第14話「開戦ですわ!」
前回のあらすじ!!
姫さま一行、各配置につく。
【チョモ村での偽名】
姫……フィーラ
ジェック……シック
リツ……ナノ
ルル……ルル
「魔物到達30秒前!!」
アイラさんがカウントダウンを始めると同時に、地響きが増々強くなる。
「20秒前!!」
いつでも攻撃を仕掛けられるよう、村人たちと武器を構える。
「10秒前!!」
群れを成した魔物の姿が、目視できる距離まで迫ってきた。
「3……2……1……!!」
最前列の魔物が、棘付きバリケードを超えようと、足爪を引っ掛けた。
「一斉掃射ッッ!!」
──刹那、アイラさんの号令が轟いた!
「ギゲェェッ!?」
「グギャアッ!!」
弓とバリスタによる集中砲火を行い、棘付きバリケードを越えようとした魔物を次々と撃ち落としていく。それに思わず足を止めた魔物たちが後ろから押されて棘に刺さっていき、断末魔とともに肉塊と成り果てていく。
このまま終わってくれないものかと安易な願望が私の脳裏を過ぎりつつも、しかし、いつまでもそれは続かない。瞬く間にバリケードの下には魔物の遺骸が積み重なっていき、遂にはバリケードを超える足場となって魔物の侵入を許した!
「地上班、突撃ッッ!! 大活祭の始まりだよッッ!!!!」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」
大活祭開幕!
武装した村人が雄叫びを上げて、こぞって魔物たちへと駆け出した!!
「どりゃあああ!!」
「てーい」
村人たちは突破してきた魔物に得物を振るい、次々と骸へ変えていく。一国の姫として様々な国町村へ足を運んできた身だが、これ程までに戦い慣れた村民は見たことなかった。何より──、
「南西方面! そいつは即殺だよ遠距離型だ!!」
「どいた、どいたァ!!」
「俺らの魔法が火を吹くぜぇ!!」
アイラさんが指定した魔物の一体が「アヂャア!」と炎に包まれ、またある魔物は「イゲゲゲゲ!」と氷の破片に身体を蜂の巣にされる。
軍人でないにも関わらず、村人全員戦闘指揮・技術と魔法の練度が頗る高かった。間引きを経て手負いとなった魔物集団相手なのを抜きにしても、これだけ戦えるなら軍が集団スカウトに動くだろう。私ならお父さまに打診する。
──その中でも、特に秀でた方が3名。
「ヴォーリャアアアアアッッ!!」
己の背丈を遥かに凌駕する巨大剣とそれを軽々扱う筋肉で魔物たちを亡骸へと変えていく男性はウォーリーさん。ジェックさんを連れていった地上班の特攻隊長で、そう呼ばれるだけあって開戦から既に十数体の魔物を撃破していた。しかし──、
「ヒャーハハハハハッハーーッッ!!!! 斬るぜ突くぜ叩き割るぜーーッッ!!!!!!」
彼は明らかにやっべェ方向でハイテンションだった。
恐らくは剣を手に取るととにかく斬り捨てたくなる『ブレードハッピー』。憲兵が見れば一発『要警戒人物リスト』入りになりかねないが、不定期ながらも防衛戦で発散できてるのが不幸中の幸いでしょう。
「シュッ!!」
「プギュッ!!」
その付近で、魔物の心臓を一突きして魅せたネッカさんは細身の青年ながら故に最速最小限の攻撃で魔物を沈めている。自身が力押しの敵わない体躯と理解していて、且つ甚振らずに仕留めきるのは戦闘効率が良いし、何より戦闘相手への慈悲深さを感じられて個人的には高ポイントですわ。
「おほっ♪ コイツの身体綺麗だ。毛皮も爪も大して傷付いてないし高く売れるぞ♪」
前言撤回。魔物を痛めたくないだけですわ!
「品定めは後にしなバカ息子ォ!!」
「ぎゃあ母さん勘弁!!」
ネッカさんはアイラさんの怒号に尻を叩かれ、慌てて駆け去っていきましたとさ。
というか、親子なのですね。
そして、特筆すべき3人目の女性、クーカさんはというと──、
「……………………じゅるっ……!」
イノシシ型の魔物を垂涎しながら倒していたので、見なかったことにした。
あれに触れてはならないと、本能が告げていた。
「高台班、射撃速度が落ちてるよ! 地上班に遅れを取ってんじゃないよ!!」
おっといけない。特筆ハチャメチャ実力者ばかりに注目してたら矢の発射準備が少々緩やかになっていた。こちらもやるべきことをやらねば。
「ということで、ドーン!!」
私は射撃範囲外たる高台の真下に居る魔物目掛けて、ムンッ──と巨大化させた足元の小石を巨大化させて投げつける。石は魔物の頭部へ「ギャピィッ!!」と直撃して脳震盪させた後に──ッンムと縮んで何食わぬ小石へと元通り。
そこに駆けつけた地上班がズバッと倒して私を見上げる。
「良い魔法じゃねぇか嬢ちゃん! その調子で抜けてきた魔物らなるべく脳震盪させてくれ!!」
「オーケー牧場、小石も了承ですわ!!」
「ちょっと何言ってるか分かんない」
「ムキィィィーーーーッッッッ!!!!!!」
怒り任せに小石を巨大化させては射撃範囲外へ手当たり次第に投げまくる。これが案外効くもので、脳震盪率驚異の7割!
その合間で、石の節約代わりに槍を伸ばして突いたりするが、これでひとつ分かったことがある。生命を終わらせる感覚って凄い残酷。
ジェックさんには日頃から遭遇した魔物の対処に、食糧調達で狩りをしてもらっていましたが、彼や国軍兵は幾度もこの感覚と戦ってきたのですね。改めてジェックさんたちには超感謝ですわ。
終わったら労いの言葉をかけるとして、彼は今何処で戦っているのでしょう?
「あ、居ましたわ」
地上をキョロキョロ見渡してみると、いつの間にか彼は砦の最前列で猛威を振るっていた。
「今だ兄ちゃん! そいつ運んでやんな!」
「ありがとうよ助っ人さん! 恩に着る!」
流石元軍兵と言うべきか、彼は凄まじい速度で幾数もの魔物を捌きながら、しかも負傷者の避難猶予も確保しておりました。魔法はやはり使ってないようですが、それでも「最前列北側、その調子で倒していきな!」とアイラさんもニッコリですわ。
では、リツさんはどうでしょう? バリスタ補充に彼女は駆け回っているそうですが? と、ジェックさんから視線を外せば、「あぐぁッ!?」と右前方の高台射撃手がちょうど大きな石ころを肩に投げ当てられて負傷しました。
──次の瞬間、リツさんが爆速でその高台へ駆けつけましたわ。
「負傷を確認しました。射撃手代理を承ります」
「あぁ、頼む! 踏ん張ってくれよ!」
「かしこまりました」
リツさんは即座に回収された負傷者に代わってバリスタを放つ。しかし──、
へ〜ん、へ〜ん、へ〜ん……。
3発全て外しましたから、アイラさんもご立腹。
「全部外してんじゃないよ! 狙ったヤツはしっかり倒しな!!」
「かしこまりました」
そう返答してリツさんは脚に血管が浮く程に力を込めると、それを一気に解放して魔物へ急接近。
「シャブェッ!?」
そして、勢いのまま放ったローリングソバットで魔物の首を蹴り砕いた!
「あぁ、なるほど。矢が当たらないなら蹴り倒せばいいのですね。戦闘はお初でしたが、私め、学習しましたわ」
そう一人勝手に殻を破ったリツさんは、そのまま付近の魔物3体を蹴り倒すと、頃合いを見て持ち場へ戻った。
外した分、しっかり元を取りましたとさ。
これにはアイラさんも「……まぁ、いいか」と一瞬思考停止ですことよ。私もなりました。
ともあれ、この調子なら案外早く終わるかもしれない。鳥魔族さんを追うためにもここが正念場ですわ!
「さぁ、どんどん参りますわよ〜〜ッッ!!!!」
私は己を鼓舞しながら、他の方々と魔物たちをなぎ倒していく。
『現偽名』書いたけど全然出てきませんでした♨
次→明日『18:00』
 




