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まだ今は、何者でもない  作者: 天水しあ
第1章『はじまりの日』
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第1話「再会」

 膝の上で広げていた雑誌の紙面に、いきなり影が差した。


 イヤフォンを外しながら顔を上げる。

 夕暮れの公園を背景に、さっきまではなかった人の姿が目の前に立っていた。逆光で、顔はよく見えない。

 だけど夕日色に縁どられたこの、ひょろりと高いシルエット……一人だけ浮かんだ人物がいたけれど、すぐに否定した。いや、それはない。ありえない。だけど。


「ほうしょうひな、さん」


 突然呼ばれたフルネーム。

 蝉がうるさい中でも、耳に甘く響くこの低音ボイス。


 え、まさか本当に――あの人じゃん!



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