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研究記録8 : Call upon (招集)2





ガチャッ





ゾロゾロ...






「今度はなんだ...」






ザラはノックもせず入ってきた者らに疲れを示していた。


また局長室に騒々しい足音が聞こえてくる。


しかし入ってきたのは3人。


なにやら話をしながら入ってきた。






「それで床で寝ていた白い犬だと思ってたのが、ただの紙袋だったんだよ」






「いやそれはわかるだろ、普通に」






「いや意外とあるかも。私も道に落ちてた黒玉スイカが猫だったことあるし」






マジでなんの会話だよ。






「いや...悪いけど、君たちは?」






「あぁ、私たちは米軍から派遣されたんだ。この茶髪巻き髪がエンヴィ。そしてこっちの黒髪ボブのがリン」


「そして(わたくし)、リーダーのサイルート・コードでござーい」






サイルート・コード。


笑顔が良く似合う明るい立ち振る舞いのアッシュグレーの彼女。


サイドの髪を垂らし、後ろで髪をまとめている。


3人とも少し洒落た髪をしているのは、さすがアメリカという感じだ。






「つまり...君たちも護衛か」


「少し多いな...」






「それは大丈夫。"彼女ら"とは交代でやるから」


「それで、あなたがザラ局長?」






「あぁ、よろしく頼むよ」


「そこに座ってるのが研究者のオーレリア。その横にたってるのがネモ。彼女の最初の護衛だ」






「どうも、2人ともよろしくね」


「それで...ネモだっけ」






「...?」






「______あなた、強いね______」






さっきとは180度打って変わったような表情。


笑顔は変わりないが...酷く歪んでいる。


瞬間、再び部屋に緊張感が張り詰めた。






「うちが、強いって?」






「そう。あなた」


「人、めっちゃ殺したことあるでしょ」






「...」


「当たり前だろ。それが軍属、仕事柄そういうもの」


「そういうあんたは一体どれくらい殺してきたんだ」


「サイルートさん」






「そりゃ第1特殊任務部隊所属してたらたくさんでしょ。別に相手が軍人じゃない場合もあるし」





「第1特殊任務部隊...」





「ま、今回味方同士だから戦うこともないだろうけど。強いやつは好きなんだ」


「仲良くしようね、ネモさん」






「...」


「...あぁ」






「じゃあ仕事の時間になったら呼んでね。私たち待機してるから」






カツ カツ カツ カツ...



ガチャッ






「...」


「フレディの運び屋」






「...なに?」






ネモがぽつりと呟く。






「大戦中、合衆国とカナダによって編成された特殊部隊(コマンドー)。イタリア、フランスとナチ共を殺しまくって悪魔と恐れられた部隊だよ」


「しかしもう解散したと聞いたがな」






「...」






戦争が終わり、不要になったから解散した...ということなのだろうか。


...それも過ごしてくうちに、いずれ分かるだろう。






______________________






その日、私はネモの部屋で寝た。


少しカビ臭かったが、ほんのりと灯るランプの赤燈色と静かな空間が逆に落ち着いた。


思えば、病室以外で寝るのは久しぶりだ。


真っ白い綺麗な天井は時々黒ずみのある茶色の木板にすり替えられ、その灯りがゆらゆらとそこを泳いでいる。


その光景を眺めているだけで、私はいつしか眠りに落ちていた。





_______________________




______2日目__________





ガチャッ






「おはよー。言われた通りきたよ」






サイルートが局長室に入ってくる。


先に集合していた私達とソ連チームは大きなテーブルを囲む形で椅子に座っていた。






カツ カツ カツ カツ...



カッ...






「へぇ...なるほどね...」






サイルートが立ち止まってアリサを見る。


あの標的を見つめるような、肉食動物のような目だ。


次にポリーナ。


アリサはその様子に少しイラついてたが、ポリーナは依然として無視していた。






「そう舐めまわすように見られると、不快だわ」


「早く席に座ったら?」






「あぁ、そう。ごめん」






ガタガタ ガタ






サイルート達は黙って席に座った。






「なんなのこいつ?」






「私たちはアメリカ組。君たちは見たところソビエト組かな」


「昨日ネモ君に肋骨折られたらしいけど、大丈夫そう?」






「はっ...言われなくても...」


「い"っ...!」






「ぶははっ!痛そー!」


「負傷者は大人しく病院でおねんねしときなよ!」






「...」






「アリサ。見え見えの挑発に乗っては______」






「いいわ...やってやろうじゃない」






始まった。


もうこうなってしまったらザラは止めることは出来ないだろう。


というより、ほんと期待を裏切らないな...アリサは。






「つまり、"やってやる"っていうのは?」






「は?何言ってんの?」


「殺し合いよ、殺し合い。そっちの方が手っ取り早いでしょ。ガキの喧嘩じゃないっていってんの」






「いやいや、無理」






「は?」






「だって君...私より弱いじゃーん」






「...ッ!!」


「この...ッッ!!」






ジャキッ






アリサがトカレフを抜く。


そのハンマーが起こる時__________






バンッ バキュッバシュッ






「「...」」






ネモによる3発の発砲。


それは2人の間をすり抜けて向かいの壁に打ち込まれる。


そのおかげか、サイルートとアリサは静止した。






「今は第二階層の作戦会議中だから静かにしろよ」


「なんなら今うちが2人とも相手しても構わない」


「まぁ...どうせこの状況なら頭ぶち抜かれて死ぬだけだから、うちからすれば楽で嬉しいんだけど」






「...」


「...クソ」






アリサは舌打ちをして椅子に座った。






「お前はどうする?私と()りたいのか?」






「いいよ別に」


「でも、君私と同じくらい強いから」


「2人とも死んじゃうかも?」






「...」


「ふざけるな。とっとと座れ」






「ははっ。はいはい」






ガタッ...






「...」


「...悪いが、会議を始めさせてもらう。喧嘩なら他所でやれ」


「別にそれで両者共倒れになっても誰も文句は言わない。その時は私達と先生だけで調査進めるから」






ザラは手元の紙を2つに広げてそう言う。






「まずは第二階層。そこをどう突破するかだ」






「その、第二階層...ってのには何がいるの?」






「電磁マイクロ波を使用して攻撃してくる異形(いぎょう)だ。ネモとオーレリア君によれば、男の姿をしていると」






「へぇ...見た目は普通の人間なのね」


「それで、なに。その電磁マイクロ波って」







「オーレリア君」







ザラが解説を振ったので、私は閉じっぱなしだった口を開いてアリサの質問に回答した。







「電磁波を使って料理を加熱する電子レンジというのがあるだろう。(よう)はその電磁波だ」


「奴はそれを体内から放出し対象に攻撃する。どういう理屈か分からないがな」







「でもおかしいじゃない。ただ電磁波を放出するだけなら、その電磁波があらゆる箇所に分散してしまって攻撃にすらならないんじゃないの?」






「そこがミソ」


「異形からあの攻撃を受ける時、少し理解した。奴は第二階層を電子レンジでいうところの"箱"にして攻撃してる。その部屋の空間を箱にして」






「なにそれ、じゃあその異形と同じ部屋に入ったら私たち全滅するってこと?」






「そういうことになる」


「そして第二階層に一度入れば、そいつを倒さなければ研究所に戻ってくることもできない。勿論第三階層にも進むことはできない」






「はぁ....最初から詰んでるじゃない。どうするのよ」






「だからそれを突破するために人員が増やされたんだよ」






ネモが気だるそうに呟く。






「それなら、人間爆弾でも使えばいいんじゃないかな」


「それなら異形に効く攻撃も仕掛けられるし、何より融通が効く。合理的で最適解、じゃない?」






サイルートはまた笑顔でそんなことを言う。






「それは既に私がやった。それに誰にもやらせるつもりはない」






「え?じゃあもうその異形っていうのは死んでるんじゃないの?」


「君も今生きてるってことは第二階層から戻ってこれたってことでしょ」






「それが...わからない」


「第一階層をクリアしても、直接的に殺してはいないがアランという異形は毎回私達に接触する」


「それが復活、再生しているのか、または複数体存在するのか...それがわからない」






「行ってみるしかない、ということだね」






サイルートの一言で局長室は静まり返る。


アメリカ組もソ連組も、勤務初日から死ぬ可能性があると知ったら何を考えるのだろうか。


純粋に、私は気になった。






「まぁ、ムカつくけどこいつの言う通りね。(よう)はその異形ってのを殺せばいいんでしょ?」






「...」


「そうだ。だがもし奴が死んでいたとしても、第三階層の情報がまるでない。そこで死ぬ可能性も十分に存在する」


「我々は今回第三階層まで進むつもりだ。それでも来るか?」






「...研究者ごときに舐められたものね。私らは世界でも有数のスペシャリストよ?」


「例え天地がひっくり返ったって...異界の畜生共に負けるはずないじゃない...ッ」






「...」






流石、ソ連軍特殊部隊の隊長といったところか。


並の精神力をしていない。むしろ楽しんでいるようにも見える。


そのひん剥いた目に悪魔的な笑みは、私の脳に直接焼き付いた。






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