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第20話「プルタ避暑地ですわ!」

前回のあらすじ!

暴れん坊レイン。

 野生の温泉騒ぎから2日後──、姫さま一方は『プルタ避暑地』門前に到着した。


「それではルルちゃん、今回もお願いします」

「はーいなのー」


 ルルちゃんが健やかに手を挙げて、(わたくし)の耳に「みゅい〜……」と魔力を纏わせる。チョモ村では『黒眼族』の姿にしてもらっていましたが、脱走において同じ格好を連続採用しないのが変装時の嗜みでしてよ。脱走のエキスパートたる(わたくし)が試行錯誤を経て辿り着いた結論ですから間違いありませんわ。


「──とか思ってんだろ、エキスパート」

「そこ、読心しない」

「できたよー」


 ジェックさんと軽口を叩き合っているうちに変装が終わる。今回の(わたくし)はいつもの角型カチューシャと合わせて『(つの)が生えた尖耳(せんじ)族』でしてよ。


「ありがとうございます。それでは最後の確認です。此処での(わたくし)の名前は()()()()。皆さんは()()()さん、()()さん、()()ちゃんですわ。よろしくて?」

「ジックでーす」

「ミリですわ」

「ムムなのー」

「よろしい! それじゃあ、改めて参りましょう! いざ、プルタ避暑地!!」


 ルルちゃんにお礼を言って、(わたくし)たちは『プルタ避暑地』門を潜った。

 そして、潜った先には、丁寧綺麗に塗装された緩い下り坂の街道と純白住宅・純白店舗、更に進んだ先には視界いっぱいの海が広がっていた!


「あら、綺麗な街並みですわね! 爺やの娘夫婦が営む避暑地のホテルを思い出しますわ!」

「こうして訪れるのは初めてだな。今までは海に来ることあっても魔物退治で、遊ぶどころかゆっくり眺める暇すらなかった」

「あぁ、うちの最年長の親友(マブ)も愚痴ってましたわね。「仕事なのは分かるけど、魔物倒して即帰還は有り得なくね!?」って」

「仕事だとどうしてもなぁ。そんじゃ、早速聞き込むとしようか。こんだけ空がひらけてるんだから鳥魔族(エイジン)の目撃情報あるだろ」

「ちょちょちょい、何をもう始める気になってるんですか。聞き込むのは構いませんが観光しがてらにしましょうよ」

「なんで俺が譲歩されてんだよ。なんだかんだでチョモ村からプルタ避暑地(ここ)まで何日も歩いてきてんだから、住民の記憶があやふやになってても不思議じゃない。『情報は新鮮なうちに』だ」

「でしたら、あちらは如何でしょうか?」


 そう割って入ってきたリツさんが示した先には屋台があり、多くの人々で賑わっていた。


「付近の方にお尋ねしましたところ、此方は観光港を遠くに併設しているようでして、内海を渡ってきた方々を狙った屋台通りを営んでいるとのことです。そこなら聞き込みをしながら食べ歩きをする、御二方両者の要望を一度に叶えられますかと。ホニョさまの連れ歩きも可能ですわ」

「グッジョブです、ミリさん! 善は急げで楽し……聞いてみるとしましょう!!」

「目的逆転してるよな?! してるよな! 此処に来た目的忘れてねぇよな?!」

「だったら聞き込み云々話してねぇですわ! 先ずはジュースで喉を潤すとしますわよ〜〜ッッ!!」

「かしこまりました」

「うるおすのー」

「イヌッ!」

「忘れてねぇよなーーッッ?!」


 ◇ ◇ ◇


 そして、何の成果も得られないまま、6件の屋台で皆と合流したところで、遂に情報が入った。


「鳥魔族? もしかしてカラス型のやつか?」

「知ってますの?! 其の方は何方へ飛んでいきました?!」

「あっちだよ」


 そう言って、屋台の角魔族おじさまは海を指差しました。


「余程急いでだのかな、灯台でちょっと羽休めしてたかと思えば、プルタの街並みには目もくれずに西南西の方へ飛んでったよ。つっても、何日か前だったからそれ以上は分からんな」

「それだけ分かれば充分ですありがとうございます! ミリさん、早急に船の手配を──!!」

「おっと、急ぎの用事があるなら残念だったな。少なくとも今日の船便はもうないよ」

「なんですと?!」


 反射的に海を眺めるが、何処までも続いてそうな水辺線が荒波立つ気配は感じられない。それなのにどうしてかと訊こうとすれば、ちょうどジェックさんが代わりに訊いてくれた。


「今日いっぱい全便運休? 天気も良さそうなのにどうしてだ?」

「天気の問題じゃあないぞ。詳しくはイベントスタッフに聞いてみな。あの灯台の下で受付してるから」

「イベント? なんのイベントですの?」

「プルタ避暑地恒例イベントさ。船便の運行についても関わってるから、詳しい話はそっちで訊けばいい。はいよ、フランクフルトお待ち」

「ありがとうございます! 助かりました!」

「ちゃっかり注文してたんかい」

情報(じょうふぉう)のタダ聞きはよ(うぉ)(ふぃ)くありま()んわ。ううん、デリシャス」

「至極真っ当だが頬張りながら食べんなや。喋るか食うかどっちかにしろ。ムムに悪影響だ」

「…………」

「そっち優先かい」

「どっちもはできないのー?」

「大概口から食べ物が出ちまうからな。だからフィーナは全力で反面教師にしてくれ」

()ょっと()ックさん!? (ふぁたふし)(ある)手本(へほん)()ないでくだ(ふば)さいまし!!」

「フィーナさま、ムムさまが真似してしまいますので、お口は閉じてくださいますよう」

「さーせん!」

「や〜い怒られた〜〜あだっ!」

「ジックさまも煽りませぬよう」

「うっす……」

「へ〜い! ジックさん頭が上がらない〜! ぴゃあっ!」

「フィーナさまも調子に乗りませぬよう。次やったら脇腹どころでないことをご了承いただきたく」

「はい……」


 (わたくし)とジェックさんは喧嘩両成敗されて、(わたくし)たちはイベント受付をしているという灯台の下へ向かった。


 ところで……リツさんはどうして今回に限っては叱ってきたのでしょう? 少し頭の中で整理して推察してみる。


 ……あぁ、なるほど。


 今までのは身内のじゃれあいですが、今回は食事マナーが絡んでいたからですわね。

リツさんがちゃんと叱れる人だと分かって安心してる。


ということで新章開始です。

面白いと思ったら広告下の『☆☆☆☆☆』『Good』、続きが気になったら『ブックマーク』を押していただけると幸いです。


次→明日『18:00』

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