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第15話「予想外ですわ!」

前回のあらすじ!!

大活祭開始。


【チョモ村での偽名】

姫……フィーラ

ジェック……シック

リツ……ナノ

ルル……ルル

 皆調子よく魔物たちをなぎ倒していく。これなら案外早く終わるかも!


 ──そう思っていた瞬間(とき)が、(わたくし)にもありました。


「埒が明かねぇですわ〜〜〜〜ッッ!!!!!!」


 夕焼けが近付いてくる中で、巨大化させた石を次々投げつけながら、(わたくし)は思わず戦場へ叫んだ。

 過去に「兵士が何と戦ってるのか知っておけ」と何度か魔物大行進(モンスターパレード)の現場を遠眼鏡で見届けさせてもらったことがありますが、見物と戦場でここまで時間の感じ方に差が生じるとは!

 これが転じてか、魔物たちの進撃は一向に衰えないどころか寧ろ増しているように感じられる。決して手を緩めているわけではないのに果ての見えない戦いに疲弊感と焦燥感ばかりが募る。それを他の方も感じているのか、戦場では少しずつ綻びが生じてきていた。


「痛ェーーーーッッ!!!! もうヤダもう後ろ下がるゥゥーーッッ!!」

「日和ってんじゃないよ息子ォ!! アンタの金銭欲はその程度だってのかい?!」

「金よりも生命の方が超価値でしょーが!!」

「今更正気に戻ってんじゃないよ『金の亡者(ゴールド・ゴースト)』がァッッ!!」


 アイラ(総指揮官)さんがネッカ(地上戦闘員)さんの弱音に、親子とは思えない──否、親子だからギリギリ許される無慈悲な罵倒を浴びせる。軽傷で済んでいるものの『命あっての物種』精神が働いて心が折れかけている。


「ヴゥッッ!!」

「ウォーリーさん、大丈夫ですか!! お気を確かにッッ!!」

「わ、我が生涯に一片……の悔いあるわ! 愛犬猫のカヌとフタの譲渡先考えてねェッッ!!」

「憂いを残して戦場に来てんじゃないよ犬猫(イヌネコ)戦闘愛好家がァッッ!!」


 腹部をやられて地面を転がるウォーリー(ブレードハッピー)さんのスットコドッコイに、今さっきまで息子さんをシバいてたアイラさんから語呂の良い叱咤が飛ぶ。案外元気そうではあるがしかし、腹部からは無視できない量の血が流れていた。


「ヒィン…………」

「どうしたクーカ! オマエも腹をやられ……生食()ったなオマエ!?」

「その馬鹿は厠へブチ込んどきな!!」


 そして、イノシシ型魔物相手に涎を垂らしていたクーカさんは、盛大に()()()()やらかしていた。


 と、色々な要素が折り重なって、特筆実力者含め、負傷者が増えてきていた。

 他の方々も集中力が切れつつあるのか攻撃が散漫になってきています。このままではジリ貧ですわ。


「右隣のトゥリさん! こちらの大活祭(だいかっさい)、こんなに時間かかるものなんですの?!」

「いや、今回は珍しく長丁場だ! アンタも急ぎたいっつうのに、面倒なときに来たもんだ!」

「異例でしたのねスッキリしました!」


 これが当たり前でなくて一安心。しかし、それはそれで新たな問題が浮上する。


「とするならば、今回はまた別の原因があると考えてよろしくて?! 変に長引いてるならそう考えるのが妥当かと!!」

「そうだなぁ! 3箇所からの進撃を此処1箇所に集中させてるのもあるが、今回の規模は異常だ! 他に原因あるならもう連絡が来ていい頃──、と言ってたら来た!」


「トリ〜」


 空を見上げるトゥリさんに釣られてみれば、1羽の伝書鳥がアイラ(総指揮官)さんの居る櫓に向かって飛んでいた。


 アイラさんは受け取った伝書を速読するなり目を見開き、(わたくし)たちへの追撃も当然の内容を砦中に告げる。


「全員に通達! 超巨大魔物が進行中! 急いで魔物どもを仕留めて備えッ──!?」


 瞬間、大活祭が始まったときの比じゃない地響きが起こり、アイラさんの言葉が途切れる。

 それが何を意味するのか、(わたくし)たちは否応なく理解した。

 顔を上げると()()は……遠目からでも見て分かる超巨体で、砦を目指して歩いてきていた。


 明らかに『他の原因』たる()()の巨体は、砦門を優に超えていた。



「デカすぎですわ……」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!」



 ありのままの感想が出た瞬間、「うわぁぁぁあッッ!!!?」と悲鳴から間もなく砦門が崩壊する。()()が砦門に()()()()()のだ。


「……ッ!! 地上班、ボサっとしないで退避! 高台班は()()改め『ヌシ』が一歩でも動き始めたらすぐ逃げられるようにしつつ有る限りのバリスタ発射するんだ!!」


 唖然としていたアイラさんが正気に戻って指示を飛ばす。しかし、村人は退避こそすれど、我に返ってバリスタを放つ者は少ない。否応なく()()を想起させるには充分過ぎる超巨体で、しかも地上にはまだ魔物が残っていた。


 ──村人は完全に、心が折れかけていた。


 そこへ立て続けに起こる予想外の事態!!


「フィーラさま!」

「どうしましたのリ……ナノさん?!」

「ルルさまから連絡が! ホニョちゃんが居なくなったそうです!!」

「なんですとォ!?」


 こんなときに何処へ行ったのですかホニョちゃん!? 役割を投げ捨てて探しに行こうかと一瞬脳裏を過ぎったそのときだった!


「イヌッ!」

「え?」


 ポメポメポメ……──!

 鳴き声がした方へ顔を向けると、小さな生命がポメポメと、地上を走っていた。


「ホニョちゃア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ん!!!???」

言ってない気がしてますのでこの際言いますが、ホニョちゃんは『ポメラニアン』型の魔界犬です。


次→明日『18:00』

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