研究記録0 : UGLR
______1946年 12月 イギリス ウェストミンスター
チャリンっ
「ロンドン・タイムズの朝刊を」
年季の入った木造の新聞屋の茶色いカウンター前で足を止めると私はロンドン・タイムズという新聞の朝刊を注文した。
灰色のキャスケットを被ったお爺さんがあぁ、いつものかと言った具合でカウンター下からブロードシートで作られた一枚を私に手渡してきた。
「はい、4ポンド」
「...」
「おじいさん、冗談はやめて下さいよ」
「冗談じゃないよ。その新聞は正真正銘4ポンドさ」
「本当は6ポンドだけど、お嬢ちゃんよく来てくれてるからね。それでも2ポンドまけてるんだよ」
「あのね...いくら今が不景気だからってなにも新聞までぼったくらなくても...新聞は庶民の味方でしょ?」
「買うの、買わないの」
「くっ...」
「...買いますよ」
「まいど」
おじいさんの表情は明るく笑顔になり、さっきまでの曇った表情は嘘のようだった。
相変わらず商売の上手な事だ。
私は店をあとにした。
やはり今日のロンドンは曇っていて朝7時なのに薄暗い。
そんなどこか晴れない気分で歩道を歩きながら新聞を広げた。
書かれていることは結局昨日と同じ。
戦後の物価高騰だとか、全国でストライキが多発してるとか、そんな具合だ。
「多くの犠牲を払い枢軸国に勝って得たものがこれか」
「政治家など、犬に食わせとけばいい」
ダダダダダッ
「お姉ちゃん恵んでよ!2日前から何も食べてないんだよ!」
「オイラも、頼むよ」
「お願い!お願いっ!」
「...」
裏路地から子供3人が私の方に走ってくる。
ちょうど左手前のブリックレッドの煉瓦の通路からだ。
汚れた白いYシャツと茶色のキャスケットを被った男の子達。
10歳、9歳、12歳と言ったところだろうか。
3人とも顔に煤をつけて歯が黒い。
おそらく親のいない乞食だ。
「ねぇ頼むよお姉ちゃん!」
「チョコがあるよ。人数分持ってきなよ」
3人はいきなり差し出された銀紙のチョコに少し戸惑っていたが、目を見開いた後に我先にと手を伸ばしチョコを頬張った。
「それで、君らの名は?」
私はしゃがみ彼らの目線に合わせた。
「俺チャド」
「バイロン」
「僕ぁケネス」
「左からチャド、バイロン、ケネスか」
「君ら親はいないの?」
「「「いない」」」
「...」
「そうかい」
「私は毎日朝7時にここを通る。チョコしか持ってないけど、良かったら取りに来なよ」
「ほんとに!?」
「また来てくれよ!お姉ちゃんなら大歓迎だよ!」
「あぁ、またね」
カツ カツ カツ カツ...
私は立ち上がって再び通りを歩き始めた。
ひとつ歩いて周りに目配せしてみると、一般人の住む家々がナチスの行った空襲で所々崩壊している。
またひとつ歩けば街では浮浪者がこぞって次の配給を道路に座って待っている。
私の目に映るのは、祖国のそんな光景だった。
カツ カ...
その先に、一つだけコンクリート素材でできた珍しい建築物に足を止める。
白色の綺麗な壁にUGLRと黒文字で表記された50平米程の大きさの建物だ。
「すぅ...ふぅ...っ」
呼吸を整え、右足を前に出す。
私はオーレリア・アン・ジョンソン。
今日からこの政府直属特別研究所・UGLRに配属されることになった研究者だ。
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note
オーレリア・アン・ジョンソン(27歳)
イギリス マンチェスター出身 身長167㎝
青黒い髪のウェーブのかかったミディアムヘアに上下黒のスーツを着用。
低音の声質で真面目な性格。
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ガチャッ
「マンチェスターから来ました、オーレリアです」
冷たいスチールで作られたドアを開けるとそこは真っ白い空間だった。
壁は白、天井も白、床も白いコンクリートで革靴がカツカツ言っている。
そして奇妙なのがそこに誰もいないことだ。
本当にここが今日から配属される研究所なのか、正直不思議に思った。
コヒィンッ
[出身校と生年月日を言え]
甲高い反響する音に少し驚いた。
正面の突き当たりの昇降機の上にあるスピーカーから若い女の声が聞こえたからだ。
断る理由もなく私は女の言う通りに口を開いた。
「オーレリア・アン・ジョンソン、ケンブリッジ大学院物理学科、1925年2月7日生まれ」
「27歳です」
「よし、左の地球儀を眺めろ」
「...地球儀?」
「そうだ。左には黒色の机の上に乗っている地球儀があるだろう。それを眺めていろ」
確かにドアからすぐ左手に地球儀があった。
丸くて青色をベースに、全て手塗りで国が記されている上等な地球儀だ。
「どうした。早く眺めろ」
「...」
やや粘度のある高音の女の声がスピーカー越しに私を急かしてくる。
気味が悪かったが私はその地球儀の前に立ち、しばらくそれを眺めた。
「よし...そのまま動くなよ」
アメリカ、そしてアルゼンチン。
その次は香港。
「(この地球儀、くるくる回ってやがる...一体なんなんだ)」
[くく...人知れず地球儀が回転している様子に驚いているようだな]
[身辺調査が終わり次第教えてやろう]
「いえ...はい」
それから何分立っただろうか。
気になって右手の腕時計を確認してみるともう5分も経過していた。
「あの、ひとついいでしょうか」
その地球儀に向かって質問する。
スピーカーではなくその地球儀にだ。
「なんだ、オーロラ君」
「いえ...オーレリアです」
「私は今日からこの研究所に配属ということですが、まだ研究の内容を知らされていません」
「宜しければその方を教えてください」
「ああ、それも調査が終わり次第伝えるよ。なんせ国の機密を保管している場所だからね」
「こんなに入館に時間をかけているのにも訳が...ん?ああ、終わったか」
「調査結果がでた。君は本物のオーレリア君のようだな。ようこそUGRLへ」
「オーレリア君、目の前に昇降機があるだろう。それに乗って下の階まで下りてきなさい」
「...」
地球儀から目を離し、入り口ドア正面に視線を移す。
確かにさっき入ってくるときに見えた昇降機があった。
鉄柵が複雑に入り組んでいる自動のやつだ。
珍しい。
カツ カツ カツ カツ...
私は鉄柵の手前に立ち、その壁についた親指よりも一回り大きな赤いボタンを押した。
「...っ」
...が、思った以上に固かったのでもう一度力を込めてボタンを押した。
ガガー...
鉄柵が開き、明るい黄色の照明が私を照らす。
そんな昇降機の内部に入ると自動で扉と鉄柵は閉じ、階層ボタンも押していないのに箱は動き始めた。
思った以上に揺れが大きく持っていたカバンを床に落としかけた。
待つこと2分。
ががァ...
扉が開く。
すると扉の先に、私の胸元あたりにダークブラウンのカールを巻いた毛先のようなものが顎まで伸びているのが見えた。
しかし軽く巻いた程度で過度な撓みはない。
扉が完全に開き、そこにはスーツを着てやや口角を上げた少女が私の前に立っていた。
「やあやあお疲れ、検査ご苦労だった」
その少女は私に向け黒手袋をつけた手を振った。
やはり独特な粘度のある声だから、さっきのスピーカーからの声はこの少女だとわかる。
優しい※アーモンドアイの少女だ。
※アーモンドアイ・・・目元の形状、細目に近い。
「どうも、ありがとうございます」
「(冗談だろ?この女の子が私の上司というのか?)」
「私はザラ。このUGLRで首席研究員を兼任している」
ザラ。
ザラ・ルイーズ・テイラー名誉研究員、17歳。
灰色のスリーピーススーツ、ベスト、パンツに黒のYシャツを着用。
聞いたことがある。
小柄な風体で、しかしその天才的な頭脳で飛び級に飛び級。
オックスフォード大学物理学科から1年で学院に入学し卒業。後に教授となり学内で研究と授業の日々に明け暮れている、と。
「ザラ先生」
「先生はよせ。ここは大学じゃない」
「では"首席"と」
「"首席"、ね...」
ザラは小さい顎に手を当て少し考えるように黙りこくる。
「うん、よろしい」
ザラの顔がぱっと明るくなり、白い歯を見せて私に微笑みかけた。
どうやら首席呼びが気に入ったようだ。
「来たまえ、オーレリア君」
「研究所を案内しよう」
ザラは背を向け反対側を歩き出す。
それに私もついていく。
エレベーターを出ると一本の長い通路に出た。
ただ真っ直ぐに直進するだけの道だ。
これが薄暗くて、何かに繋げられた無数の配線が壁を這いずり回っている。
右の壁に取り付けられた防火装置の赤いランプが眩しかったのが印象的だ。
「面倒な道で申し訳ない。しかしこれは必要なんだ」
「機密の漏洩防止のため、そしてひとつは"動かせない"ためだ」
「動かせない?」
「そう、動かせない」
「押したり引いたりするだとか、そういう次元では無い。しかし物理的にそれは"ここ"に存在している」
「そんな未知の正体を突き止めるために、我々研究者は政府から招集されたわけだ」
カツ カツ カツ カツ...
「それはまだどこの国にも知られていない、ということで?」
「そんなところさ。だから君もこのことを口外すると色々な理由をつけられて絞首刑だぞ」
「...なるほど」
ザラが足を止め、私も足を止める。
とうとう行き止まりにたどり着いたからだ。
「この扉の先が研究室だ」
「さっきの話、あれは本当だよ」
「絞首刑?」
「そう。くれぐれもこの研究が終わるまでは他言しないように」
ギギィ...
ザラが大きな取っ手のついた扉をゆっくりと開けると共に、その隙間から白い光が漏れ出す。
「_________」
私は言葉を失った。
もしくは脳の処理が追いつかず目先だけで情報を理解しようとしているか。
ガチャッ
扉が完全に開く。
室内の天井には5つの大きな照明、明るさの原因はこれだった。
床50平方メートル、高さ10平方メートル程度の空間。踏み場がないほどに、私の腕ほどの太さのケーブルがぐちゃぐちゃに絡み合っている。
そしてそのケーブルの先には、私が目を丸くして注視していた未知の存在そのものがあった。
「_______あ______?」
「驚いたか。君のようにいい反応をするのを見たのは初めてだよ」
「これは今年の4月6日に軍に発見された別次元。我々はRabbit hole(うさぎの穴)と呼んでいる」
「今回我々が呼ばれたのはこれを調査解明し、グレートブリテンの発展に役立てるためさ」
「...」
ラビットホール。
うさぎの巣穴という意味だろうか。
しかし言い得て妙だ。
そのぶっとい配線の先にある直径10mの円形の台。その上には縦長の透明な楕円がある。
「近くで見させてください」
「もちろん。でもあまり近づきすぎないように」
好奇心と、研究者としての興味が合い混じって私はそのラビットホールの0.5m手前まで近づいた。
透明な楕円の中の様子がはっきりと見える。
中にあるのは...砂浜...?
暗い曇天から照らされた灰色の砂浜に、左には強く波をうってる海があるじゃないか。
楕円の反対側を覗いてみる。
同じだ。こっちも砂浜が存在している。
「それは映写機ではないよ」
「さっきも言った通り軍が発見したラビットホール。異界への入口だ」
「異界...」
「さぁ、一旦それは置いておいて局長に挨拶に行こう」
「そこで仕事の説明をする」
カツ カツ カツ カツ...
私達はちょうど研究室の入口ドアをまっすぐ行ったところにある出口ドアへ向かって歩き出した。
研究室から出てまたあの薄暗い通路を歩く。
「足元に気をつけて。そこから先は階段だ」
歩き続けて約一分。妙に視界が明るくなってきたかと思えば1メートル先の天井に蛍光灯が白いぼんやりとした光を発していた。
私たちはコンクリートでできたその階段を下って、更に直進する。
コン コン コン コン...
「どうだい、君は"あれ"を見て何を感じた?」
「恐怖です。アラスカで隕石が民家に落ちた現場を見た時の感情と似ている」
「なるほど」
「これは何かの暗示なのか。または人間への神からの警告なのか。これに好奇心を抱き接触したら私は一体どんな結末を辿るのか」
「そんなことを妄想してしまいます」
「不気味だろう」
「はい」
「だが不気味なものほど良い研究材料は無い。それは無限の意欲を掻き立てる」
「まるで材料の中に劇場があって、それを覗く度にホラーショーを見ているような錯覚さ」
「首席。あなたの今までの功績は、その不気味ささえも熱意に変換する無限の可能性によるものですか」
「尊敬します。同じ学者として」
「...」
「...ふふ」
「...?」
「...いや、そんな真正面から尊敬されたことはないからね。つい」
「真面目だな、君は」
「よく言われますよ」
「だろうな」
「さぁ、着いたぞ」
カツ カ...
階段を降り終え再び直進したその先に、ひとつの人ひとりが通れるスチール製のドアが現れる。
新しくできたのかサビもなく綺麗な状態だ。
コンコンッ
「入れ」
私はドアをノックしその返事を聞いてドアを開けた。
中からは再び明るい光が私を照らしているのを見る限り、ここで使われている照明は研究室と同じものらしい。
ギギィ...
扉を開けた先。
その向こう側には15畳半の空間があり、その両側には本がびっしりと詰め込まれた本棚が置かれてある。
奥には木板が貼られその手前には約2メートル程の長机があった。
その上には...左からウィスキーボトル、ウォッカボトル、ワインボトル、寝てる人。
寝てる人、ビール瓶、ウィスキーボトル、ワインボトル、ウィスキーボトル。
「...」
「首席、これは?」
「...」
「ちょっとまってて」
ザラは静かに部屋に入って机に突っ伏しているその局長を揺らす。
どうやらこの瓶ビールを掴んでいる白い髪の人物が局長らしい。
「局長、新人が来ました。挨拶の方を」
「ぐ...ぐ...ぁ...っ」
だがザラが揺らしても局長は起きる気配がない。
大きないびきをかいて熟睡しているのだ。
「局長、新人です。起きてください」
「くが...ごぁっ、お"がっ...!」
「...」
様子が変だ。
いびきどころか身体も痙攣し始めている。
「局長...?」
いや...これは...ッ
「...ッ!」
「まずいッ!」
急性アルコール中毒。
これはいびきなんかじゃなく吐瀉物が喉に詰まっている音だった。
ダダッ!
急いで机まで走り、局長を背後から抱く形で床に寝かせる。
私は彼女が吐きやすいように首を左に向けた。
「ごぇっ!げぁ..ぁッ!」
「なんだ...なぜ吐かない」
「...恐らく喉に詰まってる。棒かなにかを...」
ぐっ ぬぐっ
「オ、オーレリア君!」
「時間が無い。指を突っ込んで吐かせます」
ベアトリスの喉に左人差し指と中指をゆっくり差し込み少し刺激する。
それでもベアトリスは吐く様子を見せない。
しかし徐々に痙攣が弱くなっていくのを感じる。
「く...」
さらに奥に指を入れる。
瞬間、少し凝り固まった様な部分が指先に伝わった。
ここだ。
この部分を逃さないように私は人差し指と中指を手前に引き抜いた。
ぐっ ぐ...ッ
「う"っ」
「がぉえええっ_________!」
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「すまなかった...新人。君のおかげで死なずにすんだ」
局長はシャツの胸元を開けた状態になり回転椅子の上で項垂れている。
私もザラに用意された座椅子に座って局長と面と向かっていた。
正直心配が勝っているが、新人に説明してから横になるらしい。
「改めて、私はベアトリス。この研究所の局長だ」
「よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく」
そう言ってベアトリスはザラからコップ一杯の冷えた水を受け取って一口飲んだ。
さっきも言った通り白い髪の女で、目の上まで前髪がかかっているほど毛量が多い。
私と同じくらいの歳か、顔やハリも同程度の基準である。
ただ、目の下のクマが酷い。
「君も見た通り、あのラビットホールという現象を究明するために政府から配属されたのが君ら研究者だ」
「だが私は国防省から派遣されたただの中間管理職。人手が足りなくなって任されたにすぎない」
人手が足りない、とはおかしな理由だ。
この国防省から派遣された中間管理職の人間がラビットホールのような誰が見ても前代未聞の発見を中間管理職ごときに任せるはずがない。
何か訳があるはずだ。
「ひとつ質問を、局長」
「あぁ、なんでも聞くといい」
「なぜこの研究所は私たち以外誰も居ないのですか」
「...」
ギギィ...
ベアトリスは私の耳元に顔を寄せ、静かにこう呟いた。
「▅▅▅この研究所は研究者を食い物にしている▅▅▅」
「...」
「...なんです?」
「局長、盗聴器は外しておいてます」
ベアトリスの横に直立したザラはそう言った。
「...そうか」
ベアトリスはザラのその言葉を聞いてため息をつく。
そして肺に酸素を溜めて私の目を見てこういった。
「我々はラビットホール解明の為に、あの穴の内部に君のような研究者を送り込んでいる」
「過去に31人を送り込んだ。しかし誰一人として生きて帰ってくる者はいなかった。それは内部の異界の化け物に殺されるからだ」
「化け物」
「あぁ。人間界では考えられないような化け物が存在している」
「だから私はラビットホールに研究者を送り込むのを中断するよう政府の責任者に頼んだが...無駄だった」
「奴らは聞く耳を持たず、この犠牲が明るみになった時に責任から逃れるために私を局長に仕立てあげた訳だ」
「...そして、私がその32人目の研究者だと」
「あぁ、早い話そういうことになる」
「だから今からでも構わない。この研究所を出て行ってくれ」
「新しい犠牲者を出さないために」
ベアトリスは机に置いてあったウィスキーボトルを手に取り直接口に運んだ。
だが、そのすんでのところでザラにボトルを取られる。
「...」
「研究者を犠牲にする日々に耐えきれず、だからアルコールで気を紛らわそうとしたんですね」
「ああ。情けないことにな」
「...」
「全くここには私が尊敬できる人間ばかりだ」
「...なに?」
「これ以上犠牲を増やさないために自身の身をすり減らしてまで研究者を助けようとする」
「感服の至りです。それでこそ局長の姿だ」
「...っ」
「研究所を出ていく?とんでもない。是非ともあなたの元で働かせてください」
「何言ってる...ラビットホールに入れば、化け物共の餌にされて死んでしまうぞッ!」
「私は死にません」
「なに...?」
「私は死にません。そしてラビットホールを解明するまでこの船を降りません」
「そして...私が次に配属される研究者も犠牲になんかさせません」
「_____私は生きて、人のために祝福されて死にます____」
[つづく]