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第29話「海龍さまですわ!」

前回のあらすじ!

VSアッチョンバー!!


【船での偽名】

姫……フィーナ

ジェック……ジック

リツ……ミリ

ルル……ムム

「えー、海龍シュウウさま。先ずはアッチョンバーから助けてくださりありがとうございました」

「シュウウでいい。それと、アタシは小腹が空いてたからアッチョンバーを食べたに過ぎないから礼には及ばんさ。ま、気が済まないならそこのタイを食わせてくれ。もう少し食べたい気分なんだ」

「それで良ければ喜んで。ミリさん、お願いします!」

「かしこまりました」


 そう返してリツさんは「キッチンお借りします」と、シュウウさまが()()()たタイの山から複数匹持ち出して船内へ去っていく。彼女のことだから暫く待てば、それはもう絶品のタイ()料理がテーブルを埋め尽くすだろう。


「しかし……よくもまぁ、それほどの()()ができますわね」


 (わたくし)は顔を正面に戻しながら、シュウウさまの姿に感嘆の声を漏らした。


 シュウウさまは「休憩させな」と人型になって船に乗り込んできていた。

 とは言ってもあくまで人型を模しているだけで、角と龍頭に尻尾、果てには全身に鱗を帯びた青肌と、異形なのが一目瞭然の風貌だった。彼女としては最低限形を成せれば構わないのだろう。自前の服はかなり凝っているが。


「そうかい? アタシら龍なら当たり前に使ってる力の1つさ。アンタら人は違うのかい?」

「魔法は基本1人ひとつですわ」

「不便なもんだねぇ。だからこそ肉体を鍛えに鍛えてナイスバルクになるんだろうね」

「そう言うシュウウさまは何故ナイスバルクに拘るんですの? プルタ避暑地の『(プルタ)(シー)(マッスル)(コンテスト)』優勝者に祝福を授けると言い伝えられていますし、相当好んでいると見受けられます」


 (わたくし)の発言に、ふっはっは──とシュウウさまは笑う。


「生命が限られてる人々が懸命に鍛えて生き様を刻もうとする姿は愛いではないか。アンタらがそこの犬を愛でるようなものではないか?」


 龍からすれば人間は愛玩動物なのか。ちょっと複雑だが、そういうものだと納得する。


「でしたら、他の龍にも我々地上の者を愛でる感覚はあるんですの? (わたくし)、気になりますわ」

「あるぞ。地龍は生命の穏やかな生活音を子守唄代わりに眠っとるし、空龍も空からぼんやり眺めては鳥や小動物の営みが好ましいと微笑んどったわ」


 ほーへーはー。

 完全に赤子や子ども、愛玩動物を可愛がる感覚でいらっしゃる。これが世界を作った上位存在というものか。

 きっと(わたくし)が民を無条件に愛しているのと同じ心持ちなのだろうなと自分なりの言葉で落とし込んでいれば、グレストさんが口を挟む。


「そうやって俺らを見守っててくれてたのは嬉しいもんだな。それはそうと、どうしてこの世界を作ったんだ? 神さまは世界創造に関与してないんだろ?」


 言われてみれば、龍は神と別の存在とプルタ避暑地でも聞いている。創造主当事者に直接聞けるのは貴重な機会だった。


 この質問に「それは簡単さ」と彼女は答える。


「もし世界を創造(つく)り、生命を育ませたらどうなるのかを見たくなったのさ。何も無い空間で退屈だったしね。地龍と空龍も同感だったみたいで、世界を創造(つく)った7日間は「ああしよう」「こうしよう」と和気藹々話し合ってたものさ。因みに神呼ばわりされてるのも龍だよ」


 おっと?

 このお方、しれっと歴史学者をひっくり返すトンデモ発言を豪速球でぶん投げてまいりましたわ!?


「お待ちくださいましシュウウさま。(わたくし)が見たタペストリーの神さまは人の姿でしたわ」

「それは人に変身しておったからだな。言っただろう? 変身はアタシら龍が当たり前に持ってる力の1つだってさ」

「では何故、神さまは人の姿で降臨なさったのでしょうか?」

「世界を創造(つく)ったアタシと地龍、空龍とごっちゃにされたくなかったんだとさ。最も、後々から七龍が曜日の概念生んだ所為で、人の姿だった自分らが悪目立ちしてると当龍らは不貞腐れてたよ。ふっはっは!」


 この笑いに(わたくし)たちは「うわぁ……」と居たたまれなくなり、堪えきれなくなったのだろうジェックさんが言葉を零す。


「一番恥ずかしいやつじゃねぇか。当時は真剣だったんだろうが、後々になって頭抱えてたのが容易に想像付くよ」

「そう思うとジックさんは上手く馴染んでますわよね。(わたくし)たち一行(パーティ)で唯一の殿方でもの。あ、言っておきますがグレストさんはソロパですわよ」

「待って、そういう形で俺に飛び火する?」

「面白い反応してくれそうだったので!」

「このやろう!」

「ふっはっは! 愛いねぇ愛いねぇ。そうやって面白可笑しく言い合ってる姿を見てると退屈しないよ」


 故にだ──とシュウウさまは眉を顰める。


「昨今の魔王とやらはいけ好かないね。アイツが戦争を起こした所為で生命の行き来はごっそり減るわ潰えるわでアタシらにとって退屈極まりんことばかり。最近は集まる度に「魔王の所為でつまんねぇなぁ……」と愚痴り合ってるよ」

「おおっと、ここでも出ましたか魔王のお馬鹿さん。龍の皆様方の目上のたんこぶにまで成り下がっていたとは、改めて君主の風上にも置けませんわ。ねぇ、ジックさん?」

「本当だよ。元部下として恥ずかしい話だ」

「なんだ、アンタは魔王のところに居たのかい? なら離れて正解だね。アタシの見立てだと、アイツは碌な最後を迎えないよ」

「そうであってほしいね」


 ジェックさんは吐き捨てるように仰る。

 その様を見て、(わたくし)はなんともうら悲しくなった。

 (わたくし)は両親から愛されて育ってきた自負があるが、彼は決してそうではない。既に亡くなられている彼の母親については何も聞いていないが、母子家庭だったことを思えば、親子で過ごせる時間は少なかったのが容易に想像付く。

 そうなると、自身を入軍させながら「隠し子だから」と冷遇してきた父親たる魔王への憎悪は計り知れない。実際、魔王の話になる度に恨み節を吐いている辺り、相当拗らせている。

 その憎悪がいつか最悪な形で爆発するのではないか、そうならないよう話題に上る度に茶化したり、先手を打って吐き出させている気でいるが、正直ちょっとだけ不安だったりする。だって本人でしか乗り越えようがない憎悪だもの。


「お待たせいたしました」


 思考を巡らせているうちに心が嫌な音を立て始めたそんな時、リツさんが戻ってきた。


「お食事の用意が出来ましたのでご案内いたします。沈む話よりも新鮮な食事をお楽しみませんか? ムムさまとホニョさまは既に待機しております故」


 リツさん、ナイスタイミング。


「ありがとうございます! だそうですので皆さん、温かいうちにご馳走になるとしましょう!」

「だな。なんだかんだ、そろそろ昼か。匂いだけで腹減ってきた」

「ほう、人は決まった時間で食べるものなのか? どれ、この折に異文化に触れるとしてみよう」

「ほんじゃ、儂は見張っとるよ。何か動きがあったら知らせるわい」

「なら後で食事持ってくよ! そしたら一緒に見張りするから、食べながら快晴冒険団の話聞かせてくれ!」

「いいよ♨」

「しゃオラァッ!!」


 ということで、(わたくし)たちは食堂へ向かった。

こういう上位種ならではの大物感好きです♨


次→明日『18:00』

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