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第40話「第一回戦・第一試合ですわ!」

前回のあらすじ!

本戦前、戦士たちの談笑。


【現在の偽名】

姫……フィーリ

ジェック……ジャック

リツ……リラ

「さぁ、皆さまお待たせしました! 只今より、本戦トーナメント第一回戦・第一試合を始めます!!」


 ドンドン、パフパフ──!

 太鼓と金楽器が鳴り、観衆席がどっと湧く。やはり本戦トーナメントなだけあって、観衆の高揚感(テンション)は予選の比ではない。


 (わたくし)はリツさんと観衆席のルルちゃん・ホニョちゃんを連れて、選手用に宛てがわれた最前席に居た(運営スタッフ・選手の了承有り)。選手たちは此処で他の選手を観察・分析して後の激突に備える。

 この観察・分析で最も得をしているのがエイティさん。予選一位通過を果たした彼の第一試合は最後と確約されていて、それだけ観察・分析できる優位性(アドバンテージ)があった。因みに、一位以外の第一試合は完全ランダム。


 そして、(わたくし)たちが戦う武舞台(ステージ)はというと、予選のゴーレムだった土塊が至るところに鎮座していた。


武舞台(ステージ)説明をいたします! ご覧の通り、戦士たちには先程倒したゴーレムの残骸を利用してもらいます! 残骸に隠れながら相手の動向を把握するも善し! 影から不意を突くのも善し! なんなら残骸ごと吹き飛ばすも善しです! どのように残骸を有効活用するかが戦士たちには問われます! ということで、前置きはこれくらいにして早速選手をお呼びいたしましょう! 両選手入場してください!!」


 司会者が促せば武舞台(ステージ)にある北の入場口から、背中の大剣柄に右手を添えたフルフェイスマスクが現れる。ジェックさんだ。


「北コーナーから現れたのは初登場、第二位突破チームのジャック選手! 強大な魔力を持ちながら魔法を一切使わずにゴーレムを転倒させまくったその剛力が何処まで通用するのか要注目です!!」


「リラさん。彼、魔法使うと思います?」

「使わないかと。迂闊にチョモ村級の威力を放てば大闘技場を吹き飛ばして大会どころではなくなりますし、何より彼女との手合わせを無下にしてしまうのは彼も存じ上げているかと」


 それもそうですわね──と、武舞台(ステージ)に顔を戻せば、ちょうど件の彼女が南の入場口から入ってきたところだった。


「対して、南コーナーからはグロウ選手! 同じく初出場ながらチームを第四位に導いた『先読み』は第一試合でも火を噴くでしょうか?!」


 控え室での懸念を他所に、当人たちの手合わせはあっさり実現していた。「トーナメント表が完成しました!」と報せが入って見に行けば、初っ端から念願叶っていて、思わず「はぁぁぁぁ……!!」と脱力したグロウさんのお尻がまぁ目に焼き付いたこと。


 そんなお尻……あ違った、グロウさんは胸に手を添えて深呼吸すると、腰に提げた片手剣を右手に取り、右半身を90度……前に構えた。


「師匠……胸、お借りします!!」

「ばっちこい!!」


 オォオォオ──!!

 師弟の意思表明に観衆が湧いた。


「さて! やる気充分な両選手と観衆の皆さまにここで改めてルールをご説明! 戦士方には伝えていますが、転倒した相手が3秒間立ち上がれず戦闘不能と見なされるか、或いは『まいった!』と降参すればその時点で立っていた方の勝利となります! 戦闘不能に追い込む手段は魔法・武器・アイテムなんでもありですが、死亡させたら即失格となりますのでご注意ください! ここまで聞いて質問ありますか?!」


 司会者が耳を澄ませると、「はい」と(わたくし)の膝に腰掛けるルルちゃんが手を挙げる。


「どうして3びょうなのー?」

「良い質問ですお嬢ちゃん! 冒険者が魔物と戦う際、3秒間動けなかったら確実にボッコボコのギッタギタにされてしまうから『3秒の残火』という呼び名で特に警戒する秒数と知られているのです! 本大会ではその『3秒の残火』を採用させていただきました! 最後まで諦めないでほしいので!!」

「なるへそー」


 他に質問のある方──?! と挙手を願う司会者に、(わたくし)も「はい」と手を挙げる。


「武器の使用を許可しておいて、殺めないよう徹底しろは無理がございませんこと? 魔力を持たない方が出場していた場合、武器に頼らざるを得ませんから少々酷ではなくて?」


 実際、これで不利益被るのはジェックさんとリツさんなのだ。これで「ドンマイ!」とほざくようなら失格上等でビンタしてやりましょう。


「これまた有益な質問ありがとうございます! 殺傷力を限りなく減らすべく、各選手の武器には緩衝材代わりの防護魔法を運営スタッフが付与する運びとなっておりますので、そこはご安心ください!!」


 そう言われて目を凝らせば……なるほど。ジェックさんの大剣『大海』を覆うように魔力が施されていた。

 なら問題はない。(わたくし)は「納得いたしました」とビンタに備えていた手を下げた。


「他に質問はありますか?! ……ないですね! では3カウント!!」


 ドン! ドン! と大太鼓が鳴り響き、緊張を高めていく。


「試合、開始ィ!!」


「ふッ!!」

「おお?」


 カーン……! とゴングが鳴るや否や、グロウさんは左手に隠し持っていた煙玉を投げて煙幕を焚く。右半身を前に出していた理由はコレか。

 彼女の攻撃は、戦闘前から始まっていた!


「ふっ! ふんッ! ふんぬらばッ!!」

「お? お?! おお!!」


 グロウさんは、瞬時に距離を取ったジェックさんの後ろに回り込んで片手剣の連撃を仕掛ける。全て躱されるとまた煙玉を焚いて回避先に斬撃・刺突を置いていく。

 若しくは爆発玉をジェックさんの往く先々に投げつけては足留め……あわよくば戦闘不能を積極的に狙っていた。ゴブリン相手にへっぴり腰で己を自嘲していたとは思えない攻撃的戦法(スタイル)だった!

 ジェックさんの「相手の思考透視()たりとかできそうだけどなぁ」から、良くぞここまで! 本ッ当に成長している!!


「さぁ先手を打ったのは弟子のグロウ選手ゥ! 予選第四位通過に恥じない『先読み』を駆使して一方的に攻撃を仕掛けていくぅ! 対する師匠ジャック選手は全部躱しながらもあまりの連撃に反撃の隙を見出せないのか防戦一方、手も足も出なァァい!!」


 これにジェックさんは「ハハッ!」とフルフェイス越しに笑いを零す。


「やるじゃねぇかグロウ! 手合わせをせがまれた2龍ヶ月前を思えば太鼓判を押してやりたい成長っぷりだ!」

「ありがとうございます!」

「だが! オマエの戦法(スタイル)には致命的欠陥が2つある! それを教えてほしけりゃ、俺に大剣を使わせてみろォ!!」

「分ッかりましたァ!!」


 グロウさんは元気いっぱいに攻撃頻度を更に増やしていく。煽っているが、ジェックさんはどうやって逆転する気なのでしょうか?



 ──が、(わたくし)の疑問は直ぐに解消される。



「?! あれ?!」


 グロウさんがギョッ! と目を見開いたかと思えば、突然連撃が噛み合わなくなったのだ。避けられつつも常に不意を突いていた近接攻撃は余裕で対応され始めたし、爆発玉の予測投げ精度もガクンと落ちている。


「ああっと!? グロウ選手の猛攻が突如として超減速!! 一体どうしたというのでしょうか?! 3連覇者のエイティ・フットさぁーん!?」

「解説役くらい用意しておけバカヤロー!! まぁするが!!」


 してあげるんかい。


「先に言っておくぜ!! この勝負、ジャックの坊主のほぼ勝ち確だ!! 余程のことがなけりゃグロウの嬢ちゃんはもう覆せないぜ!!」

「それは何故でしょうか?!」

「先ず、勘違いしているヤツが居るだろうから先に言うが、嬢ちゃんの魔法は『予見』の類じゃあねェ!! 本当に『予見』ならゴーレムの出現(スポーン)位置を予見して出現即殺(リスキル)を繰り返せば済む話だったからな!! それをしねぇで律儀にゴーレムが出現(スポーン)してから相手してたってこたぁ、つまり!! 大方嬢ちゃんはゴーレムの殴るか蹴るかの思考回路を読んでいたんだ!! それが『先読み』の正体だ!!」


 おお、エイティさん鋭い! 大混戦だった予選時点から観察・分析をしていたとは、3連覇者の名に恥じない歴戦の猛者ですわ!


「では、その『先読み』の精度が落ちたのにはどのような訳がありますか?! 見た限り、彼女の魔力は底をついていないようですが?!」

「単純な話だ!! 恐らくだが、坊主が(てめぇ)の思考を制限したんだ!! 今までは「あそこに移動しよう」「このタイミングで動こう」と考えていたのを、坊主は時間をかけることで頭の中を「倒す」「勝つ」だけで満たした!! だから嬢ちゃんは坊主の行動パターンを読めなくなって、結果として動きがもたついちまってるんだ!! これこそが坊主の言っていた嬢ちゃんの戦法(スタイル)の弱点其ノ壱だ!!」


「だったら──!」


 グロウさんは煙玉を大量に取り出すと、それらを一気に爆発させてジェックさんを完全に包み込む。


「……ッ!!」


 そして、掛け声を殺して、着火した爆発玉を煙幕の中心へ投げ込んだ!

 もう魔法に頼れないと悟るなり、一撃必殺へ切り替えた! 果たして通用するのか!?


「ぎゃふんッ!?」


 ──かと思えば、爆発玉は豪速球で返ってきて、グロウさんの額に直撃(デッドボール)! 直後に一回転した彼女を巻き込む形で爆発した!


「ぶええ……!!」


 黒煙に塗れた彼女が地面に這いつくばり、「3カウントォ!」が始まった!

 一方、晴れた煙幕の中には、バットの要領で打ち返したのだろう、大剣をフルスイングしたジェックさんの立ち姿があった。彼のことだから煙幕の動きと風切り音で弾道・弾速を見切ったのだろう。

 ジャックさんは大剣を背負い直して、地面に突っ伏し続けるグロウさんに顔を向ける。


「こうなりかねんから、戦闘時間は短めを心掛け、投擲はなるべく脚を狙いなさい。以上!!」

「あ、ありがとう、ございました……ぐふっ……!!」


 感謝の言葉を最後に、グロウさんは意識を手放した。


「3カウント! グロウ選手、戦闘不能! ジェック選手、第二試合進出決定ィィィッッ!!」


 観衆席中から、大歓声が湧き上がった!!

ずっと師弟対決書きたかったのでスッキリ♪

盛り上がったなら足跡残してくださると嬉しいです!


次→明日『18:00』

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