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まだ今は、何者でもない  作者: 天水しあ
第2章『caféクヴェレ』
5/8

第5話「やる気ある!?」

そして翌日、土曜日。

見事な晴天、あたしは9時前に家を出た。


 昨夜、お店のHPをネットで探したけれど、見つけられなかった。どうやらHPもインスタもXも、イマドキどれかは備えているだろう公式サイトを持っていないらしい。

 和泉さん、実は結構年齢いってるのかな……。


 ならばと複数のグルメレビューサイトをチェック。


「ナニコレ」

 思わず声が出た。

 レビュー、酷くないか? 総合評価2点台とか……コメント3つしかないけど、1つは★1だよ。


『入口が分かりにくい。店員不愛想。飲み物しかないうえ、アイスコーヒー、毎朝飲んでる〇〇〇ディと同じ味。それで700円、たっか。二度と行かないわ。★1』

『オープン間もないらしく、メニュー少ない(しかもドリンクのみ)。店はきれいだけど、今後に期待で★3』

『さくら公園近くで立地はまずまず。でも場所代と考えても紅茶一杯700円は高いかな。器もフツー(100均!?)椅子も座り心地悪いし、長居は無理。これなら近くの〇タバ行くわ★2』


 「……」酷すぎる……。つか、お客さんいるのこの店?


 今後に期待している? お客さんが、写真をアップしていた。

 白い壁に沿うように設置された木のカウンターに木の椅子、背後にはやはり木の丸テーブルが見える店内の一部を映した一枚と、分厚いくてかわいげもオシャレ感もない氷多めのグラスに、「一口飲んだ後に撮ったんだよね!?」と確認したくなる分量のコーヒー。


 あたしなら、この店行かないわ、絶対。


 大いに不安に思いながら、次に住所を確認する。

 レビューサイトの住所は、ISビルの一階となってる。ストリートビューで見てみたけれど、残念ながら「ISビル」という建物は分からなかった。

 公園付近は、結構色々なビルがあるみたいだし、これは迷いそう。


 情報が少ないうえに、致命的な方向音痴の自覚がオオアリなあたしは、早く家を出た。早く着いたら、さくら公園で時間を潰せばいいし。


 そして。

「いらっしゃい」

 入り口のドアを開けた時、正面の白い壁にかけられた針だけの時計は、10時3分前というところだった。

 よ、よかった間に合って……あたしはできるだけ静かに息を整えながら、「よろしくお願いします」と頭を下げた。


 1階が喫茶店のビルなら、そこまで迷わないだろうと思ったのに。

 赤レンガ風の年季を感じさせる3階建てのビルは、ビル名の看板がないうえに、肝心の一階は、あたしの身長(160cm)より少し低い位置にある閉め切られた窓からも、入り口の木の扉にはめ込まれた曇りガラスの窓からも中を覗けなかったから、何度か通り過ぎていたのに、喫茶店を探していたあたしは完全にスルーしていた。

 しかも喫茶店の入り口は、ビル(薄暗い)の結構奥に入らないと分からない。

 Googleマップがここだというから中を覗いてはみたけれど、「たまにずれちゃうんだよね、この地図」と結論付けていた。歩道に面したビルの入り口には店名やメニューを伝える看板もなく、ここにお店が入っているだなんて、全く思えなかったのだ。


 公園の周りをグルグルして1階が喫茶店のビルを確認したけれどどれも違っていて、大いに困ったあたしは歴史ありそうな花屋さんを見つけて慌てて飛び込んだところ、「そんな喫茶店は知らない」とあっさりと言われ……。


 もう、電話するしかない? 

 初日から使えない認定……と顔面蒼白になるあたしに「ISビルはあっちの通りの赤レンガ風の建物だよ。3階建ての」と、サンタクロース似合いそうなおじいちゃんに指をさされたのが5分前。間に合ってよかった……。けど。


 やる気あるのこの店!?


 住所で探しても分からないのに、こんな喫茶店だと全然分からない外観じゃ、通りすがりの人は分からない。それでなくても周辺にはいろいろな喫茶店があるっていうのに。


 あたしの危惧を現わすように、あたしと和泉さん以外、店には誰もいない。

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