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1節目 喧噪たる日々

目覚まし時計が鳴り響いている。

けたたましい音量と共にバイブレーション機能までついた自慢の目覚まし時計は、俺をたたき起こそうと躍起だ。


頭までこんもりと被り切った布団の防音障壁を、いともたやすく貫く大音量は、きっと下と横の部屋の住人すら起床させるには十分だろう。


このまま無視を決め込んでも奴は止まるどころか、そのまま爆発してしまいそうな気がするので、

仕方なく焦点の定まらない視界で時計をぶったたく。


半ば鳴き声のようなアラーム音が止まり今度は不気味なほど静かになった時計を抱え上げる。


10時15分


「はぁ・・?」


その長針と短針がさしている時刻はどこかおかしい。

こんな時間にアラームが鳴るはずはありえない。

これじゃまるで俺が寝坊をしたみたいじゃないか。


焦点の定まらない世界を見せている目をこすり上げ、もう一度時計を見た。


10時16分


「・・・・・・・ちょっと進んでんじゃねえか!!」


遅刻だ、完全に遅刻。

もはや遅刻すら飛び越えて無断欠勤の声すら聞こえるこの時刻。


全身の毛穴から嫌な汗がにじみ出るのを感じ取りながら、ベットサイドの携帯に飛びつく。


着信29件、メッセージ61件



「やばいよ!やばいよ!」


ベテラン芸人がごとく大げさに慌てる俺、ただ大げさどころか大事になっているのは事実だ。


「メッセージか!?いやここは電話で弁明か!?どっちだ!?」


もはや震えだした指先で携帯を操作する。

ええい、もう電話のほうが誠意が伝わるだろ!

と謎の価値観で履歴からコールバックをする。


呼び出しの電子音がまるで死神の笑い声がごとく、俺の耳に鳴り響く。


1コール、2コール、3コール、4コール、5コール、6コー・・・・


おかしい、いつもなら3コール以内には何かしら反応があるはずだ、

しかし、未だ鳴り響くコール音。


取引先にいるなら保留になるはず、事務所なら5コールもしないうちに出るはず。

そんな考えを巡らせていると、しまいには自動音声に切り替わり、おかけ直しくださいと言われてしまった。


「先輩も休みか・・・?」

いやそんなはずはない、休みなら20回以上も電話をしてくることはないだろう。

真っ暗になった画面をぼんやりと見つめながら、まだ寝起き5分ほどの脳をフル回転させようとした。


「そうだ!メッセージ!」


メッセージ通知を知らせる緑色のランプが光るのをみて俺は慌ててアプリを起動する。


未読62件


「ひっ!増えてる!」


またも血圧と心拍数を増加させながら、トークルームを開く。



「ん?・・・・・・・・絶対に外に出るな?」


最新のトーク内容は10秒前。


意味が分からない?

もしかして家にきて俺を引きずり出そうというのか?

そうなるといよいよやばい、10秒前ならもう家の前に来ていてもおかしくはない。


よれたシャツにパンツ一枚の俺。

寝ぐせで爆発した頭髪を備えながら、玄関方向を凝視する。

唾を飲み込み、視線を外さないが、インターホンが鳴るどころか人の気配を感じない。


ただカーテンの閉め切られた窓越しに町の喧騒が聞こえる。


そのまま2秒ほど固まっていたが一向に事態は進展しない為、俺は視線を携帯に戻した。



「ほかのメッセージっと・・・」



画面をスクロールし、一番古いメッセージまで飛ばす。

そしてその内容を見ようと、目を凝らしたとき、窓に何か大きなものがぶつかる音がした。

ボンッとでもドンッとでもとれる何かゴムか布の塊のようなものが当たったような音が聞こえ、

俺は窓に意識を取られた。


大方近所の子供のボール遊びでボールが当たったのかと、カーテンを開け放つ。


「こらぁー、子供たちー、ボール遊びはよそで・・・・?」


ガラス窓を開けながら視線を上げると、そこに居たのは、羽の生えた猫だった。




「は?へ?え??どういうこと?」


情けない声を上げる俺を他所に、その羽の生えた猫はこちらに一瞥をくれると、羽ばたきベランダから飛び去って行く。


「はぁ!?」



目の前の事態に理解が追い付かず半ば放心していると、今度は何か大きな影が一瞬太陽を遮った。





「ど、ど、ドラゴン!??」


ロードオブなんちゃらや、ハリーなんちゃらやで見たことのある架空の生物が空を滑空しているのを見たとき、俺は携帯を取り落とした。


その衝撃で画面にひびが入ってしまったことにも気づかず立ち尽くす俺。

亀裂の入った画面には先輩からのメッセージが表示されていた。






「これたぶん異世界ってやつだよ」と


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