!」


 司会者は悪びれもせずに再度エイティさんに解説を求める。これに彼は「次はちゃんと用意しとけ!」と叱りながらも再び応じる。


「あれはマールの魔法だな! 指定箇所を『砂化』若しくは『変質』させたってところだろうよ! 足元が落ち着かないのはリラの嬢ちゃんにはちと酷だろうぜ!!」


 それでは元の子もない! 完全に優位(メタ)られてしまったこの状況では、このまま完封負けも有り得る! リツさんには悪いが逆転の手立てが思いつかない!!


 (わたくし)が頭を抱えている間にも、リツさんの足元の砂化は進んでいき、遂には蟻地獄と化した! 彼女は囚われ、距離をとることも叶わなくなってしまった!


「これで終いだッ!!」


 マール選手は蟻地獄へ飛び込み、懸命に這い上がろうとするリツさんへ裏拳の構えを取った!


「ふんっ……!」

「おおッ……!?」


 ──瞬間、リツさんは大量の砂煙を上げて跳躍した! 蟻地獄から抜け出した!


「なんと! リラ選手、瞬間的に脚力を蓄積(チャージ)して強引に脱出したァァァ! これにはマール選手もビックリだァァァ!! そしてェ──?!」


「はっ!」


 最寄りの土塊に右足を着けるなり、蓄積(チャージ)済みの脚力を解放して、砲弾(キャノンボール)頭突きを解き放った!


「グほォォッ!?」


 マール選手は目にも止まらぬ超速砲弾(キャノンボール)頭突きを腹部へ諸に喰らい、そのまま壁際まで吹っ飛ばされて激突した!

 そして、ちょうど鳩尾に入ってしまったのでしょう。暫く痙攣した後に、リツさんが立ち上がるのに合わせて気絶しましたとさ。


「マール選手、戦闘不能! リラ選手の勝利です!!」


 わっ──! と観衆が湧き、一部の観衆は名残惜しそうに拍手を贈る。恐らくはマール選手のファンだろう。


 高揚が冷めやらぬ中、司会者はエイティさんに解説を求める。


「最後の最後で素晴らしい逆転劇でした! しかしリラ選手は足元が不安定な中、どうして蓄積(チャージ)できたのでしょうか?!」

「蟻地獄から這い上がる際、砂で脚が見えにくいのを利用してコッソリ蓄積(チャージ)してやがったな! んで、左脚の筋肉だけで無理やり脱出したら、後は残しといた右脚を解放して砲弾(キャノンボール)頭突きよ! 足技ばかり披露してきたからこそ虚をつけた感じだったな!!」


「ということでした! 皆さま、リラ選手の逆転劇に今一度大きな拍手を〜〜ッッ!!」


 リツさんは、大喝采に包まれた!!

「しかし……世話役(メイド)なのによくあれほど動けますわね」

世話役(メイド)だからじゃね?」

「適当な返事!」


ということで、珍しいリツさん主体の回でした!

評価・ブクマ・リアクション・感想をいただけたら、リツさん直々にお礼を申し上げます!

夢の中に。 


次→明日『18:00』

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